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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第一章 発端編
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第4話 あいつは勇者で、ダメダメで

 とりあえず俺の家に戻って、説明すること15分。やっとのことでソルドが理解してくれたが、どっと疲れが襲ってきて俺は椅子の背もたれによりかかる。


「いやー、なんか誤解しちゃってごめんな」

「まったくよ、死ぬかと思ったじゃない!」


 普通の勇者なら立ち向かうところを、逃げるあたりこいつのダメさが表れているな。


「それで、出発はいつするんだよ?」


 そういえば決めてなかったな、できるだけ早いほうがいいなー。いつまでもいられたら俺が破算しちまう。


「いつにするシャル?」

「そうねー、別に私はいつでもいいけど」

「じゃあ、あしたでいいか?」

「いいわよ」


 さてこれで決まりだな。俺は洗濯物をしまいに立ち上がった時にソルドのバカが叫びだす。


「ちょいまて!」

「なんだよ?」

「いや、明日はやめておこう」

「なんで、お前が決めるんだよ?」


 まさか、こいつ、ついてくるとか言わないよな?


「俺もついていくからに決まってんだろ」


 やっぱりか、ソルドがいるといつも面倒なことになるからあんまりついてきてほしくないんだが。


「ダメだ」

「なんでだよ、お前だけ若い女と一緒に、二人仲好くなんてそんなのゆるさねぇぞ」


 こいつは全くこんな発想しかできねぇのかよ、だからバカって言われるんだよ。


「若いって言ってもよー、おい、シャル今何歳だ?」

「18よ」

「ほら、18だってよ……18!?」

「な、何よ、別に普通でしょ? カインだって同じくらいでしょ?」

「俺とソルドは24だ」

「うそっ、だって見た目は私と大差ないじゃない!?」


 確かに見た目は俺たちと大差ない、もしかしてシャルって老け顔なのか? それとも……


「なあ、人間の平均寿命ってどれくらいだ?」

「そうね、80歳くらいかしら」

「なるほどな、俺たち魔人の平均寿命は100ちょいだ」

「そうなの?」

 

 長生きすれば120とかも普通だからな、80なんて早すぎるくらいだ。


「簡単な話、俺たち魔人のほうが老化も成長も遅いってことだな」

「なにそれ、ずるーい」


 ずるいといわれても、種族の違いなのだからしょうがないだろ……


「おい、俺のこと無視するなよ」


 ソルドが騒ぎ始めたな、せっかく話題をすり替えたというのに、また話を戻しやがったなこいつ。


「そんなに来たいのか?」

 

 ソルドは首を縦に激しく振る、このまま放っておいたら具合悪くなって諦めないかな、あ、だんだん遅くなってきた。


「おい、シャルどうする?」

「え? 別にいいけど」


 まあ、シャルがいいならいいか。


「いいってよ、とりあえず明後日でいいのか?」


 ソルドはこちらに笑顔を向けるが、その顔は頭の降りすぎで具合悪そうだ。


「うっぷ、明後日で大丈夫だ……」

「わかったから、じゃあ明後日の朝6時、うちに来いよ」


 そういって、俺はソルドの腕をつかんで立ち上がらせ、家から追い出し、シャルのほうに向き直る。


「ということで、出発は明後日だ」

「わかったわ、それまでには準備しておく」


 ということで時は流れて、明後日の朝


「あいつ遅いな、もう置いていくか?」


 おれは腕を組み、足を小刻みに動かしながら、ソルドを家の前で待っている。既に俺の懐中時計は、6時20分を指している。


「ねむい……」


 さっきからシャルはこればかりだ、本当に朝に弱いなこいつは。

 そんなことを思いながら待つこと20分、やっとあのバカが走ってやってくるのが目に入った。


「遅いぞ」

「悪い、寝坊した」


 こいつはやっぱりおいて行ってもよかったんじゃないのか? まあ少しでも戦力はいたほうがいいのは確かだが、こいつだって一応戦えるわけだし。


「ほらいくぞ、シャルもシャキッとしろ」

「うん……ふぁ~~」


 こいつら本当に大丈夫なのか? なんか先行き不安だな……


「ねぇー、まだ森抜けないのー?」

「まだだ、さっきも言っただろうが」

「だって、何時間歩いてるのよ、もう足疲れてきちゃった」

 

 こいつ、この時間の歩行で疲れるのに魔王倒そうと思ってたのか? こいつにだけは絶対に魔王は倒せないだろ、ていうか魔王城までたどり着けないだろ。


「いったん、休憩にしましょうよー」

「そうだそうだー」


 おい、ソルド貴様は別にそこまで疲れてないだろ、なんで俺だけ敵にしようとしてんだ?

 俺は、懐中時計を取りだし時間を確認する。

 確かに、もう2時間は歩いたし、そろそろ休憩しておくか。


「わかった、休憩にしよう」

「やったー」


 シャルが笑顔で近くの切り株に座ろうとするが、俺はシャルの腕をつかんでその邪魔をする。


「何よ!?」

「休憩の前に、戦闘だ」


 その言葉と同時にソルドが茂みの中に向かって火弾を放つ。

 爆発と同時に魔物のうなり声が聞こえてくる。


「ほら来るぞ、しっかりしろよ勇者様」


 茂みの中から飛び出してきたのは、頭に一本の角を生やした3メートルほどのクマの魔物。この程度なら何の問題もなく倒せるだろう。

 俺はとりあえず軽めに加圧魔法を使ってみるが、速度がわずかに落ちる程度で大して効果がない。

 いくら威力を押さえているとはいえ、ここまで効かないと自信を無くしちまいそうだ。

 

「ちょ、ちょっと全然魔法聞いてないじゃない!」

「お前の腕試しだ、手伝ってやるからとりあえず倒してみろ」


 どうせ無理だろうけど、どの程度戦えるのかは見ておいた方が今後のためにもなるしな。

 

「無理、ムリムリ、ぜったいむりー」


 そう言いながら、シャルは逃げ出す。


「お前、本当に勇者か?」

「あんなの無理に決まってるでしょ、ちょっと助けてよ!」


 ソルドも呆れて、開いた口が閉まらないよ。


「おい、カインどーすんだあれ?」

「どーするも何も、このまま放っておくわけにもいかないだろ」


 とりあえずもう少し強めに魔法を使っておくか。

 俺が魔法の威力を強めると魔物は先ほどとは比べ物にならないほどの重圧をうけ、地に伏せる。


「シャル、とりあえずお前がトドメさせ」

「う、うん」


 シャルは剣を振り上げるが、腰が引けている。あんなので倒せるのだろうか?


「えいっ」


 思いっ切り振り下ろした剣は魔物の頭に命中するが、薄皮を斬ったていどで、仕留めるには至っていない。


「シャル、ちょっとこっち来い……」


 俺がため息をつきながら手招きをすると、こちらにシャルが駆け寄ってくる。


「ソルド頼む」

「ほいよ」


 そういってソルドはひときわ大きい火弾を放ち、魔物に命中させると、魔物の体が炎に包まれる。魔物の悲痛な鳴き声はすぐにやみ、黒い塊だけが残った。


「あんたたちって、結構強いのね」


 少し感動したようにシャルがそう言ってきたが、俺たちは二人合わせてため息を吐く。


「「お前が弱すぎるんだよ……」」


 この俺たち二人の想いが、こいつに届くときは来るのだろうか? とりあえず戦力としては全く使えないってことだけは分かった。

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