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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第四章 砂漠編
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第39話 こいつが真面目で実は考えていて

 遥か高い位置まで伸びる両脇の赤い壁によって切り取られた空は青く、今日もまた快晴であることがよくわかる。結局、昨日は日が落ちたこともあり、あれ以上進むことはなかった。さすがに夜の闇に染まった状態で何があるかもわからない谷を進むほど俺たちは馬鹿ではない。

 日が差し込んでこないこともあってか普段よりも若干涼しく、昨日までの砂嵐など嘘のように風は吹いていなかった。前と後ろだけを気にすれば良いという事に警戒心も緩んだせいか、砂嵐からの開放のせいかは解らないが、普段よりも足取りも軽く順調に進んでいた。


「それにしても、これはどこまで続いてるのかしら?」


 そう言いながらシャルが岩の壁に手を添えて、岩の壁を見上げ次に進行方向へと視線を移す。俺も前を見てみるがどこまでも赤い壁に挟まれた砂の道が続いていくばかりで、出口など見えやしない。


「わからないけど、とにかく進むしかないだろ、ほら立ち止まってないで行くぞ」

「わかってるわよ」


 そんな他愛もないやり取りをしながら進むが、なかなか出口が見えてこない。ようやく出口らしきものが見えてきたころには、太陽が一番高いところを通り過ぎてから二、三時間程が経過していた。


「ここ抜けても、どうせ砂漠が続いてるんでしょ?」

「そうだけど、もうすぐ砂漠も終わりだぞ。ラッセが教えてくれた通りなら、ここ抜けたら一日もかからずに砂漠を抜けれるって言ってたし」


 


 実際のところ、この谷が砂漠の出口まで続いてくれていた方が日光や風の影響も少なくうれしいのだが、残念なことに出口の向こうには、日に照らされた黄色の砂地が広がっている光景が確認できる。

 思わずため息を一つ吐き、肩を落とす。実際わかっていたことだが、目の当たりにするといやになってくる。

 シャルも毎度のごとく何を言っているかわからないがエルザに文句を言っているようだ。それを聞きながら宥めているエルザも疲れているはずなのに、そのような様子を見せ無いのは戦場で培った忍耐力のおかげであろうか?


「それにしても、毎回思うがソルドはなんでそんなに元気なんだよ?」

「お前らが貧弱なんじゃないのか? 戦場の最前線なんて、歩いてたりしたら生き残れないんだからそれに比べれば楽なもんだ」

「そういやお前はいっつも最前線にいたな、あんな危険なところ俺は行く気しなかったよ」


 俺はそう言って肩をすくめる。最前線で戦えば稼ぎはいい、それは確かなことだが、毎回最前線で戦わなきゃいけないほど金に困っているようには見えなかった。

 理由を聞いても「金が欲しい」の一点張り、最前線で戦ってまで金を稼ぐ必要があったのか、それとも別の理由があったのかは知らないが、最前線で生き抜いてきたという事実はソルドの強さを証明するのに十分だろう。

 

「そう言えば、二人とも戦場にはいたんだよね?」


 そんな俺たちの会話が耳に入ったのかエルザが、問いを投げかけてきた。


「ソルドはともかく俺は居たっていうんだか、後ろでこそこそやってるだけだったし」

「それでも、戦場にはいたんだよね。前は殺し合ってたのに、今は助け合ってここまで来て、なんだか不思議だなーって思ってさ。人間と魔人の共存とかもさ、こうやってるとなんだか本当に実現できるような気がしてくるよ」

「何おかしなこと言ってんだ?」


 そう言い放ったのはソルドだった。それを聞いて俺たちの表情は一瞬驚きに染まる。今のどこにおかしいことがあったのか俺はその時理解できなかった。


「人間も魔人も話が通じるんだから、共存できることなんて当然だろ、話が通じない動物でさえ共存で来てんだぞ? 最初から魔人だ、人間だって分けるからいけねーんだよ」


 俺は一瞬固まったのちに口を開く。


「ソルド、お前頭でも打ったのか? 大丈夫かお前がそんなこと考えられるなんて病気か何かか?」

「おい、カインそれはひどくねえか!? 俺だっていろいろ考えて生きてんだぞ?」

「いやー、驚いた。お前が何か考えて生きてるなんて思ったこともなかったよ。子どものころから頭の中身は成長してないんだと思ってたが、ちゃんと成長してたんだな」


 実際ソルドの話が正しい見解かどうかはわからないが、それでも考えさせられるものはある。それでも、普段の調子でふざけてしか返せない俺は捻くれているのだろう。

 いつもの調子へと会話の雰囲気も変わり、先ほどの真面目な雰囲気はどこへ行ったのか他愛もない話が続いていた。そんな話をしているうちにも歩みは進み、ようやく谷の外へと一歩踏み出す。

 足を踏み出したそれとほぼ同時に少し遠くで盛り上がる砂、砂埃を舞い上げつつ現れる七体の岩で作られた巨大な人形。

 

「どういうことだ? ゴーレムがこんなにいるなんて聞いてなかったぞ?」


 暑さのせいで出てきたわけではない汗が頬を流れていく。

 これだけの数のゴーレムをただ脅しのためだけに使うわけがない、間違いなく戦闘になる。

 戦闘を察知して武器を構えたはいいものの、魔法のきかない魔道人形相手に対して数的不利な状態。こんな危機をどうやって乗り越えればいいのか正直な話、頭の中に浮かんで来やしない。


 どうやって戦うかを考えている俺たちのことなどお構いなしに、ゴーレムたちはその巨大な脚で開戦を告げる一歩目を踏み出した。

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