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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第三章 草原編
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第28話 あいつは頑張って敵を倒して

 ワイバーンはうなり声をあげながらも、俺のことを睨みつけてきた。


 与えたダメージはたいしたことはなかったようで、さっそく俺の脇腹に噛みつこうとしてきやがる。そりゃ、ワイバーンにとってみれば、俺の攻撃なんて虫にかまれた様なもんだろうけど。もう少し、ひるんでくれてもいいんじゃないかな? 俺なんて尻尾がかすっただけなのに左腕動かないんだよ? なんだよ、この違 いは、せめてソルドの時みたいにもう少し痛そうにしろよ。そんな無駄なことを考えているうちにも、白く鋭い牙は俺に迫る。


 おとなしく食われてやるわけにもいかないので、魔法を使って一気に距離を取り地面へと向かう。魔法を使って減速はしたものの着地に失敗し、地面を転がっていく。

 数回転った所でやっと止まり周りを見渡すと、ちょうど後ろにはソルドがおり、ワイバーンはこちらへと迫っている。


「伏せて!」


 ソルドのさらに後方からエルザのその声が聞こえると同時に、俺たちは伏せる。その直後に俺たちの頭上を突風が通過していくのを感じる。

 風が弱くなったのを確認して上を見るとワイバーンは上空にいた。おそらくは魔法を回避するために上昇したのだろう。

 ソルドが上を見上げながらつぶやく。


「あのまま、ずっと上にいてくれねぇかなぁ」


 できることなら、俺もそうしてほしいが、そうもいかないだろう。もう魔力も残り少なく、まだ左腕の痺れが取れない。おそらく、もう一度敵の気を引く程度が限界だろう。


「それは無理だろ」

「それもそうか。じゃあ、一発食らわせてやるかな」


 そういうと、ソルドは右手をワイバーンへと向ける。一体何をするつもりかと思っていると、ワイバーンの腹に刺さっている槍が燃え始める。ワイバーンは火の元となっている槍を抜こうとして、槍へと顔を近づけていく。その直後、槍を中心として爆発が起きた。


 顔を近づけていたこともあり、ワイバーンへのダメージも大きかったのか、大きなうめき声と共に落下を始める。


「おっしゃー、どうだ馬鹿トカゲ!」

 

 ソルドはそう叫びながら、右手の拳を掲げて喜びをあらわにする。

 そんなことをやっている間にもワイバーンは体勢を立て直し、咆哮で怒りをあらわにする。


 今は二人とも魔法を使ったばっかりだから、準備に多少の時間がかかるだろう、俺も魔力が残り少ない。でも、もう時間は十分稼いだだろ。


「三人とも、避けて!」


 そのシャルが聞こえ、俺たちはシャルとワイバーンの間から離脱する。俺が後ろを向くとそこには、見上げるほどでかい魔方陣を目の前に展開したシャルの姿があった。

 淡く光かっていた白い魔方陣は徐々に光を強めていく。ワイバーンも危険を感じ取ったのか、避けようとし始める。


「逃がすかよ」


 俺はそう言いながら右手をワイバーンへと向ける。直後動きを止めて空中で固まるワイバーン。翼一つ動かせぬほどに強力な力で俺はワイバーンを空中に固定する。

 俺の魔力が切れる寸前まで来た時、魔方陣の光が今までとは比べ物にならないほど大きくなる。そして、シャルの声と共に魔法が放たれる。


「いっけぇぇええ!」


 魔方陣からまっすぐに伸びる無数の白い雷それは、大地を抉り、大気を震わせながらワイバーンへと迫り、そしてそのまま空間ごと白い色が飲み込んでいった。


 魔法が収まった後には、一直線に伸びる抉られた大地と、おそらくはワイバーンであったであろう黒い物体があるだけだった。あれだけの魔法でも形が残るとはさすがドラゴンの一種なだけはある。

 俺はそんな景色を眺めながらシャルのもとへと向かう。シャルはよっぽど疲れたのか、地面に座り込み肩で息をしている。

 まあ、あれだけの魔法だったら疲れるのも当然だな。


「おつかれさん」


 俺がそういうと、シャルは俺の顔を見上げながら口を開く。


「どう、すごいでしょ?」


 そう言ってシャルは屈託のない笑顔になる。

 俺は「ああ、すごかったよ」と言いながら手を差し出し、シャルはその手をつかみ立ち上がる。

 シャルが立ち上がった所でほかの二人もやって来た。


「シャルー、お疲れー」


 そう言いながら、エルザは駆け寄って来る。


「すげー魔法だったな」


 そう言って、ソルドは笑う。


 二人がこっちに来るまでの間に、俺は周囲を見渡すが特に異常はなさそうだ。あれだけの魔法を使ったのだから、大抵の魔物なら恐れをなして近づいては来ないだろう。


 俺は真っ黒に焦げたワイバーンを見ながら、さっきの魔法の威力を痛感する。もしかしたら、真王様に匹敵するかもしれない、などと一瞬考えるが実際の真王様の実力はわからないので俺はそこで考えるのをやめた。


 その時、ふっと思い出して俺はソルドに声をかける。


「そういえばお前の槍、あれに刺さったままじゃないのか?」


 俺はそう言いながら黒い塊を指差し。ソルドはそれを聞いて固まる。


「あぁぁぁあああ!」


 ソルドはそう叫ぶと黒い塊へと走り出し、たどり着いて探すこと数十秒後ソルドの声が聞こえてきた。


「あった!」


 はたして、こんな魔法の中で武器が無事なのだろうか? そんな心配をしながらソルドを眺めていると。黒い塊から槍を引き抜いてこちらへと走ってくる。


「槍は無事だったのか?」

「おう、この通り」


 そう言ってソルドが見せてきた槍は傷もなければ変形している様子もない。この槍も親方が作ったのだとしたら、親方ってすごいな。


「一体、何で出来てるの、その槍?」と言ってエルザは不思議そうな顔をするが、俺だってそんなことは知らないし、ましてやソルドが知っているわけもなく出てきた言葉は「わかんねぇ」という一言、ただそれだけだった。


 その後、俺たちは休憩を取ることにしたのだが、予想以上にシャルの疲労が大きく、その日はそのまま進むことはなかった。


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