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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第三章 草原編
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第21話 森を抜けてこいつは燃えて

 俺は、あくびをしながらテントを出る。まだ朝日は低い位置にあり、辺りには薄く霧がかかっている。


「おう、おつかれ」

「おう、カイン起きたか」


 結局昨日はソルドに途中から見張りを変わってもらい、四時間ほど睡眠をとった。

 俺は水を出す道具の蛇口をひねって水を出し、顔を洗う。タオルで顔や手を拭いてからテントを片付け始める。


 ちょうどテントを片付け終えたころになってエルザがテントの中から出てくる。


「おはよー」


 俺とソルドも口々に返事をし、俺はエルザに尋ねる。


「シャルはどうした?」

「あと、五分寝させてだって」


 そう言いながらエルザは苦笑を浮かべる。

 五分寝たところで何が変わるのだろうか? どうせ五分後にももう五分とか言い出すのだろうが。まあ、シャルはエルザに任せておくか。

 俺はそんなことを思いながら自分の荷物からフライパンを取り出して燻製肉を炒めはじめる。

 そろそろ、完成するときになってようやくシャルはエルザに引っ張られてテントから出て来て、目を擦りながら気の抜けた挨拶をする。


「ほら、さっさと食うぞ」


 わざわざ皿を作るのも面倒なので、そのままフライパンを仮設テーブルの上へ置き乾パンとフォークを手渡す。

 

 食事を終え、俺がフライパンを洗っている間にシャルたちがテントを畳み俺のもとへ持ってくる。


「じゃあ、これもよろしくね」

「ほいほい」


 俺は洗って拭いたフライパンと一緒にテントを魔法で小さくしてウェストポーチの中へとしまう。

 この、物を小さくする魔法も人間たちは知らないらしく、俺たち魔人など魔族特有のものらしい。もっともソルドは使おうと思ったこともないらしいが。

 俺が使えなかったら、毎日乾パンと干し肉と果物だけの食事だっただろうなぁ等と考えながらフライパンやフォークをふいたタオルを魔法で押しつぶして乾かす。


「さて、じゃあ行くか」


 俺がそう声をかけると、三人はうなずく。


 歩きはじめてから四時間ほどが経った辺りで森の出口が見え始めてきた。


「そろそろ、出口だな。一旦休憩しておくか」


 ここから先は、魔物の数も増える。ゆっくり休憩するなら森の中にいる間の方がいいだろう。


「ねぇ、この森を抜けたらどうなってるの?」


 休憩中に突然シャルがそんなことを言い出した。


「ああ、この先なら草原だぞ」

「草原?」


 俺の言葉に対してエルザも耳を傾け始める。ソルドはまるで関係ないと言った感じで昼寝をしている。


「草原なら、見晴らしがいいから安全なんじゃない?」

「それがそうじゃないんだよなぁー。むしろ、魔物に見つかり易くなるから危険なんだよ」


 だからといって、魔物自体はまだ倒せないほど強いわけじゃない、問題は別にある。


「でも、それなら奇襲とかもないからまだ安全じゃない?」

「まあ、それはそうだが。問題なのは、この先の草原の魔物って大抵の場合、大群で行動してるから見つかると大変なんだよ」


 例外的に群れで行動してない魔物は強いし、どっちみち面倒なんだよな。

 

「とりあえず、シャルは自分の身を守ることだけ考えてくれ。わざわざ、戦って倒そうとしなくていいからな」

「わかってるわよ。私だってみんなの邪魔にはなりたくないもの」


 まあ、シャルが自分の力量を理解してくれているのはありがたいな。


「さて、そろそろ行くか。ほら、ソルド起きろ」


 俺はそう言って、寝ているソルドの顔を軽くはたいて起こす。


「ん、いくのか」


 ソルドは大きな欠伸をしながら上半身を起こし、ゆっくりと立ち上がる。何とものんきなことだな、こんな調子で本当に大丈夫かな?

 俺は一抹の不安を覚えながらも再び歩き出した。


 そこから進むこと約1時間、俺たちの目の前には草原が広がっていた。出来ることなら魔物になど出くわさずに抜けたいが、そう上手くもいかないだろうな。

 そんなこと思って、草原を見渡すが周りには魔物の姿は見当たらない。


「おい、みんな。何、立ち止まってんだよ早くいくぞー」


 そんなことを言いながら、ソルドが一人で前を歩いていく。

 頼むから余計なことはしないでくれよ、と思いながら俺はソルドに続いて歩き出す。


 魔物といっても全てが全て危険なわけじゃない、こちらが手を出さなければ襲ってこないような草食の魔物もいる。だが、それを集団で襲うような危険な魔物だっている。この草原では草食の魔物だからといって安心していると。それを狩りに来た魔物と出会ってしまうこともある。結局はできるだけ魔物とは関わらないほうがいいって話だ。


 そんな考えをめぐらせつつ歩いていると、なんだか草がおかしな動きをしたように見えた。


「ん?」


 俺は思わず、声を漏らし、それに反応してみんながこちらを向く。


「どうしたー」


 ソルドが前の方でそんなことを言う。


「いや、そこの草が変な動きを――」


 俺がソルドのすぐ目の前の草を指さした時、もう一度草が動き、ソルドの足元へと集まりだす。


「ソルド、足元!」

「足元がどうした?」


 その様子を見て俺よりも早くエルザが叫び、ソルドはその声に反応して足元へと視線を移した。その次の瞬間、大量の草がソルドに飛びかかった。


「うおっ、なんだ!?」


 ソルドは驚いて後ずさりしながら飛び掛ってくる草――いや、背中に草の生えたネズミのような魔物を手で払う。だが、その数は多く全てを払うことはできずに何匹かがソルドにしがみつく。


「ソルド!」


 エルザは慌ててソルドに駆け寄ろうとするのを、俺は肩をつかんで止める。


「行くな」

「なんで止めるの!?」


 引き留めた俺に対して、怒鳴るエルザだが、次の瞬間にその理由を理解することになる。

 目の前でソルドが燃え始めたのだ。正確に言えば全身が炎で包まれた状態である。当然、足元の草や魔物にも燃え移り、ソルドにしがみついていた魔物たちはみなソルドから離れるが、炎は消えずすぐに動かなくなる。足元にいた魔物たちも草を通じて燃え広がる炎に飲まれ、ついには動かなくなった。


「おーい、ソルド大丈夫か?」

「おう、問題ないぞー」


 ソルドはそう言いながら、燃える地面の真ん中で俺たちに手を振っていた。


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