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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第二章 森林編
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第17話 昔は捻くれてて、こいつに救われて

 まだ、俺が幼かった頃、俺は友達がいなかった。いや、正確にはそんなに仲のいい友達はいなかった。学校で多少話したりはするが、学校を一歩出てしまえば、誰とも関わり合いを持とうとしなかった。


 そんな俺に、ある問題が発生する。二年生での魔法の授業のとき、俺一人だけが魔法で火をおこすことができなかった。そのほかの属性の魔法も、ただ一人俺だけが使えなかった。どうやら俺は、どんな属性の魔力とも相性が悪すぎたらしい。大人になった今でも、全力を出して軽く火をおこすくらいしかできないくらいだ。


 子供とは残忍なもので、そんな俺を見てみんなで笑いものにする。もともと仲のいい友達などいなかったのだから、俺の味方に付くものなどいなかった。

 俺は必死になって魔法の練習をした。周りから馬鹿にされることは、まだ子供だった俺の自尊心が許さなかった。


 俺が学校の休み時間、一人で魔法の練習をしていると“あいつ”がやってきた。


「なんだよ、カインまた魔法の練習してんのか」


 “あいつ”はいわゆるガキ大将だった。俺はこの時、内心、面倒くさいと思っていた。


「関係ないだろ」


 俺はこの時、“あいつ”はまた俺のことをバカにしに来たのだろうと思っていた。“あいつ”は腕っぷしも強く魔法の才能もあったこともあって、学校の子供の間では中心的存在だった。だから、そんな中心的存在である“あいつ”は俺をバカにしに来たと思った。


「関係あるぜ」

「え?」

「なんか、目障り」


 そして、その予想が当たった。我ながら今となっては恥ずかしいことだが、何人にも笑いものにされて怒りもたまっているところで、この言い草である。俺は怒りに任せて“あいつ”に殴りかかった。


「うるせーんだよ」


 だが俺の拳は空を切り、代わりに“あいつ”の膝が俺の腹に決まる。


「いきなり、殴りかかってくんなよ」


 そう言って、“あいつ”は俺のことを足蹴にする。俺をただうずくまって、先生が来て助けてくれるのを待つことしかできなかった。


 その日の学校は終わり俺は家に帰る。


「ただいま……」


 家の扉を開けそうつぶやくが、親は二人とも戦場にいるので当然返事は帰ってこない。俺はベッドへと走り、枕に顔を埋めて泣いた。とにかく悔しかった、魔法がうまく使えないことが、一方的に喧嘩に負けたことが。


 ひとしきり泣き終えると、俺は父親の部屋へ行き、本を漁った、属性の魔法がつかえなくても何かあるのではないか。辞書を使って本を読み進めていき、やっとのことで見つけたものは、上級魔法の中でも特殊な魔法であった。基礎の基礎すらできないのに上級魔法など、普通ならできる訳がないだがその時の俺は、本気でその魔法を覚えようとした。


 学校では、笑いものにされながらも耐え、家に帰ると魔法の練習、そんな日々が続いた。


 勉強を始めてから約一年後、俺の目の前にあった林檎を魔法でつぶす。


「これで、あいつを倒せる」


 一年という期間は、俺の性格を捻じ曲げるのには十分だった。今思うと自分で自分が怖いほどである。


 俺はいつも通り学校に行き、魔法の練習を始める。そうするといつも通り“あいつ”が取り巻きを連れてやってきた。


「なんだよカイン、お前は魔法つかえないんだから黙って、隅で座ってろよ」


 “あいつ”がそういうと、取り巻きが笑い出す。俺はそれに対してただ右手を“あいつ”に向けた。


「何のつもりだ、魔法でも使うのか? あ、使えないんだったな」


 “あいつ”は笑い続ける。


「うるせー、だまれ」

「は、お前誰に口きいてんだ……」


 “あいつ”は最後まで言葉を発することができなかった。俺の魔法によって、“あいつ”の首は締まり、話はおろか呼吸すらできる状態ではなかった。

 “あいつ”は必死で何とかしようとするが、何かが巻き付いて首を絞めているわけではないのでどうすることもできない。

 取り巻きの一人が異変に気づき、俺に向かって火弾を飛ばしてくるが、それを俺は潰し消す。

 そうこれが、俺の十八番かつ唯一使える魔法加圧魔法である。本来はあらゆる方向から力を加え押しつぶすのがこの魔法の本質だが、俺はそれを断片的に使い一方向から力を加えたりして使っている。


 俺は、“あいつ”が苦しそうにする顔を見て、魔法を解く。正確に言えば魔力が足りないから数秒しか持たなかっただけだが。


「お前に言ってるんだよ」


 俺はそう言って、せき込む“あいつ”を見下ろす。“あいつ”はそんな俺を睨めつけ殴りかかってくる。だが、何も俺は魔法だけを練習していたわけではない、緩慢になった動きから繰り出される殴りを俺は躱して殴ろうとしたところで、俺の腕は誰かに止められた。


「やめとけって」


 そいつがソルドだった。そのころソルドは、他の街から両親の離婚を期に引っ越してきたばかりだったので、俺がいじめられていたということは知らない。


「お前には関係ないだろ」

「関係あるよ」

「なんだ、目障りだとでも言いたいのか!?」

「ちげーよ、弱い者いじめが気に食わないだけだ」


 そう言ったソルドの言葉に反応して“あいつ”はソルドを睨む。


「俺が弱いってのか? なら、まずてめーからやっつけてやるよ」

「うっせーよ」


 そう言って、ソルドは“あいつ”の股間を蹴り上げた。当然“あいつ”は動かなくなり地べたに転がる。


「あ、やりすぎちまった。わりーわりー」


 そう言ってソルドは、笑いながらしゃがみこみソルドは“あいつ”に謝る。


「おい、お前」


 ソルドは、俺の方を向いて声をかけてくる。俺はつい、殴りかかってくるのではと身構えてしまった。


「名前なんていうんだ?」

「カインだ……」


 そういうとソルドは笑顔で俺の手を握る。


「俺はソルドだ。よろしくなカイン」


 俺は呆気にとられてしまい、ロクに返事もできずに手を握ったままぶんぶんと振り回されていた。


 これがソルドとの出会いだった。そのあともソルドは、ことあるごとに俺にかまってきて俺がいくら邪険に扱っても笑顔でいた。ソルドは、俺のことを無意識だったかもしれないが、徐々に正しい方向へと導いて行ってくれた。おかげで俺は大人になった今となっては、まともになったと思う。あのまま、友達もいなく生きていたらと思うと恐ろしい。


 ちなみに“あいつ”は俺とソルドにボロボロにやられたことが原因なのか、取り巻きもいなくなりなんとなく学校の中で浮いてしまった。


 俺は、目の前で燃える焚火にまた一本、薪をくべる。どうやら、昔のことを懐かしんでいる間にソルドは眠ってしまったようだ。


「おい、ソルド寝るならテントに戻れ」


 俺はそう言って、ソルドの肩を揺するが一向に目覚める気配はない。


「あれ、ソルド寝ちゃったの?」


 いつの間にやって来ていたのか、エルザがそう言って焚火の近くに座り込む。


「ああ、酔って寝ちまったみたいで起きやしない」


 俺は、軽く肩をすくめてエルザにそういう。


「あはは、じゃあカインも寝ていいよ。私が見張りしておくから」

「いや、そういうわけには」

「酔っぱらって、感覚が鈍ってる見張りなんて、いてもいなくても一緒だよ。ほらほら、早くいって」


 俺は、言い返すことができずエルザに礼を言ってソルドを担いでテントに戻り、眠りについた。

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