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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第二章 森林編
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第15話 俺は感傷に浸って、あいつは優越感に浸って

 俺は、朝日はまだ昇らぬ早朝、霧のかかる中、俺は家の前に立ち、家を見上げる。


 思い返せばこの家を建ててすでに五年がたつ、親は両親揃って魔王軍の傭兵をやっていた、家にいない時間の方が長く、あまり親の愛情を受けて育ってきたとは言えなかったが、俺のことを養うために必死で戦っていたのだろう、ただの戦闘狂だったとはできるだけ思いたくないから一応そう思っておく。


 俺が19のとき、親は戦場で死んだ、俺は親が借りている借家に住んでいたので、親の収入がなくなると同時にその家を出た、親は意外にも俺に遺産を残していて、その金で今の場所に家を建てた、あまり多くなかったから立派な家を建てることはできなかったが、俺にとっては親からもらった最後の贈り物のようなものだった。


 そんな家に、今日俺は旅に出たらもう戻ってこれないのかもしれない、むしろ戻ってこれない可能性の方が高いだろう、それに、親を殺した勇者が憎くなかったかと言われれば、間違いなく憎んでいたし、今も憎んでいる、でも俺はその勇者や人間たちを救う手助けをするために旅立つのだ、普通に聞いたら馬鹿げているかもしれない、だが親の残していた遺産とともにあった手紙に書いてあった言葉に従うのならば、俺はやはり旅立たないといけない。


『後悔の無い様に生きろ』


 その一言に従って、今までの五年間を過ごしてきたと思っているし、これからもきっとそうだろう、だから、目の前で知り合いが死ぬのを黙ってなど見てはいられない、もし何もしなければ、間違いなく俺は後悔するから。やって見て駄目だったら後悔するかもしれないが、まだ後悔すると決まってはいないなら、そっちに俺は賭ける。


 そんなことを考えていると、扉が開き三人が家から出てくる。


「カイン、早くいこーぜー」

「遅いぞ、予定よりも20分も遅れるってどういうことだ?」

「ごめん、シャルがなかなか起きなくて」


 当の寝坊した本人は、目を擦ってまだ眠そうにしている。こんな奴の願いのために俺は命がけの旅に出るのかと思うと少しやる気が削がれる。


「ほら、さっさといくぞ」


 俺はそう言って、先頭を歩き始める、俺のいる家とは町を挟んで反対方向へ行かないといけないので、できるだけ早く、町を越えて森に入った方がいい。まだ、早朝だからそんなに人目に触れるとは思わないが、それでもフードを被っただけで無事に町を抜けられるかは心配である。

 町の中を通らずにいくということも考えたが、それはそれで朝から狩りをしている人に出会わないとも限らない。だから俺は、多少危険度が増しても、時間がかからない方を選んだ。


 町の中でも特に人通りの少ない道を俺たちは進んでいく、何人か町の人を見かけたが、この時間は街灯も灯されていないうえに、日も昇っていないので、気づかれることはなかった。

 もう少しで町を抜けて森に入れるという位置に来た所で、一人の人がやってくるのを確認する、ここまでどうにかなっていたということもあって、俺は大丈夫だろうと高を括っていると、その人物は俺たちに気が付くと、こちらに向かって走り出してきて、俺たちは焦りだす。


「お兄さん方、何か買ってよ」


 そう言って近づいてきた人物は少年で大きな鞄を持っており、今の発言からして物売りだろう。


「悪いが、急いでいるんで」


 そう言ってやり過ごそうとすると、少年は俺の服の裾をつかんで俺のことを、少年が少し大きな声を出し、引き留める。


「少しぐらいいいじゃないか」


 騒がれるのも面倒だと思い、俺は少年の方をため息をついて、少年の方を向く。


「わかった、何か買ってやるから早くしてくれ」

「ほんと? じゃあこれなんてどうかな?」


 そう言って、鞄の中から取り出したのは鉄製の定規だった。


「なんだ、ただの定規か?」

「違う違う、これは定規に見えるけれど包丁としても使える、その名も定規包丁」

「定規は定規、包丁は包丁の方が使いやすいと思うから却下だ」


 こんなものを使ったら、線を引こうとしたら手を切ったなんてことになりかねない。


「えー、じゃあこれは」


 次に少年が取り出したのは、はさみだった。


「今度はいったい何なんだ?」

「こいつは、一見ただのはさみに見えるけれど、実はペンにもなるんだよ」

「いらん」


 確かによく見ると先の方に万年筆のペン先らしきものがあるが、はさみの持ち方で字を書くなど考えたくもない。


「しょうがないなー、じゃあとっておき」


 そう言って、少年が取り出したのは一見、ただの石ころだった、ただ特徴をあげるならばその石はきれいな球体であることくらいである。


「こいつはね、一見ただの石だけど、魔力を流すと五秒後に爆発する爆弾なんだ」


 ここにきて突然、物騒なものを出してきたな。まあ、今までの中では一番使えそうか。


「分かったそれを売ってくれ」

「まいど、煙玉のやつもあるけどいるかい?」

「ああ、それぞれ20個づつ売ってくれ」


 とにかく急ごうと思い、俺は少年の言い値通りに金を払い、そそくさと逃げるように町を出て森の中へと入っていった。

 

「何なのよあの子は!」


 そう言いながら、シャルがフードを脱ぐ。


「おい、まだ誰かいるかもしれないからフードは脱ぐなよ」


 俺はそういいながら、シャルに無理やりフードを被せる。


「それにしても、びっくりしたねー」

「いやー、ハラハラして面白かったな」


 エルザは真面目なことを言っているが、ソルドの奴は状況がよく解ってなかったみたいだな、こんなんだから、俺にバカって言われるんだよな。


「まあ、とりあえず何かの役に立つかもしれないし、さっき買った爆弾と煙幕弾5個づつ渡しておくな」


 そういって俺はソルドとエルザに爆弾と煙幕弾を渡し、シャルには煙幕弾だけを渡した。


「ちょっとカイン、私の分の爆弾は?」

「お前は自爆しそうだから、煙幕弾だけにしておけ」


 俺がそういって、爆弾を腰のポーチに仕舞おうとすると、シャルが腕を掴んでそれを妨害する。


「大丈夫だから渡しなさいよ」

「大丈夫に思えないから、渡さないんだよ」

「大丈夫だって言ってんでしょ」

「いや、大丈夫じゃないって」


 そんな無駄なやり取りを、数回繰り返した後に俺の隙を突いて爆弾をシャルが2つほど奪っていく。


「あ、お前返せよ」


 俺がそういった瞬簡にシャルは履いていた、スカートのポケットの中にそれを仕舞う。


「ふふん、取ってもいいけどそんなことしたらあんた変態よ」


 俺は、こめかみを震わしながら、優越感に浸るシャルの顔を見ることしか出来なかった。

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