表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第一章 発端編
13/47

第13話 俺はのんびりしてこいつものんびりして

「ごちそうさま」


 シャルがそう言ったのに対し「お粗末さま」と返しながら、流し台で食器を洗う。


 食事中に、装備が完成するまでに五日かかることは伝えてあるが、よく考えると時間の期限の百日のうち十日余りを準備だけで費やしてしまうのは、仕方ないとしてもなかなかに痛い。


「はい、これ」


 そう言いながら、エルザがシャルの使っていた食器を持ってきてくれた。


「さんきゅー、エルザ」


 俺はエルザが運んできてくれた食器を受け取り、それを流し台の中に置くと、エルザは隣でタオルを持ち、俺が洗った食器を拭きはじめる。


「エルザも向こうでくつろいでていいぞ?」

「一人じゃ大変でしょ、手伝うよ」とエルザはいいながら、次の食器を拭きはじめる。

 

 エルザは本当に働き者だな、それに比べてあの二人は……


 ソルドは椅子に座ったまま、食事を食べ終えて満足したのか満面の笑みを浮かべており、シャルはもうテーブルに用はないといった様子で、ベッドの上に転がっている。


 俺はため息を一つ吐き、最後の一枚の皿の水を切る。


「後は俺がやっておくから大丈夫だぞ」


 俺はそう言いながら、タオルで手をふく。


「うん、わかった」


 そう言って、エルザはタオルを俺に渡してシャルの方へと向かっていき、何やら話し出したようだ。

 

 俺は食器を拭き終え、シャルたちに声をかける。


「じゃあ、俺はもうソルドのとこ行くな。風呂はもう使えるようになっているから、自由に使ってくれ」


 そう言って、いつのまにか椅子に座ったまま寝ていた、ソルドの頭を叩いて起こし。さっきの買い出しの際に買っておいた寝袋を一つ持って家の入口に向かう。


「家は出るなよ?」


 シャルは「わかってるわよ」といいながら、さっさと出て行けと言わんばかりに、しっしっと手で払うしぐさをした。おそらくは風呂にでも入るのだろう。


 俺はおやすみとだけ言い残して、ソルドを連れてソルドの住処まで向かう。


 森の中を進むこと数分、ソルドも目が覚め今では一人でしっかりと歩いてくれている、夜は少し肌寒いな、などと考えながら歩いていると、一張のテントが見えてくる。


「おお、懐かしの我がテント」


 そう言いながら、ソルドはテントの入り口を開け飛び込む。


「じゃあ、お邪魔します」

といって、テントの中に入り、意外と片付いていることに少し驚く。

 広さは縦横に2.5メートルぐらいでなかなかに広く、テント自体には特にいたんでいるような様子もない。


「風呂入るか?」

「ああ、たのむ。それにしても珍しく片付いてるな」


 普段ならば、そこらじゅうに物が散乱しているというのに、一体何があったのだろうか?


「旅するなら、転移のために片付けておかないといけないだろ、ほれタオル」


 そう言って、俺にソルドがタオルを投げてよこし、風呂桶とランタンを持ってテントを出ていったので俺もそれに続く。


 俺とソルドは、すっかり暗くなり月明かりが差し込む森の中をランタンの明かりを頼りに進んでいく。


「お、あったあった」


 そう言ってソルドが小走りになったので、俺もそれに続いて小走りになる。


「久しぶりだなここに来るのも」

「カインはあんまり来ないからな」


 そう話す俺たちの目の前には、露天の岩風呂が湯気を立てていた。

 ソルドが、風呂が欲しいとテント暮らしのくせに騒ぎだしたのが、3年ほど前、なぜか俺まで手伝わされる羽目になり、あっちこっちを掘ること3か月まさかのまさかで温泉を掘り当て、それから整備すること1か月完成したのがこの露天風呂である。

 せっかく、温泉を掘り当てたというのに、テントを移動させたくないといって、ソルドは結局温泉までの道のりの数分を毎回歩いているらしい。


「いい湯だなぁ~」

「そうだな~」


 俺たちがゆっくり温泉につかって、のほほんとしていると、何かの足音が聞こえてくる。


「ああ、やっぱりまだくるんだな~」

「こない日はないよ~」


 カンテラの明かりによって、近づいてくる者の姿を確認すると先日、シャルを襲っていたのと同種の狼型の魔物であった。


「せっかく、くつろいでるのになぁ~」


 そう言いながら、ソルドは火弾を飛ばして魔物を一匹燃やす。

 当然、こういう種類の魔物が一匹だけなはずがなく、すでに周りを囲むように数匹が待機している。


「めんどくさいな~」


 そう言いながら俺は加圧魔法で、横方向からの力で一匹を吹き飛ばす。


「ほんとだよな~」


 こんどはソルドがそう言いながら、転移で手元に出した槍で、飛びかかってきた魔物を薙ぎ払う。


 これがこの温泉の唯一の欠点である、ゆっくりお湯につかっていると、いつのまにか魔物たちがやってきて襲ってくる。

 まあ、大したことはないからいつも適当にあしらって、逃げていくのを待つだけだが。結局この日も数分間、圧倒的な力の差を見せつけると魔物たちは退いて行った。


「さてじゃあ、あがるか~」


 ソルドがそう言い、俺たちは風呂をあがり、テントへと帰る。

 テントへ帰ると、特にやることもないので、すぐに俺たちは寝袋に入った。


 朝になり、俺が目を覚ますと珍しくもうソルドが目を覚ましていた。


「珍しいな、お前の方が先に目を覚ますなんて」

「ああ、なんか目が覚めちまった」


 そう言いながら、ソルドは目を擦りながらあくびをする。


「まあ、さっさと朝食食いに行こうぜ」

「そうだな」


 そう言って俺たちは、テントを出て俺の小屋へと向かう。


 小屋について、ノックをする。


「おーい、カインだけど入って大丈夫か?」


 俺がそういうとしばらくして、鍵が開いた音がしてエルザが扉を開けて「おはよー」と言ってきたので俺たちもそれに返してから、家の中へと入っていく。


 朝食を作るつもりで、来たのだが、テーブルの上には、すでに朝食が用意されていた。


「あれは、エルザが作ったのか?」

「そうだよー、たぶん来るだろうと持ってたから作っておいた。あ、シャル起こしてくるね」


 そう言って、エルザはシャルのもとへと行き、揺すりながら何度も呼びかけるが一向に起きる気配がない。


「無理みたい、先に食べちゃおー」

「そうだな」


 あいつの寝起きの悪さはよく知っている、昼になってやっと起きてくるような奴だ、朝に起こそうとしたらかなりの根気がいる。


 そんなシャルなど放っておいて、俺たちは朝食を食べだす。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ