表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第一章 発端編
12/47

第12話 時は流れて、俺は帰ってきて

「ああ、やっと帰ってきた」


 俺の目の前には、木造一階建てのなつかしき我が家。たった数日だけだったのにすごく懐かしく感じる。


「ちょっと、何、ぼさっとしてんのよ」


 まったく、せっかく人が感慨に浸ってるってのに、空気の読めないやつだな。


「はいはい、どうぞお入りください」


 そう言って、俺は入口を開け、3人を我が家の中へ入るよう促す。


「おじゃましまーす」


 うん、礼儀がなっていたのはエルザだけだったようだな。

 そんなことを考えながら俺も家の中に入り、扉を閉める。


 俺がテーブルの方を向くと、すでにシャルとソルドが我が物顔で椅子に座っている。


「カインー、お茶ー」

「ソルド、お前に出すお茶はない。あぁ、お茶は俺が出すからエルザは座ってていいぞ」


 そういいながら、俺は台所に向かいお湯を沸かし始める。後ろからは三人の談笑が聞こえてくる中俺は、なにかお茶請けはなかったかと思い、棚をあっちこっち探して、なんとかクッキーを見つけ、それと一緒に4人分の紅茶をお盆に乗せて運ぶ。


「ほら、お茶が入ったぞー」


 全員にカップを渡し、俺も席に着き、紅茶に口をつけ、クッキーをつまむ。

 

「シャルとエルザは、準備できるまで俺の家使ってくれ」

「いいけど、ここに3人は厳しくない?」

「ああ、それなら安心しろ、俺はソルドのとこ行くから。一応聞いとくが、エルザは料理できるだろ?」

「うん、できるよ」

「じゃあ、今から街行って準備とかしてくるから。誰も来ないと思うが、扉は鍵かけてあけるなよ」


 そう言って俺は、残りの紅茶を飲み干し立ち上がる。


「おい、ソルド行くぞ」

「おう、わかった」


 ソルドは紅茶を飲み干すと、口いっぱいにクッキーを頬張り、立ち上がる。

 俺はそのまま家を出て、鍵を閉め街の方へと歩きだす。


「もご、もごご」

「飲み込んでから話せ」


 そういうと、ソルドは口の中のクッキーを飲み込む。


「親方になに持ってくんだ?」

「とりあえず高い酒でも持っていけば喜ぶだろ?」

「親方酒好きだもんなぁー」


 俺とソルドは街で魔石をいくらか売りその金で酒を買い、街の外れにある工房へと向かう。

 とりあえず入口の扉をノックする


「こんな偏屈ジジイのところに来る変わりもんは、一体誰じゃ?」

「ガキの頃、よく悪戯して怒られたソルドと、その連れ添いのカインです」

「なんじゃお前らか、手が離せんから入るなら入れ」


 お、どうやら今日は機嫌がいいみたいだな。これなら作ってくれるかもしれないな。


「お邪魔します」


 中に入ると、身長120cmほどで、その体躯はたくましく、筋骨隆々と言った表現がピッタリであろうの白髪の老人が、金槌で真っ赤に熱せられた金属を叩いている。


 親方は一瞬だけ視線をこちらに向けすぐに、視線を戻し仕事を続ける。


「何の用じゃ? 悪戯なら余所でやってくれ、今は忙しくてかまってやれん」

「いや、今日は悪戯じゃなくて注文に来ました」


 一瞬、親方の金槌を振るう腕が止まるが、すぐに再び動き出す。


「お前が注文とは、いったいどういう風の吹き回しだ? いつも、防具も武器も支給品で十分だと言っていたではないか?」

「少し面倒くさいことになって、まともな装備が必要になってしまいまして」

「ほお、お前さんが、まともな装備が必要なことをするとはの」

「色々ありまして」

「とりあえず、こいつを殺しておくか!」


 そういって、親方は熱した金属をはさみ状の道具でつかみ、近くで何かをいじっていたソルドに向けて突き出し、ソルドが飛び退く。


「あっぶねー、殺す気かよ?」

「殺す気じゃ」


 ソルドのやつ、少しはじっとしてられないのか?

 親方はその金属を再び火の中に入れ、熱し始める。


「それでカイン、貴様は何が欲しいんじゃ?」

「軽装の鎧一式と、全身を覆えるくらいの大きさの盾、あとはナイフが2本ほど欲しいです」

「どのくらいの質のものにする?」

「親方の作れる最高傑作を」


 再び、火の中から金属を出し叩きはじめる。


「かなりの金額になるが払えるのか?」

「払えます、だからお願いします」


 親方はこちらに顔を向け、見定めるかのように俺のことを睨み向きなおる。


「5日後に取りに来い」

「そんなに早く作れるんですか?」

「急いでおるから、わしのところに来たんじゃろ? あと、酒はそこにおいていけ」

「分かりました、では5日後に」

「分かったなら、さっさとそこのバカを連れて出て行け」


 俺はソルドを工房内から蹴りだし、自分も工房を出る。

 鎧と盾とナイフを5日で作ると言っていたが、一体どうするのだろうか? とりあえず、これで装備のことは問題ないな。


 俺はそのあと買い物を終えて家へと戻った。


「ただいま」

「おかえりー」


 エルザが出迎えてくれたが、シャルはベッドの上でゴロゴロしている。


「そういえば、ベッドは一つしかないから、二人で話し合えよ」

「私は旅で野宿とかに慣れてるから、毛布だけで大丈夫だよ」

「そうか、まあ、どうせ必要になると思って人数分の寝袋買ってきたから、これでも使ってくれ」

「ありがとう」


 それにしても、エルザはいい子だな。


「小さいのにえらいなー、エルザは」

「小さいって言うなー!」


 その怒声と同時に、エルザの回し蹴りが目にもとまらぬ速度で俺の腹部に決まり、俺は壁に打ち付けられ、動けなくなる。

 小さすぎて子供に見えるくせに、力だけは子供とはかけ離れすぎだ。あと、小さいって言うのはやめよう、俺が死ぬ。


 俺がなんとか回復し、晩飯を作り始めるとエルザが手伝ってくれるが、その様子が……


「どう見ても、お手伝いする子供にしか見えないよな……」


 聞こえないようにボソッと呟いてみたのだが、どうやら聞こえたようだな。だって今、俺壁際で倒れてるもの。


「そうゆうことばっかり言ってると、女の子にもてないよ?」

「そうだぞカイン、いくらエルザが小さいからって、小さいって言っちゃ、げふっ」


 ああ、ソルドのやつも壁まで吹き飛んで行ったな、でもあいつ頑丈だからなー


「なにすんだよ、俺はエルザの味方だったじゃないかよ!?」

「小さいって言った、でしょ!」

「今のは不可抗力だ、子供じゃないんだからそれぐら、ごふっ」

「子供っていうな!」

 

 今度は天井にぶつかって……落ちた……あ、立ち上がった。


「なにしやがるこのチビー、チビエルザー」


 そのあとも晩飯ができるまで、ソルドがエルザのことをチビと言い、そのたびにエルザがソルドのことを吹き飛ばしていた。

 できれば、屋外でやってほしかったがそんなことを言ったら、俺にも飛び火しそうだったので黙って晩飯を作る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ