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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第一章 発端編
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第11話 俺は貧乏で金は必要で

 俺とソルドは、むやみに外に出る訳にもいかず、宿の自室でババ抜きをしていた。


「なあ、カイン」

「なんだ?」

「二人でババ抜きしてても、相手の手札がわかってるからつまらないな」

「そうだな。お、そろった」

「また、負けたー」


 これで今日の戦績は32戦30勝2敗、いい加減、別のゲームをしたいが難しいゲームになるとソルドはついてこれないので、ババ抜きで我慢している。


 俺はベッドに転がり、枕に顔をうずめる。


「暇だな」


ソルドがそう呟く、俺も同感である。


 昨日の朝シャルたちを待つことを決めたが、唯一の楽しみはエルザが運んできてくれる、飯ぐらいなもので、基本的には暇である。


 俺は、ベッドの上で転がり仰向けになり、ふっと思いついたことを口にする。


「そういえば、ソルドは旅の準備する金あるのか?」

「金はないけど、鎧とかはあったはずだぞ」


 ソルドは大丈夫そうだな。しかしまいった、俺は軽装の鎧がいいが、そんなもの持ってない上に、買う金もない。


「俺は鎧と盾、買わないといけないからなぁ……」


 ついでに言ってしまえば、旅の間の宿泊費その他もろもろも必要なのだが、人間と魔族の通貨は違うみたいだから、シャルたちの金は使い物にならないし。


 そんなことを考えていると、部屋の中にノックの音と同時にシャルの声が響く。


「入るわよ」

「ああ、いいぞ」


 俺がそういうとシャルとエルザが扉を開け部屋の中へと入ってくる。

 シャルは俺とソルドがベッドの上に寝転がっているのを見て、ため息を吐く。


「あんたたちもう少し、緊張感持ちなさいよ?」

「常に気張ってたら、やってられねぇっての。それで何か用か?」

「旅をするにもお金かかるでしょ、だからそのことについて話し合いに来たのよ」


 なんとも、タイミングのいい奴らだな。


「そのことなら、ちょうど考えてたところだよ。でも俺金ないから鎧とか用意したら、それだけで金なくなるし、人間の通貨、俺たちのと違うみたいだから、困ってたところだ」

「なら、何かお金になりそうなもの用意する?」

「そうしてくれると助かるが、いいのか?」


 少し、申し訳なさそうに、俺が言うとシャルはまるで気にしてない様子で口を開く。


「別にいいわよ、もともと私たちの為なんだから気にしないで」

「じゃあ、頼む」


 そのあと話し合った結果、明日の朝食後にシャルの家に行き、魔人たちの間で高値で取引されるものを選ぶことになった。


――時間は過ぎて次の日の朝


 俺たちは部屋で朝食をとり、今はシャルの家へと向かい歩いている、まだ早いためか、あまり人通りはないので、比較的安心して歩くことができた。


「相変わらず、でっけー家だな」

「ソルド、もう少し静かにしてくれ」


 まだ人通りが少ないからといって、目立つことはしないに越したことはないというのに、こいつは分かっているのだろうか?


「ほら、早く入ってよ」


 俺たちはシャルに促されるままに、門をくぐり、シャルに続き、裏口から家の中へと入る。


「ここは倉庫か?」

「ええ、何かよさそうながあったら言ってね。大体は大丈夫だけどダメなものもあるから」


 俺とソルドは、とりあえず倉庫の中を探してみるが、あまり金になりそうなものはない。まあ、倉庫にしまっておくようなものなのだから、当然と言えば当然だ。

 もう、ろくなものはないんじゃないかと思いながら、ある布袋を開け俺は驚く。


「おい、これって魔石だよな?」

「ええ、もう小さくなりすぎて使い物にならないけど魔石ね」


 魔石は魔力が固体になったもので、光属性の魔石なら5センチほどのかけらでも10年は発光し続けるほどの魔力を含んでいるが、1ミリほどの大きさになるとただの水晶のように何の効果ももたらさなくなってしまう。その種類は豊富でどれも応用すれば生活においてかなり便利なものになるが、高価なため一般家庭では、ほぼ使われていない。

 俺の目の前には、もう1ミリほどになってしまってはいるが、魔石が袋の中に大量に入っている。


「この袋は光属性か、こっちは水、これは火、種類ごとに分類されてるのか」

「それでその魔石がどうしたのよ?」

「これっていらないのか?」

「いらないわよ、もう使えないし」


 なるほど、人間はもうこうなったら使わないのか、なら……


「これで金はなんとかなりそうだな」

「何、笑ってんのよ?」

「これ、俺たちの間だったらかなり高価で取引できるぞ」


 そう言って俺は魔石の入った袋を持ち上げる。


「どういうこと?」

「まあ、少し見てろ」


 そういうと俺は鞄の中から、ランタンを取り出す。しかし、そのランプは本来芯のある位置に芯がなく、代わりにガラス玉のようなものがある。

 俺は、光属性の魔石を一掴み、ランタンの下部の燃料を入れるスペースへと放り込み、摘みを回すと、ガラス玉が光り出す。


「え、どうなってるの?」

「こいつは、小さくなって使えなくなった魔石を、直接魔力として使うことができるんだよ、他の魔石も別の道具で使えるから、どんな魔石でも最後まで使えるんだよ」


 そう言いながら俺は、摘みを先ほどと逆に回し明かりを消す。

 シャルとエルザは、まるで信じられないといったような表情でこちらを見ている。


「魔人の技術ってすごいんだね、それを実現しようとして私たち人間は100年以上も研究してるのに未だにできないんだよ?」

「俺も仕組みは分かってないがな」

 

 そう言って笑って見せる。


「そういうわけだから、でかい魔石程じゃないが、こんな小さいのでもそれなりの値段で取引されるんだよ」


 これだけの量があれば、かなりの値段になる。これで金の心配はなさそうだな。


「それなら、店に行ってみる? 魔石をカットして売ってるからそうゆう小さいのなら沢山あるはずだから、安く買えるわよ?」

「おお、なら行こうぜ」


 こりゃ、ぼろ儲け出来そうだな。

 

 シャルの言うとおり店では魔石の細かいものは、ゴミとして扱われているようで、研究資料に使いたいと言ったら格安で譲ってもらえた。


「いやー、これで金の心配はないな」


 そう言いながら、俺はベッドに倒れこむ。

 あのあと何軒か店を回ったら、軽く各種1キロは集まった。ソルドはどれほどの値段になるのかもわかってないようだが、これだけあれば一財産築ける。


「ところで、鎧って言ってたけど、やっぱり親方のとこか?」

「そりゃ、親方のところだろ」

「でも、親方作ってくれっかな?」


 たしかに、親方は気難しいからな、何か手土産でも持っていかないといけないな。

 とりあえず、その日の残りもまたババ抜きをして残りの時間を過ごした。

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