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俺は魔人であいつは勇者で  作者: ほず
第一章 発端編
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第10話 俺たちは話し合って、指針は決まって

 結局、寝付けずに悩み通したが、何もいい案は浮かばぬまま、朝日は昇る。

 

 隣のベッドでは、ソルドがいびきをかいて寝ている。こいつは突然、核心を突いたことを言う、おかげで余計にあいつらを見捨てられなくなっちまう。昨日、今日出会ったような相手だというのに、俺もお人好しだな。


 俺は、カーテンの隙間から差し込み、俺の顔を照らした光の眩しさに目を細め、ベッドから降りてシャワーを浴びに行く。


 俺がシャワーを浴び出てくると、ソルドは寝たままだが、シャルとエルザの二人が部屋に来ていた。


「鍵は閉めてたはずなんだが?」

「ここ、私の家だよ?」


 エルザの右手には、おそらくこの部屋の合鍵であろう鍵が光っている。客の部屋の鍵を、勝手にあけるなんて、何ともいらないサービス付きの店だなここは。


「何か用事か?」

「用事がなければ、わざわざこんな早朝には来ないわよ」

「それもそうだな、それで用ってのは?」


 俺はそう言いながら、髪を拭いていたタオルを近くのハンガーにかける。


「私たちを案内して」

「どこへ?」

「真王の城までよ」


 またこいつは、昨日の話を聞いてなかったのだろうか?


「無理だ、俺はドラゴンなんか倒せないし、ついでに言えばそのほかの魔物も強けりゃ無理だ」

「私が倒すからいいわ」


 俺は呆れて声も出なかった、エルザが言うならまだしも、シャルが倒すと言い放ったのだ、そりゃ驚くだろ。


「時間さえ、稼いでくれれば私が倒すわ」

「あんなクマの魔物も倒せないやつが、ドラゴンを倒せるのか?」

「シャルは確かに、剣を振らせたらなにも切れないし、弓を放てば味方に当てる上に、魔法も発動が遅くて役に立たない」


 エルザさん、横でどんどんシャルが落ち込んでいってますよ?


「けれど、魔力量ならすごいんだよ」

「魔力量がすごくても、魔法発動できなかったら意味ないだろ?」

「だから、時間稼ぎしてって言ってるのよ! 悪かったわね、一人じゃ何もできなくて!」


 シャルさん逆切れはやめてください、それにボロクソ言ったのは、エルザであって俺じゃない。


「じゃあ、シャルは上級魔法を何百発も打てるってのか?」


 そんなでたらめな魔力量じゃなきゃ、ドラゴンなんて倒せないってのに、こいつらは解ってるのか。


「うーん、上級だったら一万発ぐらいかしら」

「い、一万!?」


 なんだそれでたらめとかじゃなくて、ほぼ無尽蔵じゃねぇかよ。


「すごいでしょ」

とシャルはすごく偉そうに胸を張る。


「ああ、驚いた。まさか、それほどとは思ってなかった」

「シャルはね、一人で大規模魔法つかえちゃうんだよ」


 大規模魔法って魔術師が数百人ぐらい集まってやるばかみたいな魔法だろたしか、どんだけでたらめな魔力量だよ。


「確かにそれなら、ドラゴンも倒せるな。ちなみに発動に、どれくらいかかるんだ?」

「上級なら3分、大規模なら15分くらいよ」

「なげーよ、15分もドラゴンから守れるかよ!」

「守りなさいよ、それぐらい!」

「それぐらいって……」


 確かにそれだけの魔法ならドラゴンも倒せるが、15分も戦えるなら、その間に逃げれるだろ……


「ちなみに、真王様の城までたどり着けたとして、どうするんだ?」

「どうするって……どうにかするのよ!」


 やっぱり、こいつは全く考えてなかった、いや、思いつかなかったのか。


「そこが決まらない限りは、どうすることもできないだろ。魔人と人間が共存できることなんて、どうやって証明するんだ?」

「じゃあ、魔族との間を取り持ってくれない?」


 なるほどまずは、共存関係を築いてからってことか、でも……


「それは、無理だ」


 俺の答えにシャルが必死な顔で頼み込んでくる。


「おねがいよ」

「お前たち人間が、勇者を名乗ってどれだけの魔人を殺してきた? お前なら自分たちを殺した相手が、死にそうだから助けてくれと言ってきたら助けるか?」


「それは……」


 シャルもエルザもうつむき、言葉が出なくなる。


「あれ、なんで二人がいるんだ?」


 どうやら、ソルドが目を覚ましたようで、あくびをしながら伸びをしている。


「真王様の城に案内するか、魔人たちとの間を取り持ってくれないかって、頼みにきたんだよ」


 二人の代わりに俺が説明をする。


「おお、いいじゃんどっちもやってあげようぜ」

「え!?」


 ソルドの提案に驚き、俺たち3人の声が重なる


「でも、魔人たちは人間のこと、嫌いなんでしょ……?」

とエルザがおびえたように言う。


「嫌いな奴もいるだろうけど、別に気にしてないやつもいるだろ。戦ってるやつらなんて自分から戦いに行ってんだし」

「ソルド、そうはいっても上手くはいかないだろ?」

「やってみねぇと分かんねぇじゃん。大体、いっつもカインは難しく考えすぎなんだよ」


 ソルドが単純すぎなだけじゃないのか?


「あ、でも取り持つのは無理かな」


 突然、思い出したような様子のソルドに、エルザが声をかける。


「どうして?」

「だって、俺もカインも辺境の町の外れに住んでるだけの一般人だし」


 うん、そう言えば俺たち、全員を説得するような立場にいないんだよな。大体魔人たちってそんなに偉いとかって意識、真王様以外に持ってないし。


「確かに、よく考えたらそうよね、こっちでだって、一般市民が突然魔人を連れてきても、間なんて取り持てないもの」

「そうゆうこと、とりあえず真王様の城か、一回行ってみたかったんだよなぁ~」


 こいつ、真王様の城への道のり解ってるのか?


「それでカインはどうするんだ?」


 俺が放っておいても、こいつらは間違いなく、真王様の城まで行くんだろうし、しょうがない、俺もお人好しだな。


「わかったよ、とりあえず、俺たちは帰って準備とか、しなきゃいけないけど、迎えに来ても街は入れないだろうし、どうするか……」


 俺が迷っていると、エルザが言葉を発する。


「2、3日待ってくれたら、私たちなら街を出れるよ」



 それまでここにいるのか、恐ろしいが、連れて行くならそれしかないか……


「わかった、しばらくここで世話になるよ」


 なんだか乗せられたような気がするが、見捨てるのも心が痛い。こうなったら、とことんまで付き合うか。

 でも、城についてからどうするんだろう?


「はらへったー、朝飯食おうぜー」


 ソルドはいつも通りの様子だな、全くこれから大変になるってのに解ってるのだろうか?

 そんなことを考えて入れ俺の腹の虫が声を上げる。

 まあ、とりあえず今は飯だな。

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