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幸せを知らない令嬢は、やたらと甘い神様に溺愛される  作者: ちゃっぷ


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第5話

「さて、じゃあ家に帰ろうか」


 イラホン様とのこれからに不安・期待が入り乱れて、自分自身が赤面していることにも更に戸惑っていると、彼は当たり前のことのように明るくそう言った。


「え……?」


 そして私が何かを言う前に、身体が空へと吸い上げられるような感覚に襲われ、気が付いたら目の前に大きなお屋敷がそびえたっていた。


 ……?


 あまりの衝撃に言葉を失って固まっていると、神様は私の様子に気が付いたのかニッコリと笑いながら説明してくれた。


「ここは神々の住まう国、ピレドラ。足元が雲になっているでしょ? こんな感じでたくさんの雲の上に屋敷が建っていて、それぞれに神が住んでいるんだよ」


 神様にそう言われて足元を見てみると、たしかに雲のようなもふもふとした白い何かが一面に広がっている。


 周りを見てみれば、離れた位置に雲の上に屋敷が建っているのが何箇所か見えた。


 状況は理解できたが……目の前の光景があまりに現実離れしていて、私の目は驚きのあまり口を閉じることができずにいた。


「さっ、中に入って!」


 そんな私をニコニコと見つめて満足したのか、神様は屋敷の中へと招き入れてくれた。


 屋敷の中に入った私は、また驚いた。


 床から階段まで敷かれたふかふかの絨毯、吹き抜けになって広々としているエントランス、品良く置かれた高価そうな壺や絵画、花瓶に活けられた水々しい花……ホコリ一つ感じない、神々しく清潔な空間。


 さぞかし優秀な使用人を雇っているのだろうと思ったが、不思議と人の気配は感じない。


 そんなことをぼんやりと考えている私を他所に、何かを思い出した様子のイラホン様はパチンッと指を鳴らした。


 誰かを呼んだのだろうかと思ったが、誰も来る様子はなく不思議に思っていると、ワクワクとした様子のイラホン様はこっちこっちと二階の一室へと案内する。


 促されるままその部屋へと行くと、誰かの個室のようだった。


 ふかふかのベッドやソファ、化粧品が揃ったドレッサー、天井には豪華なシャンデリア……女性用の部屋だろうか、どこか落ち着いた中に可愛らしさを感じさせる色合いで揃えられている。


「ここがアルサの部屋ね」


 ……?


 ほわぁ……と美しい部屋を眺めていた私に、イラホン様はしれっとそう言った。


 こんな豪華な部屋……自分にはもったいないと思いつつも、言葉が出ずにワタワタしていると、神様は嬉しそうな微笑みを浮かべていた。


「アルサのために用意したんだ。急ごしらえだから、必要なものがあれば言ってほしい」


 この部屋が急ごしらえ……!?


 目の前の部屋とイラホン様の言動が一致せずに戸惑っていたが、ふっと部屋に案内される前に彼がしていた指パッチンを思い出した。


 まさか……さっきの指パッチンでこの部屋をつくったの!?


 神のパワーに呆然としながらも、イラホン様の方を見るとこちらの反応を待っているようだったので、困惑しつつもありがとうございますと返事をした。


 すると神様はぱぁっと明るい表情になって、嬉しそうにしている。


 子供のようで可愛いなと思っていると、ぐぅ~……とこれまた子供のようにお腹を空かせた音がした。


 ……私のお腹から。


「ふふっ……ご飯にしようか」


 恥ずかしさで真っ赤になっているであろう顔を手で覆い隠していると、神様は嬉しそうな笑顔で食堂へと案内してくれた。


 足に装飾が施されている大きなテーブルといくつかのふかふかな椅子が置かれている食堂に到着すると、イラホン様はその椅子の一つに私をエスコートしてくれた。


 まだ恥ずかしさでいっぱいだったが、私はされるがままにその席に着いた。


 色々なことがありすぎて忘れていたが、考えてみれば今日は朝から食事は抜きと言われていて……お腹が空いていたんだなということを思い出していた。


 少し俯きながら、さっきまで不幸だったことも思い出してしまう。


「さっ、食べよう。アルサ」


 そんな私の考えを払いのけるように、イラホン様が明るい声でそう言って、パチンッと指を鳴らす音が聞こえた。


 私も暗い顔は良くないと雑念を振り払ってぱっと顔を上げてみれば、テーブルには豪華絢爛な食事が並んでいた。


 ……?


 使用人やイラホン様が食事を運んだ様子もなく、目の前の食事たちはホカホカと湯気を上げながら、部屋中に良い匂いを広げ始めていた。


 ま……まさか、また指パッチン!?


 イラホン様の万能さに驚いていると、彼はふっと穏やかに微笑んでいる。


「部屋も食事も、アルサには何の不自由もさせないから。何かあれば言ってね」


 そして砂糖よりも甘い笑顔で、甘い言葉を漏らしていた。


 こんな状況は初めてでどうすれば良いのか分からずに戸惑うが、イラホン様に促されるまま、私はその食事に口をつけた。


「……! 美味しい……」


 イラホン様は安堵すると共に、私の顔を見て、頬を赤らめながら穏やかな微笑みを浮かべていた。


 恥ずかしかったが、彼の嬉しそうな顔を見るのは私も嬉しかった。

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