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幸せを知らない令嬢は、やたらと甘い神様に溺愛される  作者: ちゃっぷ


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第25話

 カーフィンに改めて告白の返事をして、ちゃんと友達になれてからまたしばらく経った。


 私は今日も今日とて、イラホン様の仕事をお手伝いさせていただくために教会に来ている。


 カーフィンも神父様のお手伝いをしているようで教会に来ていて、目があうと声こそ出さないものの、小さく手を振って笑顔で挨拶をしてくれていた。


 私も静かに手を振り返して、挨拶を返す。


 友達としてよろしくと宣言した通り、カーフィンはあれからも変わらず接してくれていて……私達の関係性は変わったけれど、接し方が変わらなかったのは純粋に嬉しかった。


 イラホン様は少しだけ不満そうではあるけれど、私が初めての友達だと嬉しそうに語ったためか、何も言わずに見守ってくれている。


 そんなイラホン様も……また愛おしく、嬉しくて、私は幸せなのかもしれないと最近思うようになっていた。


 ただカティ様とのことが解決していないのは、まだまだ問題だ。


 あれ以来、毎日のように来ていたカティ様とバハロン様の来訪がピタッと止んで……話し合う機会をすっかり失っている。


 自分たちの教会が忙しいのだろうとイラホン様は仰っていたけれど、できればカティ様とも一度、しっかりお話してみたいなと……そうすればきっと仲良くなれるだろうと、私はどこか浮かれていたのだと思う。


 だからいつもだったら人が多くやってくる休日の教会に、いやに人が少ないことに気が付かなかった。


 たとえ気付いていたとしても、私にはどうすることもできなかっただろうけれど。


 十字架の前でいつものようにイラホン様とお話して、甘く頭を撫でてもらっていた時……それは突然、教会にやってきた。


 新しい参拝者かなとそちらに顔を向けると、見慣れた姿が視界を、脳を独占した。


 偉そうにふんぞり返っている男性、小さな教会に入ることを明らかに嫌そうにしながらも扇で表情を隠す女性……そしてそんな二人の特徴を凝縮したような表情をする少女。


 私の家族だった。


 家族の姿を見た瞬間、身体がピシッと固まって動けなくなる。


 心が何かを叫びだしそうなのに、喉がヒュッと鳴って一切声が出せずになった。


 そんな私の様子を心配したイラホン様がなにか声を掛けてくださる姿がぼんやりと視界に映るが、その言葉は耳と頭に届いていない感覚がする。


 今まで立っていた足元が崩れ去る感覚、ぐにゃりと世界が歪む感覚……言い表しようのない不幸が私に襲いかかってくる。


「アルサ……ッ!」


 イラホン様が私の両肩を優しく掴みながら、大きな声で名前を呼んでくれて……初めて現実世界に戻ってくることができた。


 離れた場所にいたカーフィンも、イラホン様の大きな声に気が付いたようで慌てて様子を見に駆け寄ってきてくれた。


 二人の心配そうな表情を見て、やっと身体が動き始めるけど……今度は立っていることができず、へたりこんでしまった上に、身体の震えが止まらなくなる。


「どうした? 大丈夫か?」


 イラホン様にそう問われて、私は震える身体を懸命に抑えながら口を開く。


 キョロキョロと忙しなく辺りを見回すと、私の家族は十字架のそばにいた神父様に話しかけていた。


「か、家族が……来ました」


 そう答えるのが精一杯で、それ以上は声を出すことすら出来なかった。


 小さな教会だし今日は人が少ないためか、あの神父様と話すふんぞり返った人たちが私の家族であることは、二人共すぐに分かったらしい。


 ただ私の様子が尋常じゃないためか、二人ともそれ以上尋ねてくることはなく、ただ私のことを心配そうに見守ってくれている。


「――カーフィン。こちらに来て領主様にご挨拶なさい」


 けれどカーフィンの方は神父様に、領主である父たちに挨拶をするように呼ばれてしまった。


 カーフィンは私が家族と呼んだ人たちが領主一家であることに驚いた様子で、バッとこちらを振り返っていたけれど……私は彼に説明することができる状況ではない。


「……アルサをお願いします」


 心配そうにするカーフィンだが、呼びかけを無視するわけにもいかない……イラホン様に小さな声でそう言い残して、うなずきが返ってきたのを確認してから神父様の方へと小走りで向かっていった。


「アルサ、大丈夫だよ。君の姿は普通の人間には見えない。大丈夫だから」


 私の身体を支えるようにふんわりと抱きしめてくれるイラホン様は、何度も大丈夫と声を掛けてくれる。


 いつもだったら安心できるイラホン様の優しい声。


 でも今日ばかりは、その言葉を信じることができない。


 頭が反射的に拒絶して、恐怖がやってくるぞと警告する。


 なんで家族が教会に……あの家に戻りたくない……怖い……そんな感情が頭を支配していて、私はただ震えていることしか出来なかった。

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