第24話
自分が恋をしていると、イラホン様も自分に恋してくれていると気が付いて……やっとカーフィンの様子がおかしかったのは、自分のせいなのだと思い至ることが出来た。
カーフィンのことを友達だと思っている、彼と会えるのが嬉しい……そんな風に思っていたけれど、私は彼の気持ちを何も考えていなかった。
イラホン様に抱きしめられている私の背後で、カーフィンがまたあの表情をしている気がした。
彼とちゃんと話をしなければ。
「イ、イラホン様。カーフィンと話してきてもよろしいでしょうか?」
「やだ」
私はイラホン様にそう尋ねるが、彼は即答で拒否する。
いつもだったらアタフタして終わりだけれど、今日は引き下がるわけにはいかない。
「……お願いいたします。イラホン様」
私はイラホン様の肩に顔を寄せ、ギュッとしがみつくようにしながら懇願した。
自分の恋心に気が付いた、他人の恋心に気が付いた……自惚れかも知れないという不安もまだあるけれど、でも、イラホン様の言動から私達は#両想い__・__#だと思える。
だからこそ、私に向けられた#もう一つの恋心__・__#にちゃんと答えなければ。
「……分かった」
私の真剣さが伝わったのか、イラホン様は私を送り出すように身体を離していく。
イラホン様を見つめて、お礼を言いながらニコッと微笑む。
するとイラホン様も微笑みを返してくれて、勇気がもらえた。
私は踵を返し、カーフィンの方に歩みを進める。
進む方向にいるカーフィンを見やると、彼はやはり寂しそうな、私を見ているような見ていないようなどこか空虚な目をしていた。
「……カーフィン」
私が声を掛けるとカーフィンはハッとして、表情を見せないようにするためかバッと俯いた。
でも……カーフィンは優しいから、そんな風にしながらも私の声はちゃんと聞いてくれていると思うことが出来たので、話を続けた。
「今まで無神経でごめんなさい。私、カーフィンのことを勝手に友達のような存在だと思っていたけど、告白してくれたあなたに対して……それはすごく失礼な思考だったと反省しているわ」
カーフィンはまだ俯いたままで、何も答えてはくれない。
「それに私は、あなたの告白に対しての返事をちゃんとしていなかった」
私は神様の妻だから、人間界に戻るつもりはないという答えは返したけれど……それはカーフィンの告白に対しての答えではないと、今なら分かる。
そんな状態でカーフィンのことを友達と思っているだなんて、よくもそんな自分勝手な思考ができたものだ……自分の身勝手さに呆れる。
「……遅くなってしまったけど、ちゃんと返事をさせてね。私はイラホン様が好きだから、あなたの想いに答えることが出来ない。ごめんなさい」
私はそう言って、頭を下げた。
私はしっかりと告白してくれた彼の好意に対してちゃんと答える義務がある。
それが……彼の望んでいない答えだとしても。
答えがないのを不安に思いながらも顔を上げてみると、彼はまだ俯いていた。
でもふぅー……とため息をついたかと思うと、バッと顔を上げて、やっと彼の表情がやっと見えた。
「……ちゃんと振ってくれてありがとう。やっと諦めがつくよ。これからは友達として、よろしくね!」
まだ寂しそうではあったけど、彼は笑ってくれていた。
それに……友達と言ってくれた。
告白の答えを言うことで、もうカーフィンと今までのようなやり取りを交わすことはできなくなるだろうと思っていたけれど、彼はそんなことはないと言ってくれているようだった。
「えぇ、ぜひよろしく!」
私も笑顔を返して、私達も友達として笑い合うことができた。
けれど、その空気が気に食わないらしい人物の声が和んだ空気を吹き飛ばす。
「……人間ごときが。私は諦めないからね!」
カティ様は私を指さしながらそう叫んで、ふんっと顔を背けたかと思うと、そのまま消えていった。
彼女にもちゃんと私はイラホン様が好きだと宣言するつもりだったのだけれど、その前にピレドラに帰られてしまった。
「なんかごめんね~。じゃあ、またね~」
バハロン様もそう言いながら、カティ様の後を追うように姿を消した。
途端に静かになった教会で、ふぅ……っとため息を漏らすと、イラホン様がそばまで来て、私の頭を優しく撫でてくれた。
「よく頑張ったね、アルサ。お疲れ様」
少しだけ恥ずかしいけれど、嬉しくてその労いをありがたく受け取っていると、イラホン様はカーフィンの方に顔を向ける。
「お前も……大したものだ」
言葉少なくはあったが、しっかりとカーフィンの方を見てそう言うイラホン様。
突然のことに私は驚いたが、それ以上にカーフィンは驚きの表情を浮かべている。
「あー……ありがとう、ございます」
けれど困惑しながらではあったが、カーフィンもイラホン様の労いの言葉をしっかりと受け取ってくれたようで……それが嬉しくて、思わず笑ってしまった。




