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幸せを知らない令嬢は、やたらと甘い神様に溺愛される  作者: ちゃっぷ


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第19話

 バハロン様に色々と教えていただき、結婚をなしにしようと言われて……正直なところ、私はその通りにした方が良いのではないかと思い始めていた。


 ……私の幸せは、ここまでだったということだろう。


 残念ではあるけれど、今までの人生を思えば十分だろうと諦めることもできた。


「……俺は、俺の妻はアルサ以外では考えられない」


 けれどイラホン様は、諦めかけていた私を力強く抱き寄せながら言い放ってくださった。


 そして呆然とイラホン様の顔を見る私に、イラホン様は微笑みながら続ける。


「約束したでしょ。アルサのことは、俺が必ず幸せにするから」


 見捨てられない、自分を望んでくれる。


 それだけで、また少しだけ自分が幸せへと近付いたのを感じられる。


 私は嬉しくて、泣いてしまいそうになるのをグッと堪えながらイラホン様の腕に手を添えた。


「そっか~。幸せそうで何より」


 そんな様子を見たバハロン様は、またあっけらかんとそう言い放った。


 私がポカーンとしていると、イラホン様がげんなりとため息を漏らしていた。


「いや~、ごめんね。アルサちゃん。でも俺自身に結婚を反対する意思はないから、安心して~」


 謝りながらも、バハロン様は嬉しそうにニコニコと笑っている。


「……どうせ父の差金だろう」


 イラホン様がそう言うと、バハロン様は私の方をちらっと見て、困ったように笑うだけで返事はしなかった。


 けれど二人の中では、話に決着がついたようだった。


「私は反対よ! 人間ごときが三大神の、イラホンの妻になるなんてふさわしくない!」


 話が落ち着きかけたかと思われたが、カティ様が強くそう叫んだ。


 確かに、私がそんな偉大な神の妻に相応しいかと言われると、答えは否……全く反論できないほど、カティ様の言う通りと言わざるを得ない。


 でも、私はイラホン様の腕を離したくなかった。


 そうしていると、イラホン様が優しく私の頬を撫でる。


「……相応しいか相応しくないかなど、関係ない。俺が彼女を望んでいるんだ」


 イラホン様は頬を染め、優しいまなざしでこちらを見つめている。


 顔が近いし、望んでいるという言葉も恥ずかしかったけれど……それ以上に嬉しくて、時間が止まったように感じる。


「……人間ごときが……」


 けれどカティ様にそうつぶやかれて、初めて周りも気にせず見つめ合っていたことに気が付いた。


 バハロン様はまたニヤニヤと見ているし、さすがに恥ずかしくて少しだけ離れると、イラホン様は残念そうな不満そうな顔をなさっていた。


 そのやり取りも悪かったのだろうか、カティ様がどす黒いオーラを纏い始めていることに気付くのが遅れた。


 気がつけば地震のような大きな揺れが部屋を襲い、カティ様は俯きながら何かブツブツと呟いていた。


 バハロン様が隣で止めるように言っていたが、声が聞こえていないのか反応がない。


 かと思うとバッと顔を上げ、私のことを鋭い視線で睨んできた。


「人間ごときが……よくも……ッ!」


 気付いたときにはカティ様の手がこちらに向けられ、私の目の前に、人間へ与えるパワーと正反対の性質を持っているであろう何かが迫ってきていた。


 あっ……死んだ。


 動かない身体……でも頭では、そんなことを冷静に考えていた。


 けれどイラホン様が私をかばうようにさっと腕を出し、カティ様から出されたパワーを握りつぶすようにして散らしてくれた。


「……落ち着け、マラク」


 そしてイラホン様がそう呟くと、鷹のように変化した自らの鉤爪をカティ様の喉元に突き立てていたマラクが、ピタッと動きを止めていた。


 マラクは獣のように息を荒くして、カティ様を睨みつけていたが……イラホン様の指示に、はいとゆっくり返事をして、扉の前へと下がっていった。


 そこで私はやっと呼吸することを思い出した。


 全身から嫌な汗が滲み出て、胸がドキドキと鳴り、血液が全身を巡って……私がまだ生きていることを懸命に告げてくる。


 怖かった……。


 死を目の前にして、初めて怖いと……死ぬのは嫌だと気付かされた。


 身体が震える。


 イラホン様はそんな私の頭と頬を優しく撫でながら、私が生きているのを確認しているように見つめ、それが確認できるとやっと安心したように、ほっと息を漏らしていた。


 かと思うと俯いて、今までに聞いたことのないような低い声を出す。


「カティ……たとえお前であっても、アルサに手を出すことは許さない」


 そう言われたカティ様は、ビクッと身体を震わせて顔を青くしている。


 このままではマズイと感じた私は、とっさに笑顔をみせてイラホン様に声を掛ける。


「私なら大丈夫ですから、ね!」


 そう言うと、イラホン様はゆっくりと顔を上げて悲しそうな顔をしていた。


 思わずイラホン様をギュッと抱きしめると、イラホン様も背中に腕を回して、強く抱きしめ返してくれた。

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