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幸せを知らない令嬢は、やたらと甘い神様に溺愛される  作者: ちゃっぷ


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第16話

 ピレドラに戻ってくると、マラクがいつも通りに迎えてくれた。


「ただい……きゃっ!」


 私が帰ってきたなとほっとしながら彼女に挨拶を返そうとすると、イラホン様に抱きかかえられてしまった。


 驚愕しつつもイラホン様にどうしたのか尋ねてもお返事はいただけず、そのまま屋敷の中へずんずんと歩みを進めるイラホン様。


 そしてやってきたのは、私の部屋だった。


 部屋までやってくると、イラホン様は私をソファに優しく座らせるように下ろしてくれたので……意図はつかめないが、彼の促すままにソファにおさまる。


 するとイラホン様も、ソファの隣に腰を下ろした。


 イラホン様は俯き気味で表情が見えず、私はどうするべきなのかか分からずに困惑していると……イラホン様が口を開いた。


「アルサは……人間界に戻りたい?」


 いつもの明るいイラホン様と違って、呟くような小さな声でそう尋ねられたことに驚いた。


 失礼だとは思いながらも覗き込むように表情を見やると、イラホン様は困惑したような悲しそうな悔しそうな……最後に見たカーフィンのような表情をしていた。


 神様と人間をこんな風に言うのは失礼かもしれないが、似たもの同士なのかもしれないなと思った。


 私はクスッと、思わず笑みがこぼれてしまった。


「……いいえ。私はイラホン様の妻ですもの」


 そう言うと、イラホン様は泣きそうな表情でこちらを見つめている。


 昔の私がカーフィンに妻になってほしいと、自分が守るからと言われていたら……きっとそのまま流されるようにそっちに行っていただろう。


 けれど今の私には、イラホン様がいる。


 確かに……イラホン様にとっては一時の戯れなのかもしれない。


 それでも私を幸せにすると言ってくれたのはイラホン様で……私のこびりついて離れなかった無表情の仮面を割ってくれたのも、泣くことや笑うことを教えてくれたのも全部彼だ。


 私のことを妻にと望んでくれて、私に役割を……役に立つ存在だと教えてくださった。


 だから私は、イラホン様に感謝している。


 幸せが何なのかは未だによく分かっていないけど、今まで経験したことのないことが自分の身に次々に起こって、少しずつ自分が変化しているのは感じている。


 ……イラホン様のおかげで、私は幸せに近付いているのだと思っている。


 だから私はイラホン様のことを信じている。


 幸せになった暁に、飽きたと捨てられる運命だとしても……私はイラホン様に感謝して、死を受け入れられるだろう。


「……私の居場所はイラホン様とマラクのいるこの屋敷と、仕事場である教会だけです。だからどこにも行きませんし、私はここで幸せになるものだと思っております」


 最初はイラホン様の妻になる道しか、私にはなかった。


 だから言われるままに、イラホン様が差し出してくださった手を取るだけだったけど……今は違う、気がする。


 私は自分の意思で、イラホン様の隣にいたいと思っている。


 イラホン様の隣で幸せになりたいと願っているし、イラホン様の隣なら幸せになれると期待している。


 カーフィンが私を見ていてくれたことも、自分の妻にと言ってくれたことも嬉しかったけれど……それでもこの気持が揺らぐことはない。


 私が覚えたての笑顔を浮かべながらそう言うと、イラホン様が優しく抱きしめてくれた。


 抱きしめられるのは何度されても慣れないし、いつでも想定外でどうしても戸惑ってしまう。


「……うん。アルサは俺の奥さんだから、俺が絶対に幸せにする」


 そんな私の様子を知らないイラホン様は、嬉しそうに決意めいた言葉を口にしてくれた。


 イラホン様に幸せにすると言ってもらうと、心にほわっと温かいものが広がって安心する。


 それが嬉しくて、心地よくて……私は大人しく彼の背中に自分の手を添える。


 しばらくそうしていると、イラホン様の身体がふいに離れていった。


 それを名残惜しく思っていると、イラホン様がソファにごろんっと横になって私の膝に頭を乗せてきた。


「……!?」


 あまりの衝撃に言葉がでず、身動きも取れずに固まっていることしかできない。


 そんな私と違ってイラホン様は、下から私の顔を嬉しそうに眺め、真っ赤になっているであろう私の頬に手を寄せる。


「……アルサが自分から俺の奥さんだって言ってくれて、嬉しい」


 イラホン様は頬を染め、優しい眼差しでこちらを見つめている。


 そんな視線で見られるのも、この体勢も、改めて自分の発言を口に出されるのも恥ずかしい……!


 顔を隠したいが、イラホン様の手が頬に添えられていて出来ない。


 結局、私はどうすることもできずに赤面するだけで、くるくると変わるイラホン様の言動に翻弄されることしかできなかった気がする。

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