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第5話 コインランドリーに行くと、助けた少女がいた。

 異常オークを倒し、少女を助けた次の日。


 ある程度の魔石と、洗濯物を背負って、七瀬はコインランドリー……『ハシェルブ』に電車で向かっていた。


 そこそこ大きめ……30リットルのランドリーバッグの中に洗濯物を入れているようである。


 それとは別に、袋に魔石を入れている。


(前に寄ったとき、次は洗濯物も持ってくるって言ったからな。魔石の換金をするなら裏でやりたいし、ハシェルブは俺にとって使いやすい位置にあるから、寄るならここになるし)


 電車に揺られながら、七瀬はそんなことを考えていた。


 ……正直に言うと、馬鹿正直に持っていく方が変だと思われるのは七瀬も理解している。


 しかし、ボロアパートの洗濯機はちょっと形容しがたい性能であり、しっかり洗いたいとは思っていた。


 それに、荷物持ちとしてデカいバックパックを背負ってダンジョンに入っていた七瀬からすると、洗濯物は嵩張らないわけでも重くないわけでもないが、別に持ち運べないわけではない。


(……それにしても、竜の要素があるオークか。あれからスマホで検索したら、特定のダンジョンの奥の方には出てくるらしいが、あんな普通の森の、序盤に出てくるようなものじゃなさそうだ)


 ダンジョンは多種多様だ。


 竜の要素を持つオーク。

 それそのものは、探せばいないわけではない。

 そこに関しては七瀬も理解している。


(それに……)


 七瀬はスマホを取り出して、何かの画像を確認する。


 一体のオークの画像だ。

 当然、鱗も、角も、翼もない。

 だが……外見が、非常に似通っている。


 この画像のオークに竜の要素を加えていけば、昨日、ダンジョンで見たオークそのものだ。


(このオークは、あのダンジョンで出てくる。だが、序盤では出てこない……いや、時折、本来なら奥にいるはずのモンスターが、何らかの影響で手前に来ることがないわけじゃない)


 よほどのことがあった。


 端的に言えばそうなるが、そんな報告で動く組織などありはしない。


(俺が報告したとして、信じられるようなものでもないからな。あの子を助けることしか考えてなくて、写真の一つも撮れなかったのは明らかにミスだ……いや、写真があっても、合成だと思われるのがオチか)


 七瀬は内心でため息をついた。


 今の七瀬は、莫大な魔力量を持っており、それはこの『魔力量至上主義』の中で最も正しいことだ。


 しかし、それが露見した場合、七瀬は確かな成果が求められるようになるが、今の彼は、高ランクエリアで戦えるほど経験値がなく、期待に応えることはできない。


 だからこそ、それを隠しているわけだが、隠している場合、彼は『魔力欠乏』という最も不適合な存在になり、誰からも信用されないのだ。


(あの子が誰かに報告しないわけではないだろう。魔石も残してきたし、あの子が拾ってるはず。それを解析すれば、オークが異常な状態だというのはわかるはずだ。そこから何か進展すればいいか)


 あの少女は、強い人が迎えに来るから大丈夫と言っていた。


 言い換えると、『高ランクの人』が知り合いにいるということであり、魔力量は多いはず。


 この世界は魔力が多ければそれだけ信用につながるので、そこから『適切に評価される』可能性はある。


 そのルートから何かがわかればいい。


(あのダンジョンを管理する支部の情報を定期的に確認するか。進展があれば何か掲載されるだろうし)


 結果的にそう結論付けて、七瀬はスマホをポケットに入れた。


(あれが異常なのか、あのダンジョンが元から持っていた仕様なのか、確定したことが言えない以上、調査中にしかならない。これまでもそうだったからな)


 荷物持ちとして様々なパーティーに参加したが、当然、入るダンジョンも様々で、遭遇するアクシデントも様々だ。


 ただ、いろんなパーティーに参加したが、七瀬は科学者でも有識者でもない。


 現場で遭遇した時にどのように対応するのかという『現場判断』は可能だが、『原因究明』はできないのだ。


 というか、ダンジョンは数が多すぎるため、全てのダンジョンで広く深い知識を有するなど不可能である。


 結局、探索者としてどうするのか。という点で、現場で何をするのかと言う話しか、七瀬にはわからない。


「……ついたか」


 ランドリーバッグと魔石を入れた袋を持ち上げて、地下鉄駅から降りる。

 そのまま、コインランドリー、『ハシェルブ』に向かって、一直線に歩く。


 元は栄えていたことがわかる広さだが、人は七瀬以外には見かけない。

 そんな駅の中で、隅の方に行って……。


「おおっ! あなたは昨日の! ここで待ってれば会えると思ってました! よかったですううっ!」


 昨日助けた元気な少女が、コインランドリーの前で待っていた。

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