第15話 アイアンクロー
「ぎにゃああああああああああああああああああっ!」
「……まぁ、こうなるよな」
安全エリアに戻ってきて数十分後。
アタッシュケースを手に、千鳥が入ってきた。
そして、『どのように逃げようか』とウロウロしていた美鈴の頭に、流れるようなアイアンクローが炸裂し、細腕からは想像もつかない握力で制裁している。
「頭が、頭が割れちゃうですうううっ! 許してほしいですうううっ!」
「大丈夫ですよ。頭蓋骨にひびが入る一歩手前で調整してますから」
「怖すぎるですうううっ!」
およそ一分ほど悶絶している美鈴だが。
「まぁ、もうそろそろいいでしょう」
千鳥がパッと手をはなすと、美鈴はパターン……と地面に倒れた。
「う、うおお……」
「さて、七瀬さん。これを」
千鳥がアタッシュケースを開くと、中には銃身を思わせるパーツが入っている。
「これは……」
「拡張装備、『ジャスティスバレル』です」
「誰が考えたの?」
「特に会議も打ち合わせもなく、いつの間にかみんながそう呼んでいました」
「開発部の脳みそ狂ってんじゃないのか?」
「私もそう思います」
クールな印象がある銀髪美女が『あいつら狂ってる』という言葉に同意してしまうと、七瀬としてはどうしようもないのだが。
「それから」
「ん?」
「こう見えて私、十七歳ですから」
「え、ああ……はい」
顔立ちもそうだが、着ているのがパンツスーツでとても落ち着いた雰囲気であり、二十代前半に見える。
ただ、間違いなく十七歳だ。
「そ、そう、なんですよ、千鳥さんはピチピチの女子高生なんです!」
「意外と復活速いな。そして心の中におっさんでも飼ってるのか?」
「さぁ?」
「学校指定がキャメルのブレザーですけど、千鳥さんが切るとマジでコスプレですからね!」
「もう一回制裁したほうがよさそうね」
「それは勘弁ですうううっ!」
あまりふざけすぎるとアイアンクローが飛んでくることは美鈴も重々承知だろう。
ただし、美鈴としては、それでもそういう話がしたいのだ。
(多分、人として、千鳥さんのことが好きなんだろうな。多分)
好きな人には迷惑をかけて、自分のことを意識してほしいし。
何より、人間、かけられた迷惑と言うのは意外と覚えているものだ。
それはともかく。
「で、これを付ければいいんだな?」
「はい」
七瀬は銃身パーツを掴んで、銃型ガジェットにくっつける。
上手く接続が完了したようで、一瞬、溝が光った。
「……なんか一気に重厚感が出たな。遠距離攻撃って言うけど、射程距離は?」
「魔力を注ぎ込めばそれだけ伸びますが、長くて3キロでしょう」
「十分だな。それじゃ、行こうか」
「よっしゃー! 今度こそ工場をベキャンベキャンにしてやるですうううっ!」
「……そういえば千鳥さんって、ベキャンベキャンって擬音の意味、わかります?」
「でっかい恐竜が体重をかけて何度も踏みつけるような感じ。ではないでしょうか? どうでもいいですが」
「……この銃って、恐竜の踏み付けよりも威力が出ますかね?」
「それは七瀬さん次第です」
「そうですか……」
とりあえず確定しているのは。
割と、七瀬も千鳥も、美鈴のペースに乗せられているということである。




