表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/15

第14話 調査開始

「昨日きた安全エリアに戻ってきました! ここから川の上流に進んでいって、何かの施設をベキャンベキャンにすればいいんですね!」

「ベキャンベキャンなんて擬音、初めて聞いたな」


 ダンジョンの安全エリアで水質が悪いのは、大規模で人為的な何かが発生している可能性がある。

 水質が悪いのなら、川の上流で何かが起こっている可能性があり、そこを対処すれば、元からダンジョンが持っている『強力な自浄作用』によって、元の環境を取り戻すはず。


 というわけで、再び、魚を全然釣れなかった場所に戻ってきたわけだが、美鈴としては、興味があるのは魚だけのようだ。


「ここから上流に向かって進もう。モンスターは大体強力なものが出てくるから、飛び出すなよ」

「わかりました!」


 釘を刺しつつ、七瀬は美鈴を連れて、上流に向かって歩く。


「そういえば、七瀬さん。ずっと戦闘スーツを着てますけど、大丈夫ですか? 着心地とか」

「着心地はちょっと……古い服を着たような違和感はあるが、まぁ試作品だし、重くないだけマシだ」

「重くないだけマシとは?」

「荷物持ちをやってた時代は、基本的に40キロくらいのバックパックを背負ってたからな」

「重すぎるですううっ!」

「便利な魔法は大体スマホに入ってるからな。アナログで持ち込んでおいて損をしないものを大体持って行こうとするとそうなる」

「お、おぉ……」


 便利な魔法と言うのはたくさんあり、それはアプリとしてスマホの中に入っている。


 昨日、七瀬が使ったような、『水が有害かどうかを検査する魔法』も入っており、本来なら専用の研究機関に持ち込まなければならないような検査すらも、現地で可能だ。


 しかし、それだけですべては解決できないため、アナログの道具をいろいろ持ち込んでいた。


「それに比べれば、むしろ身体能力を強化してくれる分、いつもより楽だ。ちょっと補正が強くて振り回されそうになるけど」

「大丈夫なんですか?」

「40キロの荷物を背負ってたって言ったろ? インナーマッスルなんてバキバキだからな」

「おおおっ! 最近太ったお父さんとは大違いです!」

「沽券にかかわること言うんじゃありません」


 なんかすごい角度から飛び火した気がする。


「……魔力量も問題ないし、まぁ、ずっと着てても問題ないよ」

「凄いですね。生成ランクAの千鳥さんにも少しだけ試してもらいましたけど、十秒も無理でしたよ?」

「だろうな。スライムコアに『状態を変化させる錬金術』を使い続ける必要があるが、魔法と違って、錬金術は魔力量の消費が凄い」

「ふむぅ、どれくらい違うんですかね?」

「魔法は個人用プロジェクター。錬金術は産業用3Dプリンターみたいなものらしい」

「おおっ! 物知りですね!」

「いや、スーツの説明所に書いてた」

「えぇ!?」


 説明書をしょっちゅう読んでいる美鈴だが、最初から適当にパラパラとめくって、途中で飽きて読むのを辞める。と言うことが多い。


 要するに、『最初の方を流し読みしているだけ』であり、後半の細かい部分は全然読んでいないのだ。


「ちなみに私は生成ランクCなので秒も無理でしたけどね!」

「だろうな」

「私は胸もCですけどね!」

「関係あるのか?」

「千鳥さんはおっぱいもAですけどね!」

「本人に言うなよ」

「言ったらアイアンクローが飛んできましたよ。めっちゃ痛かったです」

「あぁ、すでに制裁済みだったのか。ならまぁ……いいや、うん」


 七瀬としては、美鈴が指摘しない予想ができなかったというか。マジで心の底からどうでもいいと思ったというか……。


 これ以上、その話を広げても仕方がない。


「千鳥さんの話でいうと……俺びっくりしたんだが、あの人、二十代前半にしか見えないよな。本当に……17歳なのか? 俺の一個上?」

「そうですよ。おばさんかと思ったらお姉さんで驚きました!」

「なんだろ、千鳥さんの話をすると地雷しかないのは気のせいか?」


 遠慮も躊躇もない美鈴。


 七瀬としては、こういう人間と過ごした経験が浅いのか、制御に困っているようだ。


 もちろん、魚が大好きで、それを最終目標にすれば、行動を誘導するのは簡単である。


 しかし、こう、クッソどうでもいいことを話す場合、なんだか妙なことになるのである。


 もちろん、嫌な気はしない。


 ★


「全然見えてこないじゃないですか!」


 とはいえ、七瀬としても。

 川沿いに三時間ほど歩き続けても、何にも遭遇しないというのは、想定外であった。


「……こういう時、事務所ではだれに話を聞くんだ? 機転が利く人っている?」

「そりゃ千鳥さんですよ」

「ちょっと電話してみるか」

「そうですね!」


 美鈴はスマホで電話している。


『……なんでしょうか、Cカップのお嬢さん?』

「……あれ、これ、後でアイアンクローですかね?」

『それはともかく、何かありましたか?』

「え、えーとですねー……三時間、川沿いに歩いても、何も見つからないんですよ!」

『……なるほど、施設そのものに何かトリックがあるということでしょう』


 発想が出てくるのが早い。


 というより……Aランク探索者なら、何らかの大規模作戦に関わっているケースもある。

 そうした作戦では、ダンジョンの中で拠点を構築して、周囲のモンスターを狩りまくるという『泊まり込み』が時々あるのだ。


 拠点構築のノウハウを知っていれば、『拠点を狙ってくるモンスターの対処』のために、何かトリックを仕込むことくらいは想定できるのだろう。


「ふむむぅ……」

『誘導、認識阻害、様々なことが考えられます。とはいえ、ダンジョンの奥に物資を大量に運び込むことは不可能なはず」

「そういうものですか?」

『七瀬さんのような人がいるなら話は別ですが、基本的に難しい話です』


 便利ですぐに成果を得られる魔法が求められる社会で、純粋に体を鍛えて、重い荷物を運搬する訓練や経験を積んだ人間と言うのは希少である。


『周囲のモンスターを倒せば魔石が手に入るので、魔法で構築できるインフラだけで、隠蔽と防衛のシステムを構築していると考えられます』

「おおっ」

『思えば、川沿いに進めば目的地にたどり着くというのは、予測としては合理的過ぎましたね。相手側も、その程度は対策しているでしょう』

「なるほど、それで、どうしましょうか」

『要するに、拠点に帰るためのアイテムを持っている人をおびき寄せることができればいいわけです』


 相手がどんな魔法を構築し、誘導や認識阻害をしていたとしても。


 そこに関わる人間は、拠点に戻ってくる必要があるため、戻るためのアイテムや手段を何かしら持っているはず。


『認識阻害であれば、地図を頼りに、川沿いの平らなエリアを適当に遠距離攻撃していれば、相手側が耐えかねて出てきますよ』

「ふむふむ、ならさっそく……」

『ただ、ジャスティスヒーローの銃ガジェットは、そこまで射程距離が長くありません、試作スーツでも使えるアタッチメントを持っていきますから、釣り堀があった安全エリアで待っていてください。そこまでなら、怪我が完治していない私でも行けます』

「分かりました!」


 電話終了。


「七瀬さん! 釣り堀があったところに戻りましょう! 千鳥さんが必要な装備を持ってくるそうです!」

「なるほど」

「あと、鍋ってありますか?」

「何に使うんだ?」

「このままだとアイアンクローが飛んでくるので頭を守るためです」

「諦めろ」

「そんなあああああっ!」


 地雷を踏んだ美鈴が悪い。

 そういう話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ