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美容師パパは魔道具担当、料理人ママは飯担当、娘は赤点担当の勇者です  ~異世界の隅っこで、家族スローライフ始めました~   作者: antomopapa


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第23話 魔法ボイラー完成と、サオリの手作りサンドイッチ



南の平原での激闘を終え、最高級の肉をマジック収納に詰め込んだ三好家は、心地よい疲れと共に帰宅した。

しかし、一家の大黒柱であるケンの仕事は、まだ終わっていない。

「よし、リナが風呂に入る前に、これをセットしちまわないとな」

ケンは作業場にこもり、昨日から準備していたボイラーの筐体に向き合った。

今回の心臓部は、あの日リナが命懸けで倒した『ワーベアー』の巨大な魔石だ。

ジャイアントボアのものよりも遥かに魔力密度が高く、安定した熱源を供給できる。

「箱の中に魔石をセットして……固定の回路を流し込んで、と。

よし、回路の『熱湯』の文字に魔力が乗った。

水はまだ自動化できないけど、魔法陣で生成すればいい。……よし、できたぞ!」

配管を繋ぎ、起動スイッチを入れる。

数分後、バスルームから「わっ、暖かい!」というリナの歓声が聞こえてきた。

三好家、待望の『魔法式瞬間湯沸かし器』の完成である。

リビング に戻ると、キッチンからは香ばしい、肉の焼けるたまらない匂いが漂っていた。

サオリが明日の仕込みと、今日の晩餐の準備を並行して進めているのだ。

「ケン、お疲れ様。お風呂、リナがすっごく喜んでるわよ」

「ああ、今日からお風呂が快適になるぞ。……それにしてもいい匂いだ。ローストビーフか?」

「ええ。でも、もう少し待ってね。もうすぐ出来るから」

「急がなくていいよ。……ん、何か手伝うことは?」

サオリはフライパンのソースを木べらで混ぜながら、ふと思い出したように言った。

「あ、そうだ。ソース用のワイン、切らしてたの。パパ、買ってきてくれる?」

「了解、すぐ行ってくるよ。銘柄は何でもいいか?」

「煮詰めるから、安くて渋みの強いのでいいわ。お願いね」

ケンが外へ出かけると、キッチンにはサオリとリナの二人きりになった。

リナは身を乗り出して鍋の中を覗き込む。

「ねえママ、ソースにワインを入れるって言ってたけど、私それ食べても大丈夫なの?

酔っ払ってパニックになっちゃわない?」

サオリは娘の可愛らしい心配に、クスクスと笑いながら答えた。

「大丈夫よ。しっかり煮込むとアルコール分だけ飛んでいくから、旨味だけが残るの。

リナでも美味しく食べられるわよ」

「へぇ~、そうなんだ! 魔法みたいだね。……あぁ、お腹すいてきた~!」

「もうすぐだから、ちょっと待っててね」

しばらくして、ケンがワインの瓶を抱えて戻ってきた。

「ただいまー。一番良さそうなのを買ってきたぞ」

「パパおかえりー! ねえパパ知ってる?

ワインってね、煮込むとアルコールが飛んでいくんだよ! 常識だよ!」

リナがさも自分の知識のように胸を張る。

ケンはそんな娘の様子を見て、サオリと目配せしながら優しく合わせた。

「へぇ~、そうなんだ。リナはよく知ってるなぁ。お父さん、今の今まで知らなかったよ」

「でしょ? えへへ!」

「ふふ、ちょうど良かったわ。ワイン、ちょうだい」

サオリはケンから受け取ったワインを贅沢にフライパンへ注いだ。

ジュワッという音と共に、芳醇な香りが部屋いっぱいに広がる。

「ありがと。あとはこれを煮詰めるだけ。リナ、お皿を出してくれる?」

「はーい!」

その日の晩御飯は、プレデターブルの最高級ローストビーフ。

とろけるような脂の甘みと、特製赤ワインソースの深いコクに、三人のフォークは止まらなかった。

翌朝。

キッチンには、朝日が昇る前からサオリの包丁の音が響いていた。

今日はお礼の品、特製ローストビーフサンドイッチを作る日だ。

「……よし、お肉の厚みも完璧。気に入ってもらえるといいけど」

少し不安そうに呟くサオリ。

背後から準備を整えたケンが声をかけた。

「大丈夫だよ。サオリの料理は、元の世界でも……いや、この異世界でも一番なんだから」

「ありがとね、ケン」

二人が見つめ合って微笑むと、隣で靴を履いていたリナがジト目で口を挟んだ。

「ちょっとー、娘の前でイチャつかないでよ。パパ、鼻の下伸びてるよ」

「喧嘩してるよりいいだろ」

ケンが照れ隠しに笑うと、三好家は意気揚々と子爵邸へと向かった。

子爵邸の門を叩くと、門番がにこやかに迎えてくれた。

「おはようございます。お師匠様……じゃなかった、ブイヨン子爵様はいらっしゃいますか?」

「リナさんですね、伺っておりますよ。どうぞ」

いつもの訓練場へ向かうと、そこには驚くべき先客がいた。

ギルドマスターのバルガスと、その隣には、紫色の髪をなびかせた妖艶な美女。魔族のカミラだ。

「ギルマス、おはようございます! あれ、お隣は……カミラさんですか?」

リナが興味津々で駆け寄る。

そして開口一番、とんでもないことを聞いた。

「カミラさん、おはようございます!

ギルマスのどこが良かったんですか? こんなゴリラみたいな人のこと、どうやって好きになったんですか?」

「会って最初に聞くのがそれかよ!」

バルガスのツッコミが炸裂する。

カミラはリナの率直さに驚き、その後、鈴を転がすような声で笑い出した。

「おはよう、リナちゃん。バルからいつも聞いてるわよ、とっても可愛い『おバカ勇者さん』だって♡」

「おはようございます。リナじゃなくても聞きたくなりますね。

どうやってバルガスさんが、こんなにお綺麗な方を落としたのか……」

ケンも失礼を承知で深く頷く。

カミラはクスクスと笑いながらサオリの方を向いた。

「アハハ、ありがとうございます。あなたがサオリさんね?

コトコト村で大人気の屋台の店主さん。バルが、あなたの料理を食べると他のものが物足りなくなるって嘆いていたわ」

「うふふ、ありがとうございます。今日は大したものではないんですが、たくさん作ってきたので、皆様で召し上がっていただきたいです」

「お、お師匠様!」

リナが訓練場の奥に、ブイヨン子爵の姿を見つけた。

「ふぉふぉふぉ。賑やかでいいのう。これだけ美人が揃うと、この訓練場も華やぐわい。今日のお昼が楽しみじゃな」

「お口に合えばいいんですが……」

サオリが控えめに頭を下げると、子爵は満足げに頷き、そして表情を引き締めた。

「それではリナよ。今日も修行を始めるぞ。

前回と同じように、まずは雑巾がけからじゃ。いいか、力はいらん。力を抜いて、手首を柔らかく使うのじゃ」

「はい! 今日も頑張ります!」

リナの元気な返声が、ポタージュ公国の爽やかな朝の空気に響き渡った。

三好家の「異世界スローライフ」は、着実に、そして賑やかにその輪を広げていた。



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