第5章:三正面戦闘!
——選択肢などない——
アキヒロの眼前に立ちふさがる三体の神獣。
コーイチは地面に倒れ、動けない。
「攻めるしか……ねえ」
震える拳を握りしめながら、彼は呟いた。
右にはミノタウロス。左にはキメラ(傷だらけだが)。頭上ではフェニックスが旋回し、急降下の機会を伺う。
逃げ道はない。一歩の誤りが死を意味する――彼にはわかっていた。
最初に動いたのはキメラだった。口から炎のブレスを放つ。
「くそっ……! 今度は火を吐くのか!?」
燃え上がる木々を横目に、アキヒロは転がる。
ミノタウロスの突進が迫る。
「こいつ……牛並みに速い……!」
刀を構え、最も弱そうなミノタウロスへ斬りかかる――その刹那、フェニックスが彼を鷲づかみにした。
「離せ……っ!」
必死で翼に剣を突き立てるが、高所から放り投げられる。
「『雲遁術・天空枕』!」
コーイチの呪文が炸裂。固形化した雲がアキヒロを優しく受け止めた。
額から血を流すコーイチが木の上から杖を構える。二人の視線が交わる――言葉は不要だった。
「「今だ……!」」
アキヒロが雲から飛び降り、空中斬撃を放つ。
コーイチの放つ氷雷がフェニックスの翼を直撃。
炎の鳥は森へ墜落。
ミノタウロスへ斬りかかるアキヒロ――だがキメラが介入し、刀がたてがみに刺さる。
「動けねえ……!?」
暴れるキメラに振り回されるアキヒロ。
「アキヒロさん……!」
コーイチの叫びと共に、ミノタウロスが巨体で木々をなぎ倒す。
その時――
二体の神獣の視線が交錯した。
「アルファ」を倒した者同士。
森の支配権を賭けた本能の対決が始まる。
キメラが跳びかかる。ミノタウロスが突進する。
大地が割れるほどの衝撃が森を揺るがした。
アキヒロは刀を引き抜き、落下。
――ミノタウロスの視界に真っ逆さまに飛び込む。
「一人なら……勝てる!」
コーイチの声に応え、アキヒロは連続斬撃を浴びせる。
ミノタウロスの膝を斬りつけ、巨体を転倒させる。
だが致命傷には至らない――
「赤……海……月……太陽……『停止』……『破壊』……」
コーイチの詠唱が森に響く。
逆さ月の魔法陣が天空に現れ、紅い光がミノタウロスを貫いた。
「『紅月術・第一段階――月衝』!」
光の奔流が怪物を焼く。
アキヒロが背後に回り込み――
「これで……終わりだ!」
コーイチの杖剣がミノタウロスの背中を突き刺す。
「『紅月術・第二段階――月爆』!」
ドゴォォン……!
光の刺青が爆発し、森がクレーターと化す。
煙の中、コーイチがよろめきながら現れる。
「アキヒロ……!?」
「平気……だ……」
瓦礫の中から咳き込むアキヒロ。
戦いの跡を調べる二人。
しかしそこにあったのは――
「「女の子……!?」」
銀髪の魔女が倒れていた。
螺旋の蛇の紋章が刻まれた北のギルドの装束。
「北方の……魔導士……」
コーイチが呟く。
その時――
炎の影がクレーターを覆う。
フェニックスが舞い降り、キメラが咆哮する。
アキヒロは悟った。
これで終わりではない――と。
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