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【第1話】レベルアップ通知が来た。──ただし、ゴミ出しをしただけで。

朝の6時30分。目覚ましのアラームがいつものように鳴る。

 そして、俺、坂本陽介(28)、独身・一人暮らし・可もなく不可もないサラリーマンは、いつも通りにそれを3回スヌーズしてからようやく起き上がった。


「ふぁあ……今日も会社、行くのか……」


 眠い目をこすりながら、歯を磨き、顔を洗う。

 冷蔵庫には昨日買ったコンビニのサンドイッチがあったので、それをかじる。

 コーヒーだけはインスタントじゃなくてドリップにしているのが、俺なりのこだわり……というか、せめてもの気分転換だ。


 さて、今日は水曜日。可燃ごみの日だ。

 部屋の片隅に置いていたごみ袋を結んで、アパートの外へと運ぶ。


 ──そのときだった。


【ピロリン♪ 生活経験値+10】【生活レベル:1 → 2】


「……は?」


 ポケットに入れていたスマホが突如、通知を鳴らした。

 画面には、普段使っているどのアプリでもない、妙にゲームっぽいUIのメッセージ。


「生活経験値? 生活レベル? ……何これ、ドッキリ?」


 スマホを再起動してみても、その通知は消えず、むしろ「マイページ」やら「達成目標」やらの項目が追加されている。


 ──試しに“生活レベル”の欄をタップしてみると、説明が出た。


■生活レベル:2

・日常行動に応じて経験値が加算されます

・一定値に達すると自動的にレベルアップします

・レベルアップによって、生活効率・小さな幸運・集中力などが微増することがあります

・他者への影響はありません


 何この説明。怖いくらい丁寧。

 とりあえず、現実感がなさすぎて笑ってしまった。


「ふーん……まあ、誰かのイタズラか夢オチってことで……」


 そう思って、会社へ向かう。最寄駅まで徒歩7分。

 いつも通りの通勤ラッシュ。いつも通りの満員電車。

 ただ、今日はちょっとした変化があった。


 目の前の席が空いた瞬間、俺の隣に立っていたおばあさんがゆっくりと腰を下ろそうとしていた。

 思わず手を添えてサポートする。


「ありがとうございます、助かりました」


 そんな丁寧なお礼を受けて、俺も「いえいえ」と頭を下げる──と、


【生活経験値+8】


 まただ。スマホが反応している。

 完全に“俺の行動”に合わせて経験値が加算されている。


「……まじで、なんなんだコレ」


 その後、会社についてからも状況は変わらなかった。


 上司からの理不尽な修正依頼を、深く考えずにサクッと終わらせたときも、


【生活経験値+5】


 ランチのときに同僚の忘れ物を届けたときも、


【生活経験値+6】


 そして終業時刻を迎え、今日のタスクをすべて終えてPCをシャットダウンした瞬間──


【レベルアップ:生活レベル 2 → 3】


「……うわ、ほんとに上がったよ」


 でも、身体が急に軽くなるわけでも、ステータス画面が現れるわけでもない。ただ、通知が鳴るだけだ。


 それでも、不思議なことに──


 今日は少しだけ、集中力が続いた気がするし、作業効率もよかった気がする。


 帰り道、ふと立ち寄ったコンビニで、ずっと売り切れだった限定プリンが棚に1個だけ残っていた。


 あれ? もしかして、これが“小さな幸運”?


「……まあ、悪くはないかもな」


 特別な力も、戦いも、魔法もない。ただ、生活してるだけで、少しずつ経験値が溜まって、ほんのちょっとずつ“いい日”になる。


 そんな日々が、これからも続けばいい。

 それが、俺の望む“平穏な生活”ってやつだ。

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