【プロローグ】First-ever cigarette smoker
処女作です。BL要素を含むかもしれないボーイミーツボーイが書きたくて書きたくて……
文章を書く練習も兼ねて短めの話を淡々と上げていくつもりです。
黒歴史になりそうな稚拙な文書ですが読んでいただけると幸いです。
初めて嗅いだ煙草の匂いは嫌いだった。
父親が煙草を吸う度にその鼻につく匂いや目に染みる煙、後を引く残り香その全てが嫌いで自分は絶対に煙草など吸いたくないと子供ながらに決意した。
自分は屋上が好きだ。
居心地が悪い教室ややけに騒がしい食堂、人の目が気になる中庭にいるよりも風を感じながら屋上にいる方がよっぽど心が休まる。
心が休まらなければ「休み時間」ではないのだ。
自分が通っている高校は生徒の自主性という幻想を信じているので屋上も自由に出入りできるのだが些か人気がないようで、ベンチやフェンスもないただの屋上にわざわざ足を運びそこで昼食をとる物好きは自分しかいなかった。
はずだった
どうやら今日はいつもとは違ったらしい。
自分が心底嫌いな鼻をつく匂いが心の平穏を乱す。
煙草の匂いだった。
ここは高校なので教師以外煙草を吸う人は居ない。教師も職員専用の喫煙所があるため、この学校の敷地内で煙草の匂いを嗅ぐことは無いはず、なのに煙草の匂いがするのはおかしい。
周りを見渡してみると1人屋上入口近くで煙草を咥えた男を見つけた。
ロングの黒髪で片側を耳にかけ、耳の周りは刈り上げていてよく見ると顔と耳には金のピアスが付けられておりより一層彼の黒髪の綺麗さを際立たせていた。
女性のように整った顔立ちに細身の身体、腕や足に至っては不健康なほど痩せていてそれでいて造形美のようなものを感じるほど手足は長かった。その上履きの色から彼が1つ上の3年生ということがわかった。
左手をポケットに入れ明後日の方向を向きながら右手で煙草をふかしていた彼は扉の開く音でこちらに気づき、未成年喫煙者の割には焦りのない様子でこちらを向いた。
「ごめんね、煙草、無理だった?」
「いえ、お気になさらず。」
「煙草、嫌いなんでしょ?顔に出てるよ。」
初対面の人相手なのに驚くほど爽やかな口調で笑いながら話しかけて来た彼は恐らく煙草の匂いで嫌そうにしていた自分に気を使ってか、足元に煙草を捨て足で踏み潰した。
「それ、ポイ捨てですよ。ちゃんとゴミ箱に捨ててください。」
「高校のゴミ箱に煙草の吸殻なんて捨てられないよ。」
注意されたにもかかわらず彼は相変わらず笑いながら返事をする。
「昼ごはん食べに来たんでしょ。邪魔したら悪いから帰るね。」
彼は仏頂面の自分に気を使ってか、吸殻を拾って自分の横を通り過ぎて行った。
彼が通り過ぎる時にした煙草の匂いはあまりにも気持ちが悪く、先程まであった食欲がすっかりなくなってしまった。
小言を言おうかと後ろを向く頃にはもう彼はその場を後にしており、そこには微かな煙草の残り香と誰も居ない階段しかなかった。
彼との出逢いはそれが初めてだった。
次は未定です近いうちに上げます。