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第9話 遭遇

トパーズがゆっくりと目を覚ますと、天井にはトタン屋根があるのが見えた。雨が轟音を轟かせている。

少年はすすけたソファに横になっていた。部屋はガレージのようだが広い。見た覚えのない居場所だった。少年はゆっくり上体を起こす。

薄暗い場所だったが、一箇所明るい部屋があった。いつしか夢で見たような、そんな光景に固唾を飲んだが、勇気を出して明るい場所へ足を踏み込んでゆく。中を覗くと、大きめの男が一人、椅子に座って何やら作業をしている。机の横にはうさぎの被り物が置いてあった。背中越しだが、煙が頭から出てきているのでタバコを吸っているのだろう。少年は慎重に近づこうとした時、

「起きたか」

男はこちらへ振り返りもせずに、そう言ったので、少年はビクッとしてしまった。

「どうして僕だけ助けたの?」

男はため息をひとつして、こちらへと振り返ったのでやっと顔を見ることができた。

短い髪に端正な顔をしていた。20代後半くらいだろうか。男は吸い終えたタバコを小さなドラム缶のような灰皿に捨て、再び新しいタバコに火をつけた。

「さあな。でも回復したなら帰れ」

「どうして!僕はあなたに会いたくてここまできたんだよ!?」

「ほう」

男はタバコの煙をゆっくり吐き出した。

「こんな爆破犯に会いたかったか」

「会いたかった!僕はハッカーをしている。毎日孤独で同じ作業。たまっている気持ちは一緒だと思ったんだ!そうでしょう?」

男は黙って少年の言葉を聞いていたが、すぐに少年に背を向けた。

「僕にはあなたの最終目的は分からない!でも何か…あなたに引き寄せられているんだ。おこがましいけど僕とあなたは似た者同士なんだ!」

「知ったような口を聞くな!」

男は叱咤して、明るい部屋に戻っていった。少年もついてゆく。

作業に戻っている男に少年は言った。

「…どうしたらこの気持ちわかってもらえますか?」

男はタバコにまた火を付けた。

「俺は簡単には人には心は開かない…ただし、俺の言うことを実行するのならば友達として認めてやる」

少年は男にすり寄った。

「何ですか?その方法って」

「俺の指示通りにお前も爆弾を作って、一番憎い人間にそれを渡すことだ」

「!!」

今もトタン屋根に雨粒が激しくぶつかっている。少年はあまりの急な指示に唖然とする他なかった。

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