第57話 上昇
バイクで東京駅に到着したABは、急いでバイクを降り、駅のロッカーへ向かってダッシュで向かった。
「無いなんてことはナシだぜぇ…」
祈ってロッカーを開けると、きちんと特殊包装されたプルトニウムがそこにはあった。
「よし!」
そっとプルトニウムを取り出すと、即ドローンに装着させる。ガスコンロのごとくカチリとはまる。
Aがリモコンを持ち、スイッチを押すと虫のような音を立てて上昇した。
「いいぞ!このまま限界まで飛んでけ!」
上のスティックをぐいとやると、ドローンは上空へ飛んで星になった。
と、サイレン音が聞こえてくる。警察だ。
「B!俺を乗せて警察側に向かって走れ!」
「ええ?いいのそれ」
「信じて走れ!」
Aを乗せたBは、アクセルをふかし、一気に急スピードで警察側へとバイクを走らせた。すぐにパトカーが見えてくる。
「B!パトカーに乗っかれ」
「無茶言わないでよもう!」
そういいつつBはウィリー運転でパトカーの上を走り抜けた。
「なっ!!」
警官は驚いて急ブレーキを踏んでしまい、その場でクルクル回転し、他のパトカーをも巻き込んでしまった。
「よし、いいぞ!」
AはBの背中でもドローンを運転していた。
――――
「犯人と衝突し、逃げられました!」
「もう!その近くに警官やパトカーはいないの?」
「東京駅には集まってますが…」
「遅い!もう東京駅の用は済んだはずよ!追いかけて!」
冴島は無線を投げつける一歩手前まできていた。
そこへ松島がやってきた。
「もう爆破物が発射された可能性が高いです。航空部隊にはより強く警告して下さい」
――――
航空部隊は数十機を導入して、千代田区内をそれぞれ旋回していた。
ヘリを操縦中、操縦士はキラリと光るものを発見した。
「不審物を発見、どうぞ」
数秒間が空いてから、
「回収できますか、どうぞ」
「回収を試みる、どうぞ」
ヘリはうねるように進んで蛇行し、なんとか不審物に近づこうとした。するとドローンも旋回を始めたではないか。キャッチするのは至難の技に思えた。それでも何とかじわりじわりとドローンに近づき、乗組員が手を伸ばし、何とか奇跡的にドローンを捉えることができた。乗組員が蓋のような箇所を開けると、31分前の表示がある蛍光時計が見えた。乗組員イコール爆破解体班は言った。
「…うそだろ」
――――
Aはリモコンを放り投げ叫んだ。
「畜生!!!!!奪われた!!!!!!!!」
バイクを運転していたBはびっくりして訪ねた。
「いったいどうしたの?」
「奴らに!!!!爆弾を!!!!!!!!!!!!!!」
しかし急に冷静になったAは、
「降ろしてくれ」
とBに呼びかけた。バイクのスピードを下げるB。
バイクから降りたAはタバコを取り出し勢いよく肺に煙を入れた。
「ふふ…」
Aは笑っていた。何のことやら分からず、Bはもう一度聞いた。
「いったいどうしたの?ねぇA」
「解除できるわけがないさ…警察の無能にはな…わははははッ!!!」
Aの笑い声は静かな周囲に猛々しく響き渡った。




