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第1話 胎動

「栄養ブロック」を口の中に放り込む。たちまち口の中が砂漠と化す。

無理やりそれを口にした青年は、終始笑顔を絶やさなかった。手にはノートパソコンの入ったバッグを手にしている。銀髪で埃の被った黄色いパーカーを着ていた。

と、ヘリの音が近づいてくる。そのヘリは一定の距離を保ったまま、青年を舐め回すように巡回した後、高度60メートルでホバリングした。

「目標確認、目標確認」

ヘリの無線がどこかへ呼びかけている。青年は目の上に片手でひさしを作る余裕があった。遠くを見ると、ゆらぎの奥から軍隊のようなものが見受けられた。それは盾をもった自衛隊だった。つまり自衛隊に青年は囲まれているのだった。

特に興味のないといった様子で、青年は前に立つ喫茶店を目指して歩き出した。自衛隊の軍団はそれを合図ににじり寄ってきた。気にせず喫茶店に入る青年。

喫茶店の中にはスーツに皺の入った男が一人、4人座りの席にポツンと座っていた。従業員の少女が2人、緊張して立っている。店内を一瞥した青年はニコニコしながらスーツの男の向かいに座った。

スーツの男は神妙な面持ちで言った。

「なぜ俺なんだ」

蛙谷かえるだにと呼んでいいのかな?」

そう言いながら青年はバッグからノートパソコンを取り出した。

「ああそうだ。蛙谷だ。だからなんで俺なんだ?」

「とぼけなくていいよ。銃の横領してるのは分かってるんだから」

「何の話だ」

「だからとぼけなくていいってば」

青年は手を挙げた。

「オレンジジュース!」

従業員の少女は慌てて厨房に消えていった。

青年は伸びをして、ノートパソコンにしばらく集中した。

その間、「おれはリンゴジュース」と男も注文していた。

「ルール1、wifiを切ったら全ての爆発物を爆発させる。」

男は震えながらタバコを取り出し言った。

「ああ」

その時、ピーピーという甲高い音が鳴り出した。

「何だ、この音は!?」

青年はノートパソコンのボタンを押すと、その音は消えた。

「ルール2、この音がなって1分以内にボタンを押して解除しないと、とある場所で爆発が起こる仕組みになってる」

「俺は横領なんてやってない!」

「お飲み物です…」

男は従業員が持ってきた飲み物を、ひったくるように奪い取り喉を潤した。

「ルール3、僕の機嫌を損ねたら1箇所爆発させる。」

「勘弁してくれ、なんで俺なんだ、俺は純粋な刑事だ」

「証拠は握ってる。僕らは君を選んだ。今更何言っても遅い。」

青年はそう言うとヘッドセットをおもむろに付けた。

「あーあー。どう『A』聞こえる?良かった聞こえるね」

青年は誰かと喋っているようだった。

「さあ」

青年は両手を広げた。

「僕の名は十破豆トパーズ。さぁゲームを始めよう!」

蛙谷という男は片手で顔を覆うしかなかった。


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