表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拝啓、八月  作者: 結城 冴
本編 『拝啓、八月』
1/12

序、✕月✕✕日














 白雪姫は、毒を呑んだ。


























序  七月×××日


 意識が揺れる。

同じように、光も揺れている。

優しい温度と甘い匂いに導かれて、瞼をこじ開けた。

 柔い緑と浅い空。少し眩い陽だまりの景色の中で、溶け込むように誰かがいる。

まるで水彩画で描いたような淡色の世界に、ともすれば吐息一つで掻き消えてしまいそうなほど、優しく、温かく。

輪郭が真っ白にぼやけているせいで、姿がよく見えない。


「  」

 声がした。


「あ」

 ほとんど反射的に右腕が伸びて、しかしなにも掴まずに空を切った。

背中の重心が後ろに傾く。そうなって初めて、自分がゆるやかに落下していることに気付く。

 震える息を聴いた。

 走り寄る速度を感じた。

 誰かの声を、覚束ない意識が一瞬だけ捉えた。



「――の、――――」



 ざぶん、とくぐもった音と共に背中から『何か』に沈む。

 海、だろうか。布団にくるまれているような温かさが全身を満たす。

 口から吐き出した泡がすうと水面へ昇っていき、光を反射して美しく煌めいた。





 この海の中でずっとずっと眠ることを心から願っていた気がする。

 どうしてだろう、そんなことを思った。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ