35 鎧と杖
「いっっっ、たくねえ!?」
ざっくり食い込んだ剣は、ざっくり食い込んでなかった。
なにがどうなっているのかと思ったら、剣が曲がっている。
どういう素材なのか知らないが、俺の肩に当たってぐんにゃりと……。
いや俺の肩もおかしい。
素肌だったはずが、黒っぽい、硬いものに変わっている。
おかげで剣を防ぎ、さらに剣をくの字に曲げていた。
剣の魔人が離れ、剣を振ると曲がった剣が元通りになった。
「どういうことだ……」
ローブ野郎は言った。
「どういうことだ……」
俺も言った。
剣に見えて剣じゃない?
「お前、剣の魔人じゃないじゃないか!」
「その姿はどういうことだ!」
「また名前とちがうことしやがって! お前ら、自分の名前をなんだと思ってんだ!」
「硬化している……。鎧の力を……!」
「剣の魔人だか勇者だか知らねえけどよお! 剣! って部分をもっと大事にしろよなあ!」
「勇者の力に目覚めたというのか……」
「うるせえなあ!」
集中できねえだろうが!
「お前も……。ふっとべ!」
俺は剣の魔人に向かって走った。
棒立ちになってた剣の魔人の胸あたり、肩から突っ込んだ。
「おらあ!」
やったぜ!
と思ったら、いたのにいなくなった。
感じるはずだった相手の体重がなく、俺は床に転がった。
華麗に起き上がり立ち上がる。
「そんな原始的な攻撃が当たると思っているのか」
ローブ野郎が俺を見下す。
完全に棒立ちだったのに。
剣の魔人、やるな。
あとローブ野郎はなにもしてないからな。お前はあとでふっとばしてやる。
「鎧……」
剣の魔人が言った。
「しゃべれるじゃん」
「鎧……」
「しゃべれるじゃん?」
なんだ?
考えてしゃべってるわけじゃないのか?
「まさか、鎧の戦士を取り込んだというのか……」
ローブ野郎が補足する。
「最初に食ったやつかな」
「鎧……。眠れ……」
剣の魔人が高く剣をかまえた。
縦に振り下ろし、横に振る。
なんだ?
なんか技を。
とか考えてたら急に、過程が見えないくらい速く接近された。
もう目の前にいる。
でも、剣は通じないんだぞ。
「であっ!?」
硬くなったはずの左腕が床に落ちる。
「うっそだろ!?」
いた……、くもなく、血も出ないのは、俺のなんらかの力が働いたんだろうが。
まだ終わってない。
俺の腕を切り落とした剣。
剣の魔人が手首を返す。
上向きに。
脇腹から切り込んでくる。
空を飛んだ。
くるっと回って落ちてくる。
途中で見た。
立っている下半身。
俺のだ。
つまり、上半身が切り飛ばされて、上が飛んだ。
切り飛ばされるとこういう気分なんだなー。
死んだじゃん。
終わった。
と落ちていって、あれ?
元の立ち位置にもどった?
うん?
右手で腰をさわり、そこからたどると断面みたいなあとがある。
きれいに一回転して、たまたま下半身のところにもどって、くっついた?
それでだいじょうぶなの?
俺も魔人?
おどろいたのか、一瞬止まったが、また剣を振り下ろしてくる。
脳天から真っ二つにされる。
そう思ったとき。
離れたところに、剣の魔人やローブ野郎、ファイリス? たちがいる。
なんだ?
気づくと右手に杖があった。
なんだ?
杖を振ると、きらりと光る。
すると、落ちていた俺の左腕がふわりと浮かんで、びゅんっ、と飛んできて、ふわりと俺の腕の断面にくっついた。
断面が見えなくなる。
左手、指が動かせる。
腰もそうだ。ぴったりくっついている。
魔人の特性すごい……!?
もしくは……。
この杖。
杖を振ると、ファイリス? たちもふわりと浮かんでびゅんっ、で俺の近くに降りた。
「これか」
「杖……」
剣の魔人は言った。
「まさかすでに、他の戦士たちを……。鎧の力と杖の力、弓の力を手に入れたとすれば、勇者様と、互角、あるいは……」
ローブ野郎が言った。
「ふふ」
俺は笑った。
ローブ野郎が唇をかむ。
剣の魔人がすこし剣先をおろして、こっちを見ていた。
「負けを認めるか?」
俺は笑う。
ふふ……。
弓の力はない。
取り込んでないからな……。
……負け!




