表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/36

34 魔人人間魔人

 死ぬというのは。

 つらいこととか苦しいこととか残念なこととか悲しいこととか、そういうことをなんとなく考えつつも自分はまだまだ当分死なないし、と思ってるのがふつうというか、そんなもんだと思う。

 それでなんか急に死んだりするんでしょ? いまの俺みたいに。


 思い返すと、意外と死にたいと思ったことないな。

 いや、思ってるのか? 忘れてるだけ?

 急に死ぬのとじわじわ死ぬのと、どっちがいいのかな。


 ……なかなか死なないな。

 のどからぼたぼた熱い液体がこぼれ落ちていく感触が続いていて、俺はぼんやり前を向いている。

 そういえばやつらもこっちに来ない。


 俺を栄養にするなら急がないと俺が死ぬだろう。

 気を失うまで待ってるんだろうか。じゃあぎりぎりまで耐えてやる。


 ……実はもう死んだ?

 なかなか思いつかない発想だ。

 死んだ人間にしかできないかもしれない。なら勝ちだな。あいつら、俺を死んでないと思ってるからな。ははははは!


「おっ」

 ずるり、と濡れた布が体からずり落ちるような感触があった。

 べちゃ、と体にくっついていたものが落ちて湿った音を立てた。


 黒っぽい。


 ……皮膚だ。

 魔人の体の表面だ。それが落ちた。

 俺は自分の胸をさわってみる。

 ちょっと、ぬめっとした透明な、どろっとしたものが体についている。

 見れば、手も、見覚えのある形をしている。

 俺の手だ。

 はがれ落ちたあたりに指を入れ、他の部分もはがしていくと、全部はがれる。

 顔も、腰も、足も。

 魔人じゃない。


「おい、どうなってんだよ」

 人間の体じゃねえか。

 ローブ野郎たちはこっちを見ている。


「どうなってんのか、ってきいてんだよ!」

 俺は、手に残っていた、ぬめっとしたものを下に叩きつけた。

 気持ちわる。


「てめえら、人間の表面に変なもん塗りたくって、表に変なもんかぶせて、これで魔人です、だあ? ふざけやがってこのイカサマ野郎どもが!」

 ローブ野郎あらためイカサマ野郎か!?


 俺は他の魔人? のところに言って、腕を持った。

「こいつらだって……」

 と俺の手を引っぱると、腕がちぎれた。

 えっ。

 腕が取れるのはちがうよ。


 急いでもどしてくっつけてみる。

 ……くっついた!


「そいつらは魔人だと何度言ったらわかる」

 ローブ野郎は言った。


「……魔人って、くっつくのか?」

 そっちのほうが驚きなんだが。


「いや、どっちも驚きか? いや、は? おかしいだろ。お前の言い分じゃ、俺もこいつも魔人なんだろ? 俺だけ魔人じゃなくてこいつらが魔人だったら、話が通らねえじゃねえかよ!」

「それはこっちも驚いたが」

「知らねえよ!」


「ごごご!」

「……ファイリスは、治らないのか……?」

 いや、言葉を話そうとしてるということは、ファイリスは他のやつらとちょっとちがうのかもしれない。

 いやいや、そもそもこいつらの言ってることが信用できないんだから、みんな一時的に魔人にされているだけで、俺が早く治っただけかもしれない。


「治るという言い方はおかしい。元々お前たちは魔人だ」

「だから、どう見たら俺が魔人なんだよ!」

「勇者様の仲間を吸収した結果だろう。疑似人間になった」

「なんかお前、都合いいな」


 俺は、はがれて落ちた魔人皮膚を、ローブ野郎に投げつけた。気持ち悪さを味わえ!

 ローブ野郎はゆっくり横に動いてかわす。

 この。


「なにがあっても、お前が都合にいいように解釈するだけなんじゃねえの? で、説明がつかなかいときは、例外。便利でいい理屈だよなあ! 自分の認めるものしか認めないなら、頭使わなくていいもんなあ!」


 俺は、ゆっくりした動作で他の魔人皮膚を拾う。

 今度は少量をびゅっ、と鋭く投げた。


 びしゃっ、とローブ野郎の足に当たった。


「へっ、ざまあみろ」

「なっ」

 ローブ野郎が、ぶつかった左足のスネあたりを見てうろたえている。


「そんなに汚いのか」

 なんかそれはそれで傷つくな。元皮膚。

 ローブ野郎は急いでローブからひもを取り出すと、巻きつけ、足に食い込むまできつく引いて、縛った。


「やりすぎだろ」

「あとで処置する」

 そう言ったときには、なんだかじわじわ、ローブ野郎の足が黒ずんできた。


「魔人になりそうじゃん」

「ならん」

 そう言ってなにか投げてくる。

 ナイフだ。

 かわしきれずに俺の足に当たったが、はじかれた。


「あっぶねえな!」

 刺さったらどうすんだ!

 いや、刺さらない?


「勇者様!」

 ローブ野郎は振り返った。


「いけます!」

「お?」

 うん?


 どういうことだ?


 とゆっくり考える間もなく、急激に近づいた剣の魔人がすぐ前にいた。


 斜め上から振り下ろされた剣がざっくり肩に飲み込まれたあたりで、ああ、ローブ野郎のナイフが効かなくなったということは逆に人間に強くなって魔人対策がなくなったのか? でもさっき引っ張ったら切れた魔人の腕をすぐくっつけて治ったのはなんだったんだ?

 と思った。

 あと今度こそ死にそう。


 自殺は俺の意志だけど殺されるのは嫌だなあおい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ