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32 勇者だか魔人だか

 光が消えて視界が晴れると、広い場所にいた。


「ここは」


 城みたいな場所だ。

 白い石の壁と、太い柱がいくつも壁沿いにならんでいる。

 ただ、天井が異常に高い。

 途中の階を全部ぶち抜いて、一階建てにした城のような巨大建築だ。


 俺たちのまわりには魔人たちがいて、ずっと奥の方に玉座がある。

 そこに誰かが座っている。

 立ち上がった。

 人間だ。

 玉座に立てかけてあった剣を抜き、こちらに歩いてくる。

 右手が斜めにおろされて、剣は床に接さない。


「剣の魔人、いや、剣の勇者様だ」

 ローブ野郎が言った。


 ローブ野郎もいる。

「お前は外で待ってるんじゃないのか?」

「勇者様の供物となれ」

「魔人はどうした。あと、ここにいる魔人はなんだ。俺はなんで魔人になってるんだ」

「ごごごご」

 縛られた、魔人のうちの誰かがなにか言っている。


「かつて」

 ローブ野郎が話し始める。


「人間と魔人の戦いがあった。戦いは人間有利に進み、魔人は人間から隠れ住むように生きていた。もはや、魔人など忘れてかけていたとき、あることが起きた。魔人が人間に見せかける術を手に入れたのだ」


「魔人は人間の生活に溶け込んでいった。人間も魔人の存在を感じて対応しようとしたが、魔人は人間を魔人に見せる術もまた、手に入れていた。人間は減り、魔人は増えた」


「勇者と呼ばれる存在は、その状況を変えられる最後の手段だった。しかしそれも敗れ、封印された。人間は減り、魔人は増えた。そして魔人は人間社会の構造をそのまま得て、人間であるかのように生きている。人間は、ひっそりと、自分たちが人間であるかもわからず生きている。かつての魔人たちのように」


 ローブ野郎が話してる間にも、剣の魔人が近づいてくる。


「つまり、なんだってんだよ」

「お前は、勇者様の力の元となる。そうして人間は魔人を倒し、よみがえるのだ」

「お前も魔人じゃねえかよ」

 ローブ魔人野郎だ。


「魔人たちにとらわれて、魔人になりつつある。だが人間だ。お前たちとはまったく別だ」

「でもよ、俺が魔人だっていうんなら、なんかおかしくねえか? 他の魔人とちがうじゃねえか」


 捕まっている魔人? たちは、ごごごご言っている。

 いや、言っているのもひとりだけで、他のやつらはぼんやりしているだけだ。


「お前は、勇者様の仲間たちを食った。もはや、通常の魔人におさまる魔人ではない」

「お前と同じってことか?」

「勇者様の力の元になれ」

「同じなら、お前が食われりゃいいだろ」

「人間が人間を食べてどうする」


 剣の魔人がすぐ前までやってきた。


 剣を斜めに振り上げた。


「首を出せ」

「バカじゃねえの」


 剣の魔人が剣を斜めに振り下ろした。

 俺の首に当たると、刺さった。

 刺さったというか、表面で止まってくっついた?

 俺は首をまわして剣にかみついた。

 そのままするっと吸い込んで飲む。ごくり。


 剣の魔人は剣から手を離してさがった。

 ローブ魔人野郎も剣側にさがる。


 人間に見えるから殺されるかと思ったけど、やっぱり魔人だ。


「あのさあ。魔人が人間の生活に入って、人間が魔人にされて、とか言ってるけどさあ。それのなにが問題なわけ?」

「なに?」

 ローブ魔人野郎は俺をにらむ。


「魔人が人間のふりをして、それで人間社会っぽくなってんだろ? じゃあ同じじゃねえか」

「なにを言う」

「つーかさ。俺、人間だろうガマ人だろうが、うじゃうじゃうじゃうじゃいるの嫌いだし。どっちもいらねえよ。それにさあ。俺を生贄にしようとしてたよな? そう考えると、お前たちのほうがいらねえよな」


 ローブ野郎。

 剣の魔人。


「お前らが、いろんなものの元凶なんじゃねえのか?」

「なに?」


 お前らがいなければ、トキマさんも死にそうにならなかったんじゃねえの?

 

「しかもよ。お前ら、俺を殺して養分にしようとしてんだろ? どうせ殺すくせに、魔人がどうとか、世界がどうとか、教えてくださってよー! 説教してから殺すなんてよー、とっても気持ちがいいんだろうなあ!?」


「勇者様ってのはよー!? ずいぶん、自分が気持ちよくなるために、好き放題やるやつらのことなんだなあ!? ああ!? 誰に殺されてもいいけどよー!? てめえらだけには殺されたくねえなあ!! いま決めたぜ!! お前らだけには殺されねえよ!!」

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