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第3話 その2「せめて夢の中では幸せに」

その夜

ベッドの中で、シュウリとナオは生まれたままの姿で向かい合って寝ていた。

ナオはシュウリの髪を何度も何度も手櫛で整える。


ナオはシュウリの瞳を見つめる。

その瞳の奥に映る自分自身と目が合う。

ナオはその自分にも語り掛けるように、ゆっくりと口を開く。


「シュウリ… この生活は… 今日で終わりよ」

シュウリはゆっくりと頷く。ナオは続けて話す。

「気付いてると思うけど… 明日… この街は終わる…」

「うん」シュウリは応える。

ナオはここで、最後の選択をする。

自分たちの運命を決める選択… 世界の未来にも及ぶ選択… 最後の最後の迷いの時。

ナオの視線が自分から離れる。


シュウリはナオの頬を挟み、今一度自分に向ける。

「ナオ… 私を見て言って… 私はナオの選択… 何でも受け入れるから…」


ナオはシュウリを見つめる。

シュウリの瞳に写る濁った自分は、憐れむように自分を見ている。

ナオはゆっくりと、胸から送られる風に乗せ、自分とシュウリとの間の大気を震わせる。


「一緒に… 戦おう」


シュウリはコクリと頷く。


ナオは戦闘待機状態を解除した。

同時にシュウリは貯めていた魔力を解除した。


ナオはシュウリに口づけをした。

シュウリはそれを受け入れた。


「…寝ましょうか」

「やだな… 寝たら明日がきちゃう…」

「…明日は… くるわ… 寝ても寝なくても… だから、明日のために眠りましょう」

「…じゃあ、せめて夢の中でも一緒にいようよ」

「そうね… 夢の中では… せめて幸せな夢を見ましょうね」


2人は目を瞑る。

呼吸が一定に落ち着いていく。

やがて夢の世界へ。



魔法少女は夢を見た。

この街が与えられた日の事を、憧れていた普通の生活。

そこで出会ったナオという少女。

すぐに心惹かれた。

愛しく思った。

そして、壊した。


普通の生活を手にしてから、シュウリは悪夢にうなされるようになった。

何人もの命を奪った光景が、フラッシュバックする。

何人もの魔法少女たちが、不幸になった姿が思い起こされる。

過酷な実験の犠牲になったもの、研究所で人扱いされなかったもの、戦闘訓練の最中命を落としたもの、戦場で散ったもの、戦場で慰みものにされたもの…

悲痛な叫びがこだまする。


それと、同時に呼び起こされる戦闘中の自分。

破壊の衝動が起こる。

この世界を壊してしまいたい…

シュウリはその衝動に支配される。

そして、夢の中で、街を破壊しはじめる。


それを停める声がした。

ナオである。

辛うじて、ナオだけは認識できた。

制御しようとする意識は、もろくも衝動にかき消される。

気付けば足元には、ナオの身体が、散らばっていた。


目が覚めると、朝が来ていた。

どこからが夢で、どこからが現実か… 


シュウリが戸惑っていると、玄関から音がする。

シュウリが迎えると、そこには先日と少し違うナオが立っていた。


全て夢なら良かったのに… とシュウリは自身を呪った。


そんな夢をシュウリは見た。




ナオは夢を見ない。

正確には、映像を見ない。

ナオの夢は全て数字や文字の羅列。

0と1でないだけ少しマシ

そんなものをナオはみる。



そして、朝を迎えた。

シュウリとナオは見つめ合いお互いの安否を確認すると、起きしなのキスをする。


それは誓いのキスであり、別れのキス


明日が来た


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