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第3話 その1「せめて夢の中では幸せに」

修理が終わった翌朝、いつものようにナオはシュウリの家のドアの前に立つのだが、一向にシュウリは出てこない。


ナオは神妙な面持ちでドアを叩く。

部屋の奥から声がする。ナオはその場で声の主を待つ。


(初めてだわ… シュウリが、いつもと違う行動をとるなんて)


ナオが考えていると、ドアが開き、シュウリが顔を出す。


「おはよう…」

「…おはよう。 今日は… パンを咥えないの?」

「…今日は、なんだか… 気分じゃなくって」


ナオは家とドアとを結ぶチェーンを指で切る。


「じゃあ、私も… さぼっちゃおうかしら?」


「いいの?」シュウリはナオを見上げる。


「シュウリといたいから…」ナオはシュウリの眼を真っ直ぐ見つめながら言う。

その言葉で安心したのか、シュウリの表情はいつものような明るさを取り戻した。


「やった… じゃあ、じゃあ… 今日は… ずっと一緒にいてくれるの?」


「ええ、もちろん」


「やったー」シュウリは飛び跳ねて、そのままの勢いで、部屋に戻る。


ナオはついていく。


シュウリはすぐにソファの前にお菓子と飲み物を並べる。


「じゃあさ… テレビ… テレビ… 一緒に観よ?」


「いいわよ。 何か見たいものがあるの?」­


「うん。 これー」シュウリはDVDBOXを取り出した。


――――――――――――

画面内で、可愛らしい魔法少女が躍動している。

『みんなの心を守るため、悪の心を打ち砕くっっ 魔法少女 ブレイク♡ハートただいま参上!!』

『こしゃくな… 魔獣ども取り囲め』

巨大な幹部の命令で、魔獣と呼ばれる人間大のモンスターがブレイク♡ハートに立ち向かう。

ブレイク♡ハートは、ステッキをウィップに変えて、魔獣たちを次々と薙ぎ払う。

『私は負けないわ』

『ぐふふふふ… これを見てもそんなこと言えるかな?』

幹部の腕には、ブレイク♡ハートのあこがれの人、ナオヤ先輩が捕まっていた。

『ブレイク♡ハート… 僕の事はかまうな… こいつを倒してくれぇ』

『そんな… ナオヤ先輩… 私… 私… どうすれば…』


次回予告

『なんてこと! 憧れのナオヤ先輩を人質に取るなんて… 絶許なんだからっ プンプン 助けるためには… 私に秘められた力を解放するしかない… でも、そんなことしたら… 私、先輩に嫌われちゃうかもっっ    次回第23話 覚醒 ブレイク♡ハート の巻  君のハートにラブリーチャージ、来週もよろしくね』

---------------


ここで、シュウリはDVDを切った。


「いいのか? あと2話だけど…」


「もう観たくないの」


「これ… 第2シーズンだっけ?」


「ううん。 第6シーズン… 第5シーズンまでは、ナオヤ先輩ちょっとしか出てないの… 第4シーズンで出番増えて… 嬉しかったんだけど… このあと… 死んじゃうの… 最終話で、暴走したブレイク♡ハートを抑えるために…」


シュウリはDVDを取り出して、ケースにしまう。


「そんなところまで、モデルにしなくてもいいのにね… 第5シーズンまでは… すっごく平和でさ… 4クールで… ほのぼのーって感じで… すっごく好きだったのに… 去年の第6シーズンは2クールで… それで、いきなりこんな感じになっちゃって… 悲しかったなぁ…」


シュウリはテーブルの上を黙々と片付ける。


「せめてさぁ… 創作の中ぐらいではさ… 幸せにしてくれてもいいのにね… ひどいよ… これを外の世界の子どもたちは観てるんだよね… かわいそうだね」


シュウリはナオに顔を見せない。

シュウリは台所に小皿や箸、コップをさげる。

流し台の蛇口をひねり水を出す。

スポンジに洗剤液をつけて、ぐしゅぐしゅと泡を出す。

軽く水でゆすいだ食器をスポンジで洗う。

きゅっきゅと泡を使って汚れを落とす。

水で泡を洗い流し、水きりカゴに移す。





その背後にナオが立つ。


ナオは思考する。

(ペリアのおかげで… 私には今三つの選択肢がある。 一つは1人で逃げること、もう一つはシュウリとともに逃げること… そして最後は… 私自身の手でシュウリの命を奪うこと… 他の…魔法少女によって、奪われるぐらいなら… この私の手で…)


ナオはシュウリの背後で、惑う。


(って… 最初から、一つしか選ぶ気はないけどね)


ナオは後ろから、シュウリを抱きしめる。


「ちょっと、ナオさん。 いきなりどうしたの? まだ洗い物の途中だよ?」


「このまま、待つ」


「もう」シュウリはまんざらでもない様子で、洗い物を続ける。

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