第2話 その3「それぞれの役割」
『研究所』
「さて、問題はなさそうだね」ペリアはナオの全身を触って、最終チェックを行う。
「毎度の事だけど… その、最後触ったり… じろじろ見たりするのはなぜだ? スキャンはしているだろ?」
「んー… まあ、半分は趣味」
ナオは手を振りかざす。ペリアは手を突き出して制する。
「ちょいちょいちょい… 私人間だからっっ 落ち着いてって… 半分はちゃんと意味あるから… やっぱね… 直接見て触らんと分からないもんだよ? データはね… 分かりやすいけどね… 実のところ全部ちゃんと分かってるわけじゃないんだよね。 例えば、恋心とか? データのどこを見ても、ナオがあの女を愛していることなんて見当たらないもん。 だからやっぱり、最後は自分の眼で直接確かめるのよ。 それが研究者の性ってもんよ」
ペリアはナオに服を渡す。
そして、カチカチと何やらスイッチを押す。
「さて… こっからはちょっと、オフレコで…」
「本部… いや警戒しているのは『アガペル』か」
「そ… ちょっと、懇意にしてくれてる人がいてねぇ… その人からの情報…」
ペリアはナオに近寄る。
「明後日、13時… 来るわ 私は、もう準備をしている。 君も準備しておきなさい」
「そうか…」
「…なんで、これを今、君に言ったか分かるわね? 同僚のよしみよ。 選択なさいな」
ナオは無言で見つめる。
「ま… 君の選択はもう分かってるけどね… 一応、言っておくわ… 悪者にされたくないからね」
「…すまんな」
「いいって… 君がだれよりも情に厚いことは知ってるから」
「ありがとう」ナオは軽く会釈する。
「オフレコついでに… ちょっと、関係ない話するわ。 昔、魔法少女って存在が認知される前… というか、魔法少女が空想だったころ… 彼女たちの魔法は、とてもささやかなものだったの… 少し物を動かしたり、動物やお花とお話しできたり、空を飛んだり、勇気を出したり… そんな魔法ばかりだった… でも、そんなささやかな力が現実になった途端… すぐに全部争いに利用されちゃったの… 物を動かし人に突き刺し、動植物と話して諜報して、空を飛んで安全圏から攻撃して、兵士たちの勇気を鼓舞して戦わせる… 攻撃魔法もどんどん開発された… 私が憧れていた魔法少女はもういない…
力は、個人のちょっとした幸せに使うことは、許されないのね」
ナオはゆっくり頷く。
「そんな魔法少女たちを救いたい… それが私たちの組織の当初の目的だった…」
「…救いね… ものは言いようだね」
ナオは衣服をきちっと整え、ペリアに頭を下げ、研究所を後にした。
そして、シュウリの元へ向かった。