第2話 その2「それぞれの役割」
登場人物
『獅子嶋 シュウリ』 高校2年生 3つの秘密を抱える少女
『笹神 ナオ』高校2年生 美少女 シュウリといつも一緒にいる
『薄野 ペリア』年齢不詳 女性 元組織の幹部 現在はナオと共にシュウリを抑えている
『研究所』
破損したナオの身体は速やかに回収され、研究所で修理あるいはスペアボディとの交換が行われる。
「あちゃー… コア完全にいかれたね… よほど溜まってたんだねぇ」頭をぽりぽりと掻きながら、
補修作業をすすめる人間の姿があった。
この研究所… あるいはこの鳥籠内唯一の人間『薄野 ペリア』は研究所内の機械を駆使して、このシュウリを閉じ込める世界を管理している。
「すまんな…」ナオは首だけで、つるされながら、申し訳なさそうに呟く。
「はぁー いくら相手が最強の魔法少女といっても… こうも簡単に私の最高傑作がサンドバッグにされるのはいい気がしないねぇ…」ぼやきながらも淡々と、ナオのヘッドとスペアボディとの接続を進める。
「しかし… 毎度のことながら… 顔だけは無事なんだね… 愛ってやつかねぇ?」
「愛…か 改造人間と… 心が壊れた魔法少女に… 愛なんてあるのかな…」
「知らんがな…」ペリアは話を振っておきながらも、雑にあしらう。
ただ、作業中に思いついたことを言っているだけで、特にコミュニケーションをとろうという意図は彼女にはない。
「ま… 頭部には大事なもの詰まってるからね。 無事に越したことはないわ。 一応バックアップはとってるけど… それでも、ねぇ」
「そうだな… 昔、バックアップから再生したときは… 最初別人みたいでなかなかなじまなかったからな… できれば避けたいな」
「あーあ… この偉大なる天才の脳もバックアップできればいいのに… いっそ私も改造しちゃおうかな」
ヘッドとボディがつながる。
ペリアは動作が問題ないか、隅々まで確認する。
「成功率は低いんだろ?」ナオは指を滑らかに動かしながら、話しかける。
「んー… というか、ちゃんと成功したのはナオを含めて2,3体ぐらいかな」
「そうだったな」
「大抵は、まず身体が改造に耐えられないし、何とか形になったとしても、拒絶反応でおかしくなるし、あとは… 完成しても、雑魚いこともあったなぁ… そんなばっか… 私なんてか弱いからねぇ まず身体がもたないわよ」
全身の確認が終わると、肌加工を全身に施す。
「いいなぁ… これで肌が綺麗になるなんて… 女性のあこがれだわぁ」
「ペリアも綺麗じゃないか」
「うわあっ アンタたらしの才能あるよ。 そんなこと軽々しく女の子にいっちゃダメなんだぞ」
「…子?」
「…肌ゴツゴツにしよっかな…」
「やああ… やめてくれ… 肌は、できる限り、綺麗にしてくれ…」
「…はぁ。 乙女だねぇ ちょっと、羨ましいわ… そんなに好きになれて… まあ、私はあの子の相手はごめんだけど…」
「…世界が壊れるのを防ぐためだ。 そもそも私たちはそういう組織だったろ」
ペリアは機械を自動操縦に切り替え、ナオに身体を向けた。
「世界… か」ペリアは皮肉をたっぷり込めた笑みを浮かべる。
「魔法少女を戦わせることになんの疑念を抱かない世界なんて… とっくのとうに、ぶっ壊れてるよ?」