最終話 前編 「星の瞬く間に」
月明りが照らすは二人の少女。
手をつなぎ寝息をたてる様は、どこにでもいる普通の少女たちのようであった。
手がもぞもぞと動いては何度も離れ繋ぎを繰り返す。
眠りを妨げるものはない。
シュウリとナオ。二人はようやく誰にもとらわれない世界で生きられる。
とはならなかった。
数多に作られた世界には、当然シュウリとナオの同一存在がいる。
彼女達はこの場を狙っている。
二人が生きていける場所を…
ナオが目を見開く。
シュウリの目も開く。
すぐさま服をまとい、窓から空に向かう。
上空で対峙するのは別の世界のシュウリとナオであった。
同一存在とあって、その力は同等。
だが、すでに数々の戦いを生き残って来たオリジナルのシュウリとナオとは経験が違った。
オリジナルのシュウリはすぐに相手のシュウリに精神魔法をかける。
それを解く間に敵のナオを二人で撃退する。
仕上げにシュウリを二人で倒す。
まるでマニュアルのある作業のように二人は別の世界の自分たちの命を奪う。
どれだけの命を奪ったか…もはやシュウリは数えていない。
ナオもカウントしなくなった。
無数に積み上がる自分自身の屍をみながら正気を保てるほど二人の精神は強くなかった。
二人の心は…とっくのとうに壊れていた。
ただもう…無機質に…この営みを続けていくことしかできなかった。
ペリアはこの様子を見ていた。
責務を押し付けた者として…この二人の行く末をみなければいけないと考えていた。
この終わりなき地獄を…
今やシュウリとナオは全ての魔法少女が束になっても敵わないほどに成長している。
そしてスペードの特性データを得たことでその命も尽きることはない。
ペリアは隣でうつらうつらしているスペードに声をかける。
「あの時…無理やりにでも終わらせておけばよかった…」
この言葉をスペードは何回も聞いている。
だがうんざりはしていない。
なぜならこの言葉はペリアの本心であり心の底からの願いであると理解しているからだ。
これまで何度も何度もそれに対してなあなあな態度で返していた。
だが、この時…スペードはほんの気まぐれに応えた。
「一個だけ…あるよ」
ペリアは初めての応答に困惑した。
「なんだって?」
「一個だけ…このループを終わらせる方法があるんだよ」
「…なぜそれを今まで言わなかった」
スペードはぽりぽりと頭をかいた。
「まだ終わらせるのは早いって思ったから…けど…あれだ…もう…アカンよね。これは」
ペリアの表情が曇る。
「だから…終わらせる方法…教えるよ?」
ペリアはスペードをじっと睨みつけた。




