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第6話 その4「つかの間」

魔法少女NO 96


彼女は古参の魔法少女の一人であった。

特化した能力はないものの、あらゆる魔法をそつなく使えた。

その才能が早く認められたこともあり、実験や過酷な訓練で精神に支障をきたすことはなかった。


むしろ少女は境遇を楽しんでいる節さえもあった。

シュウリはこの少女と何度か会話したことがある。

その時に聞いた話によると、何でも、彼女は普通の、平凡な生活に退屈していたとのこと…

何をしてもそつなくできる。

だが、何をしたところで上にはいけない…

賢さゆえに、その自分の限界に早くも気付いてしまっていた。

早くからの退屈…


そんな彼女は非凡な才を得て歓喜した。

これで自分は特別になれる、と。


当時彼女が目の敵にしていた優秀な同級生も同時期に魔法少女に目覚めたものの、彼女ほどの能力がなくあえなく、実験体として消耗されたということも、彼女の励みになった。


やっと、特別な存在になれた。

彼女の胸は喜びに満ち溢れていた。

だが、それもすぐにシュウリとの出会いによって打ち砕かれた。


圧倒的な才の前に、彼女は打ちひしがれた。


しかし、最初こそ苦しんだものの、すぐにそのようなことはどうでもよくなった。


次元が違い過ぎる…

足元のはるか下にも及ばない。

そこまで違えばもはやどうとも思わない。


彼女はやがて、シュウリを崇拝するようになった。

憧れてしまえば、もはや競争心も嫉妬も生まれない…


彼女は自分の能力と立ち位置をわきまえ、仕事をこなし、地位を上げ、キングの称号まで手に入れた。

そして、組織の壊滅後すぐに『アガペル』と取引し、地位と引き換えに平穏な生活を手に入れた。


シュウリの暴走の前のことである。

運よく彼女は難を逃れた。


この5年間彼女は自分の立ち居振る舞いの的確さを誇っていた。

自分ほどうまく生きている魔法少女はいないと自負があった。


『アガペル』から抜けてから、お金にも困らず、住む場所にも困らず。

すぐに恋をして、結婚して、子どもをもうけ…


平凡な、だが幸せな環境を手に入れることができた。

あれほど毛嫌いしていた平凡さがたまらなく心地よく、幸福であった。


ある日、夫と子どもを見送った後、掃除にでも取り掛かろうとしたとき、彼女の家を訪ねるものがいた。


彼女はその瞬間…察した。

賢さがゆえに、全てを察してしまった。

自分は逃れられてはいなかった…


巨大なゲージの中に捕らわれていただけ…

大きさゆえに柵が見えない檻…


たった一言で、連れ戻された。


彼女は一段階下のクイーンにされた。


その意味も分かっていた。

ちょっと、待遇の良い使い捨て…


クローバーに引き連れられて討伐に参加した。

ナオと対峙し、先陣を切って立ち向かったところ、瞬く間に切り伏せられた。


再生をするまもなく、その身は砕かれた。


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