第6話 その2「記憶」
「あ~~あ… 案だけ大見得きったにもかかわらず… やられちゃったかぁ… クローバーのやつ」
スペードは適当な、1人のクイーンの亡骸から、衣服を剥ぎ取り、それで身体を覆った。
そして、魔法により、つい先ほどこの場で起こったことを呼び起こす。
クローバーは勝利を確信し、悦に入っていた…
だが、ナオによって、それは阻まれた。
集中砲火で砕け散る身体…
舞い散る血…
そして、帰還したシュウリにとどめを刺された。
消える刹那。
クローバーの表情は、苦悶も悔しさも浮かべていなかった。
ただただ、笑顔であった。
その理由をスペードはよく分かっていた。
「まったく… いい笑顔して… うらやましいねぇ… 死ねるやつは… それも…死力を尽くして…死ねるのは…私たちに残された唯一の幸せな死だ…」
スペードは瓦礫の下にひっそりと咲いていた花をブチりとちぎり、クローバーが最後を迎えた空間に供えた。
「お疲れさん… 私は… もうちーーっとばかし頑張るよ。 じゃあな」
スペードの脳裏に蘇るのはクローバーやシュウリとの思い出であった。
(まったく… どうしてだろうね… 便利な魔法はたくさん研究されているのに…記憶を改ざんする魔法がないってのは… 普通にあってもおかしくないだろうに… ヤダヤダ… 生きてると思い出したくもないことまで思い出してしまう…)
初めから強かったシュウリ、生まれに恵まれていたため好待遇を受けていたクローバーに対して、ただ死なないスペードの扱いはヒドイものであった。
むしろその能力故に様々な実験体にされていた。
何度も身体を壊された。
バラバラ状態で敵地に放り出されたり、身体に爆発物を埋め込まれて敵陣に送られたりなんてことは日常であった。
新たな魔法が発見される度に実験体にされていた。
自分の能力によって、多くの魔法少女が助かっている…そうでも思わなければやっていけなかった…
そんなスペードに対して、慈悲があったのはクローバーであった。
もともと穏やかで博愛の精神の持ち主であったクローバーは、スペードの境遇を良く思っていなかった。
クローバーの進言により、スペードの実験体としての活用は中止された。
さらにクローバーは不当な扱いを受けている魔法少女たちの権利を主張した。
『アガペル』の総帥マークスとダイヤに事細かに調査した現状を報告し、改善を求めた。
クローバーはそうして、人望を得ていった。
また、研究熱心であったクローバーは実験体を極力使わずに、新しい魔法をいくつも開発していった。
そんなクローバーのことをスペードは敬愛していた。
同じ立場になっても、クローバーの人柄は尊敬していた。
「もう…軽口も叩けないのかよ…」
スペードは花だけを残して、シュウリとナオが向かったであろう方向へ歩みを進めた。




