第5話 その1「口づけの終わり」
ナオはシュウリを慰めようと、一緒にシャワーを浴びる。
お湯でシュウリの身体を隅々まで流していく。
ふいにシュウリがキスをせがむ。
ナオはシュウリの顔にかかる濡れ髪を手でよけて、そっと唇を被せる。
「んっ♡ んん… んんっ♡」
シュウリの声から吐息が漏れる。
お湯と共に涙が流れる。
冷静と狂気とがシュウリの心を締め付ける。
いっそ壊れたままならば、苦しむこともなかった。
ナオに抱いている愛しい気持ちを代償に、狂ってしまうこともできる。
治りかけた心を再び、もう二度と戻らないほど完膚なきまでに破壊しつくせば、もう涙を流すこともない。
しかし、シュウリはまだ人でいたかった。
魔法少女は怪物でも異形でもない、ただ魔法が使えるだけの普通の少女でありたかった。
ナオもまた、そんなシュウリを愛しく思っていた。
ナオが初めてシュウリと出会ったのは、戦場だった。
それ以前に存在は知っていた。
闘うべきか迷ったこともある。
だが、最終的に敵対する存在として巡り合った。
当時組織の最高戦力として、数々の魔法少女を葬ったナオ。
マークのクローバーを退けたこともある。
大いなる期待を背負い戦火に降りたナオに待っていたのは、圧倒的な敗北であった。
四肢は無残にもぎ取られ
コアも破壊され、首だけ引き抜かれた。
ナオは終わりを覚悟した。
だが、そんなナオをシュウリは笑顔で見つめている。
「ねぇ、あなた。 あなたは… 直る? 直るよね? 何度でも」
ナオはシュウリを睨み付けた。
「また、私と闘ってくれる?」
「…貴様を倒すまで、何度でも向かってやる」
シュウリは笑顔を向ける。
魔法をつかって、散らばったナオの身体を集めて組み立てる。
その上に頭を添える。
「じゃあ、楽しみにしているね♡ ちゃんと直して… そして、戦いに来て… いつか私を壊してよ」
それから、何度も対峙する。
そのうち互いを求めるようになる。
本部が壊滅した後も、その関係はずっと続いた。
2人だけの時、シュウリとナオは人に戻ることができる。
口づけを交わすときには、ただの2人のいたいけな少女であった。
その時は、遠くから聞こえる爆音によって、壊された。
名残惜しむように口を離し、魔法で出していたシャワーを止めて、一瞬で水気を消して戦闘態勢を整える。




