表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

嘘つきばっかり*

推奨:第二部まで読了

時間軸:第三部前

エウラリカ/カナン

「おや、エウラリカ殿下。二日連続同じ場所で遭遇するとは、これは運命に違いな――――おい何をする! 僕はあのウォルテール将軍の、妹の友人の従兄弟だぞ!」


 衛兵に両腕を捕まえられ、踵で引きずられながら遠ざかってゆく令息を見送ってから、カナンは腕を組んだ。

 じろりと横目で睨む。


「こないだウォルテールの親戚だっていう男に優しく耳を傾けたせいですよ。しかも結局嘘だったし」

「だって、意外と顔が似ていたから面白くて」

 エウラリカが悪びれた様子もなく頬に手を当てているので、カナンは聞こえるように嘆息した。当然彼女は意にも介さない。


「それにしても、今日はやけにああいう手合いが多いですね」

「だからお前はさっきからずっと私を付け回しているの?」

「言い方」

「あら、嫌味よ」

 あっさりと返されて、カナンは思わずエウラリカの顔を二度見した。苛立った様子はなく、むしろ呆れ果てた表情だ。


「私だって変な輩をあしらうくらいできるし、そもそもこうして衛兵が対応に当たっているんだから、お前がいようといまいと関係ないでしょう」

 言われてしまえばその通りなので、カナンは渋い顔で黙り込んだ。

「任せなさい。私、厄介な連中なんてちゃんと自分で追い払えるわ」


 胸に手を当てて宣言したエウラリカは自信満々の様子で、任せろと言わんばかりにこちらを見上げている。

 珍しく暇な日で、今日はもうこれといった用事はない日だった。とはいえやることが皆無という訳でもない。

「分かりました」と不承不承頷いて、カナンはそのまま自室へと戻った。


 扉が叩かれたのは、稟議書の確認を始めて半刻も経たない頃である。来客の予定はなかったはずだ。怪訝に返事をすると、エウラリカがひょこりと顔を覗かせた。

 幾分ばつの悪そうな目つきをしていた。


「一人でも追い払えるけど、お前がいないと母数が増えたわ。適当な嘘をつく連中の多いことと言ったら」

 あの嘘つきども、と毒づく。

 言い訳がましい言葉を解読するに、どうやら自分が傍を離れてから、近づいてくる輩の数が増えたということらしい。


「本当に面倒。こんなんじゃ日常生活が困難だわ」

 執務室まで避難してくるとは、ただ事ではない。図書館に行って、欲しい本を借りて戻ってくるだけのつもりだったのに、途中で経路を逸れてきたようだ。


「そういえば俺も、たまたまそちらへ用事があったような気がしてきました」

 白々しく呟くと、エウラリカは椅子に浅く腰かけたまま、片眉を跳ね上げてこちらを注視する。耳をそばだてる猫の仕草を彷彿とさせた。

「⋯⋯そういうことなら、仕方ないから一緒に行ってあ

げても良いわよ」

 ややあって、自らの膝に頬杖をついたまま、エウラリカがちらりと歯を見せて笑った。



(初出:2021/10/20)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ