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002 ルートブレイカーとご対面

 

 

 

「は、え、なに、ここ……」




気がつくと、全てが真っ白な場所にいた。




そう、真っ白である。




壁や床の境目がわからない真っ白な世界。真っ白な内装の部屋の中にいるのか、果ての見えない白い空間なのかもわからない。自分以外は全て白。




この謎の白い場所について考えていたが、答えが出るはずもなく、周囲の景色をぼーっと見つめていたら真っ白過ぎて目がチカチカしてきた。周り白過ぎなんだよ拷問かよ。




「お、お待たせしました!」


「はじめまして道筋破壊者(ルートブレイカー)さん」




白という色を腹立たしく思い始めた頃、どこからともなく二人の男女が現れた。スラッとした仕事できます系ポニテ男子と、男が守ってあげたくなるようなショートヘアのふわふわ系女子。どうでもいいけどどっから来た?お待たせって何?あたし待ち合わせなんてしてないよっていうか出入り口あるんかい先に教えろや。




目の前まで歩いてきた男女二人。おろおろと挙動不審なふわふわ系女子とは正反対に、仕事できます系ポニテ男子の方がクイッと眼鏡を押し上げ淡々と話始めた。




「単刀直入に言わせて頂きます。貴女はつい先程亡くなりました」


「……………え?」




なくなった?無くなった?え、亡くなった?それって死んだって事?え、意味がわからない。だってあたし生きてるじゃん、今、ここに。え、だって、今日、ぼっち誕生日だから、コンビニでお高めのスイーツ買って、それから………それから?




「あ、」


「思い出しました?貴女は猫を追いかけて道路に飛び出した少女を庇って車に跳ねられました。当たりどころが悪くほぼ即死でした」




そうだ、野良猫を追いかけてる女の子がいて、信号は赤で、野良猫を追いかけるのに夢中だった女の子は信号機なんか見てなくて、そしたらめっちゃスピード出してる車がきて、それで、それで………つい助けなきゃって思って走ったんだった。




「…………思い、出したかも」




マジか、車に跳ねられそうになる女の子助けるとかマジか。つい助けたってそれもう根っからのスーパーヒーローじゃん。死んだけど。あたし模範的な正義の味方じゃん。何ちゃらウーマンとかヒーロー名つくんじゃないの?死んだけど。あ、そういえばコンビニで買った新作のスイーツ放り投げちゃったけど大丈夫か?原形なくなるくらいぐっちゃぐちゃになってたらショックなんだけど。でもまあ、食べて胃に入ったら一緒か。ていうか死んだから食えねぇよ。寧ろスイーツよりあたしの方がぐっちゃぐちゃだわ。身体的に。




「ここからが本題です」


「……え?」




え、本題?まだ何かあるの?事故報告と死亡通知以外にまだ何かあるの?もしかしてぼっちバースデーのあたしにプレゼントでもくれるの?え、サプライズじゃん。歌とか歌ってくれちゃう感じかな、ボッチバースデー☆トゥーユー的な?って余計なお世話だよ!




「本来ならば、貴女が助けた少女は、あの事故で意識不明の重体となりますが奇跡の生還をするという道筋(ルート)になっていました。死ぬのは車の運転手と、あと猫ですね。ですが、貴女が彼女を助けた事によって、少女は軽傷ですみ、運転手も猫も生きています」


「………」




何かよくわからないけど、それはいい事なんじゃないだろうか。女の子も軽傷ですんだし、ちょっと腹立たしいがあたしを跳ねた運転手も生きているし、猫も生きている。あたしは死んだけど。あ、全然よくないじゃん。あたし死んでますやん。おいこら運転手、理由によりけり呪ってやる。




「……つまり身代わりになったってこと?」


「察しがよろしですね。半分正解で半分不正解といったところでしょうか」




前振り長ぇ。この仕事できます系ポニテ男子前振り長ぇ。とりあえず結論を述べよ。あたしはさっさと家に帰ってさっき買ったスイーツを堪能したいんだよってあたし死んでますやん。スイーツも何もあたし死んでますやん。時間有り余ってますやん。はいすみません、どうぞごゆっくり前振り喋って下さいちゃんと聞きますんで。




「私は回りくどいのが苦手ですので、単刀直入に結論から言わせて頂きます」




安心して下さい、回りくどいですよ。もう十分過ぎるくらい回りくどいですよお兄さん。クイッて眼鏡上げてなんか格好つけてますけど単刀直入に結論言います。回りくどいぞ眼鏡。




「今から貴女は、異世界転生します」


「……いせかい、てんせー……?」


「混乱するのは当たり前です。まずは見て貰った方がイメージや実感も湧くでしょう」




そう言うと、仕事できます系ポニテ男子がパチンと指を鳴らした。すると何もない空間に突如円形の"何か"が浮かび上がった。その円形の外周は淡い光を放ち、円の中はモヤモヤと歪んで見える。これは所謂(いわゆる)、ゲームや漫画の世界でよくある様な、別世界へ繋がる(ゲート)みたいなものなのだろうか。




「では、これから説明をするのでしっかり聞いて下さい」




仕事できます系ポニテ男子が再びパチンと指を鳴らすと、またまた何もない空間に半透明の画面の様なものが現れた。その画面には《初めての異世界転生・転移!入門編》と書かれている。スライドショーでも始める気なのだろうか。入門編の時点で長くなる予感がプンプンしている。回りくどいの苦手じゃなかったっけ?逆じゃん。回りくどいの大好きじゃん。サクッと終わらす気ないじゃん。あ、ショートのふわふわ系女子が指示棒渡した。え、何これ授業始まんの?これ何時間コース?「あ、どうも」……って何か資料渡されたんだけど。




「まず、異世界というのはその名の通り異なる世界の事であり---」




これ絶対長くなるやつ。




 




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