001 彼女はルートブレイカー
ーーーとある空間【???】
「お疲れ様」
幾多もの大画面を監視している後輩に声をかける。
「あ、先輩!お疲れ様です〜」
ここの管理室は、無限にある世界の内、エリアA5を担当している部屋である。
部屋を埋め尽くす数千を超える大画面、それに映し出されているのは《世界》である。
例を挙げると、この画面に映っているのは[地球A5-12]と呼ばれる惑星である。地球という惑星は一つではない。ここの担当エリアだけでも百は超えている。
私達管理者は、この無限にある各世界の時の流れ、生命体の道筋を管理しているのだ。
「ところで、例のアレはどうだ」
先輩の表情がスンッとなくなる。
「はい、変わりありません」
後輩の表情もスンッとなくなる。
二人の見つめる画面の先には、無数の青い線の中に一本だけ混じった赤い線。
これが二人を悩ませている生命体、
その名も、道筋破壊者。
無限にある世界の中で稀に存在する生命体。
生命体は決められた道筋を一分一秒違わず時を過ごし一生を終える。つまり、右に曲がるはずが左に曲がったというだけでアクシデントレベル5の大問題なのである。
「今日も全く道筋を無視です……」
「どうしたものか……」
この道筋破壊者と呼ばれる生命体が起こす異常行為は、基本的にほんの数秒の出来事である。しかし、そのたった数秒だけで周囲の生命体の道筋にも影響を与えてしまう場合がある為、管理者として危険視しなければならない存在なのである。
本来ならば上層部に報告しなければならないのだが……
「こんな道筋破壊者は初めてだ」
そう、この生命体は生まれた時から赤い道筋、つまり一度も正規の道筋を通ろうとしないのだ。
道筋破壊者の名の通りではあるが、ある意味では道筋を自由に進む放浪者でもある。
「今日も道筋矯正はしたんですけど、全然元に戻ってくれないです……」
ただでさえ異常な状況なのだが、不思議な事にこの道筋破壊者によって他者の道筋が乱されてしまうという事態は起きていないのだ。それ故に、未だにこの異常な道筋破壊者について報告出来ずにいたのだった。
その結果、「こんなのアクシデントレベル5程度の騒ぎじゃないよ。測定不能の大事件だよ。未知数だよ。いや寧ろ一周回って奇跡だね!わーすごーい!……ってやってらんねぇよ!!」と、キャパオーバーしてしまったのだ。元々真面目で誠実で仕事はきっちりタイプの二人だったが、この道筋破壊者に限り若干投げやりになってしまったとか。
そんな二人がこの道筋破壊者と対面する事になるなど、微塵も考えていなかっただろう。
聖女系ストーリーです。
のんびりと進めていきたいと思ってます。
前から書いてるネタよりも
先に投稿しちゃった作品です。
更新ペースは、もちろん、ノリと気分です(最低)
A子メモ【なろうデビュー後作品:9】