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僕には少し甘すぎる  作者: Bくん
第一部
7/11

7話『家事とは』


「さて……」


改めてキッチンを検分してみる。

鍋はある。片手鍋のみ。

これはあらかじめ佐藤さんに確認済みだ。

フライパン、は無い。


二号炊きの炊飯器と電子レンジはある。

おたまはあるが、ザルやボウル、菜箸は無い。

あ、フライ返しも無い。

フライパンが無いんだからそりゃそうか。


しかしこれは……。


「……き、規準が分からん」


普段から料理をするタイプでは無いことは一目で分かるけれど、一体どういう規準で調理器具を揃えているのか。

料理をするタイプの僕にはいまいちよく分からない。


「なぜ包丁が無いんだ」


必須じゃないのかな?

まぁ、無いってことは必須じゃないのだろう。


幸い、今日の料理は鍋一つ有れば作れる卵粥だ。


玄関に置きっぱなしにしていた買い物袋を運び込み、シンク横の狭いスペースに材料を並べた。

パックご飯。卵。鶏ガラスープ。

……以上。

お茶とスポーツドリンクは冷蔵庫にしまう。


それにしても木村商店の品揃えは素晴らしい。

近所だし、お婆ちゃんは親切だし、僕も積極的に利用しようかな。


なんて、余分なこと考えてる暇はなかった。

早く作ってあげないと、佐藤さんマジで死んじゃうかも。

……てか、生きてるよね?


物音ひとつしないんだけど。


若干不安になりながらも、調理を開始する。


まず、パックご飯をレンジで温める。

それから目分量で鍋に水を入れ、ご飯を投入。

煮込む間に洗濯もやってしまおう。


やるなら徹底的にやる。それが僕の信条だ。


脱衣場に入ると、ふと鏡が目に入った。

茶色がかった髪にドングリ眼。

残念ながら平々凡々な男子高校生だ。


佐藤さんはああ言ったが、見た目も中身も決して"天使"などではない。

僕が協力的になるのにはちゃんと理由があるのだから。


こんな事を声に出して言ってしまえば世の奥様方から顰蹙(ひんしゅく)を買いそうだが、僕にとって、料理や家事に費やす時間は辛く面倒なだけのものではなかった。


やりがいがあるし、何より没頭できる。

僕がまだ責任の無い自由な子供だからかもしれない。


それでも、今の僕にとっては大事な、楽しい時間だ。



「おっ……」


洗濯機を回してキッチンへ戻ると、良い具合にご飯が煮えている。

あとは鶏ガラスープの素を溶かして、溶き卵を入れる。

それから味を整えて……。


「完成っと」



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