表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕には少し甘すぎる  作者: Bくん
第一部
6/11

6話『touch』


「佐藤さんって、アレルギーありますか?」


奇跡的に無事だったタオルを手に、大型犬よろしく、わしゃわしゃと拭きながら問いかける。

それにしても本当におとなしい犬……、人だ。


「……無い。好き嫌いも。何でも食えるよ」


「食欲は?」


「腹減った」


「ふっ、すぐ作りますよ」



不思議と笑みがこぼれる。

何だろう。

今日逢ったばかりとは思えないこの感覚は。

佐藤さんの人柄のせいだろうか。


とても自然で、フラットで。

ただ純粋に助けてあげたいと思ってしまう。

イケメンなくせに、嫌味な部分が無いのだ。


「立てます?」


「……ああ」


肩を貸そうとしたが、佐藤さんは自力で立ち上がった。

僕の身長は174。

決して低い方ではない。

それでも、並んで立つとだいぶ差がある。


185,6はあるかもな。

そんなことを思いながら彼の後ろに着いていく。


「……?」



ドアを開けた先のリビングは、予想に反して片付いていた。

いや、片付いていると言うより、物が無いのか。


薄いグレーのカーテン。

剥き出しのフローリング。

ソファーとテーブル、床に敷かれたマットレス以外は、何も無い。

殺風景でどこか寂しい部屋だ。


「……森園くん?」


「あ、いえ……」



何だか見てはいけないものを見たような気がした。

散々なれなれしくしておいて今さらだが、他人のプライベートに触れる瞬間というのは、いつも少し怖い。


「……キッチン借りますね」


「ちょっと待って」


「え?」


背を向けた僕の腕を、佐藤さんが引っ張る。

振り向くと、ふわりと柔らかい感触。


「森園くんも濡れてる」


優しく撫でるように拭かれて、何やらくすぐったい。

さっきとは立場が逆だ。

ただ、僕はあまりおとなしい犬ではない。


「だっ、大丈夫ですよ! 病人なんだから、人のこと心配してる場合じゃないでしょ」


微妙に不服そうな顔をした佐藤さんを半ば無理やり布団に押し込み、僕はリビングを出た。

本当に調子が狂う。

仲の良い友人でさえこんな距離感にはならない。


……と言うか、なに不服そうな顔してんだ。

僕はわりと正論を言ったと思う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ