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僕には少し甘すぎる  作者: Bくん
第一部
5/11

5話『産まれたての』


「と、とにかく! 材料選んできますから、もう少し寝ててください。あ、お米あります?」


「……無い。森園くん、これ使って」


「はい……って、え?」



佐藤さんに渡されたのは、財布。

信用されているのかただ不用心なだけなのか。

ついさっき知り合っただけの相手に財布丸ごと預けるなんて。

色々と心配になる御仁だ。


「あの、これ……」



指摘しようとしたが、佐藤さんはもう目を閉じている。

顔色は悪いけれどやっぱり綺麗な顔だ。

歳は二十代前半くらい。


まぁ、たったこれだけの情報しか知らない人のお宅を訪問しようとしている僕も、大概である。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「よ、いしょっと」


三階建ての鉄骨アパート。

その一階、一番奥の角部屋が佐藤さんの部屋だった。

わりと新しいらしく、外観も内装もとても綺麗だ。

買い物袋を置いて、ふらふらの佐藤さんを玄関に座らせる。


「佐藤さん、大丈夫ですか? 意識あります?」


「……ん」



一応あるらしい。

額に手を当ててみると、かなり熱い。

どんどん悪化しているんじゃなかろうか。

傘一本を二人で分け合ったせいかもしれない。

よく見ると僕よりも濡れてしまっている。


「タオル取ってくるんで、先に中、入ってもいいですか?」


小さい子の世話を焼くような気持ちでサンダルを脱がせてやりながら訊くと、佐藤さんと目が合った。


「……ん」


……ヤバい。

語彙力が産まれたてレベルだ。

風邪って恐ろしい。

緊急事態と言うことで、勝手に物色させてもらおう。


「失礼しまーす」


家主に挨拶をして、靴を脱ぐ。


玄関からすでにキッチンが見えていて、一番奥にリビングへ続くドアがある。

手前には、通路を挟んで向かい合うように扉が二つ。

恐らく風呂とトイレのものだろう。


タオルといえば風呂場か。

そう思った僕は、玄関から見て左側の扉を開いた。

……のだが。


「……う、おおぅ」


あまりの光景に、思わず唸る。

そこは予想通り脱衣場だった。

確かに、めっちゃくちゃ脱衣している。

洗濯物が、溜まっている。


寝込んでいたのだから仕方無いのかもしれない。

……が、どうも産まれたてレベルなのは語彙力だけでは無いかもしれない。


「……森園くん?」


「あっ、はい! すぐ戻ります」


産まれたて男が僕を呼んでいる。

とりあえず早く拭いてやろう。


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