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僕には少し甘すぎる  作者: Bくん
第一部
2/11

2話『色男』


「いただきます」


律儀に一声呟くと、彼はクッキーを頬張った。

プレーンとチョコチップ入りの二種類。

一袋に三枚ずつの計六枚。

それを彼は、ひたすら食べている。


初対面の人間から食べ物をもらうなんて結構ハードル高いよな、とか。

これってどういう状況なんだろう、とか。

思うところは有りすぎるほど有るわけだけど。


「……いっ、イケメン」


なんてこった。

マスクの下からえらいイケメンが現れた。

その衝撃に思考が持っていかれる。


切れ長の目と通った鼻筋。

バランスの取れた薄めの唇。

目元の泣きぼくろと、気だるそうな雰囲気が妙に色っぽい。


僕は男で。

彼も男で。

神様はなんて不公平なのだろう。

何がどうなってこんなに違う造形になるんだ。


「ごちそうさま。めっちゃくちゃ美味かった」


赤い舌がちろりと覗いて、クッキーの欠片を舐めとっていく。

本心だろう。

シンプルだが、手間をかけて作った。


「……お粗末様です」


知らない人だろうが何だろうが、自分が作ったものを誰かに食べてもらうのは好きだ。

素直に嬉しい。

喜んでくれたなら尚更。


ただ、言葉の割りに彼のテンションが低いのが気になった。


そもそも、何故いきなりクッキーを欲しがったのかという最初の疑問がよみがえってくる。


黒いTシャツにジーンズ。

足元はサンダル。

すらりとしたモデル体型のお陰で似合っているが、よく見ればかなり適当な格好をしている。

ちょっと長めの黒髪も無造作ヘアと言えば聞こえは良いが、ただの寝癖にも見えなくはない。


「……なぁ」


「はっ、はい?」


少しばかり失礼な考察をしていたのが顔に出ていたのだろうか。

そう思って慌てて返事をした。


すると、男がまた顔を寄せてきた。


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