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僕には少し甘すぎる  作者: Bくん
第一部
1/11

1話『マスク男』


突然の雨。

逃げ込んだ店の軒先。

小分けにしたクッキーが大量に入った紙袋を抱えて、雨宿りをする。

ついさっきまで晴れていたのに、もう土砂降りだ。

最近の天気はよく分からない。


『悪い、利一。今日から家族旅行』


『ごめん! 俺も今日彼女とデート』


『俺部活だわ。うわー。森園のクッキー食いたかったー!』


グループチャットにつらつらと並ぶのは、断りの連絡ばかり。

何やら朝からもやもやしてクッキーを作りまくった僕は、食べてくれる人を求めてさまよっていた。


「……はぁ」


走って帰ろうか。

幸い今は夏休みの真っ只中だ。

ずぶ濡れになって風邪をひいたって寝ていればいい。

心配する人もいないし。


いや、これが濡れちゃ不味いか。


「……はぁ」



すぐ腐るものでも無いし、どうにかして持ち帰ろう。

紙袋を抱え直し、二度目のため息を吐いた直後、目の前の雨が止んだ。

僕の前に誰かが立っている。

藍色の傘をさした背の高い男だ。


慌てて立ち位置を変えたが、男は動かない。

店に入ろうとしている訳ではないらしい。


マスクをしていて表情は読めないが、完全に僕を見ている。


「あ、あの……?」


恐る恐る問いかけると、男はスッと腕を持ち上げて指を一本突き出した。


人差し指だ。

長くて綺麗。

そんなことはどうでも良い。


指さされている。

知らない人に。


……たぶん。

……恐らく。

知らないであろう人に。


「ぼ、僕に何か?」


「……なぁ」


圧し殺したような、どこか危機感の感じられる声だった。


「それ、食っていい?」


「……はっ?」


それ?

これ?

小袋を一つ持ち上げて見せると、頷いた男がグッと顔を寄せてくる。


「それ」


「よ、良ければどうぞ」


差し出した袋を躊躇いもなく開けると、男がマスクを外した。



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