【其之捌】拘束
「ヤグルマ」
天使の微笑みを浮かべたレンゲがゆっくりとヤグルマに歩み寄っていく。
「ね〜ぇ? いい加減、頭冷やしたらどう?」
コテンと首を傾げるレンゲにヤグルマがバツの悪そうな顔でそっぽを向いた。
「……うるせぇ」
「てぃッ!」
「おぶッ!」
「せぃッ! てやッ!」
「あがッ! どふッ!」
脳天チョップから流れる様に鳩尾への正拳突き。極上の笑顔でトドメを刺すとは恐るべし。
「ひぃいいい……えげつない!」
「さて、次は……と」
ぇええええー? ちょっとヤマブキさんとやら、アレはまるっと無視ですかー?
「お前の番だったな。忘れるとこだったよ」
「忘れとったんかーい!」
いやいやいや! むしろそのままキレイさっぱり忘れてくれて良かったデスヨ?
「このオレの結界を抜けるとはな……いずれにしても只者ではあるまい。全て吐くまでゆっくりじっくり尋問してやろう」
「只者です! ってゆーか、なんか締め付けられてて違う意味で今にも吐きそう!」
実際、シキガミに圧迫されて身動き出来ない状態だからね?
しかもこのシキガミ、弾力が強いのに柔らかく、押しても手応えがほとんどない。それでいてみっちりと圧力と質量をもって密着してくるのだ。
「早々に口を割るのが利口というものだぞ?」
「わ、わかった! 正直に言うから! えっと、学校帰りが誕生日で僕と目玉の神隠し! ハイ今ココ!」
うむ! 我ながら見事なまでに支離滅裂で意味不明!
「ほぉ……?」
ヤマブキの口の端が憤怒と狂気のカタチに歪む。
あ、コレ完全に詰んだ。