【其之肆】激昂
「ちぃッ!!」
目の前の黄色に向かって青が見事な蹴りを放った。
青の足は綺麗な放物線を描き、黄色の顔面に吸い込まれ……そのまま突き抜けた。
「……?!」
僕は我が目を疑った。
青が勢い余ってたたらを踏む。黄色の姿は消えていた。
「蓮華。怪我は無いか?」
いつの間にか黄色はレンゲと呼んだ桃色の巫女姿の隣に立ち、その肩を抱いていた。
早っ! 動きも早いけど手も早っ!
「テメェ……!」
青の怒りは頂点に達したらしい。身体中から青白い火花がバチバチと飛び散っている。何アレ静電気? 冬とか辛そう。
レンゲは呆れた表情でするりと黄色の腕をすり抜けた。
ちりん。彼女の手の中で涼やかな音がする。
先程の『音』は彼女の持つ鈴が発したモノか。
だが、すぐに僕はそんな事よりも彼女の美しさの方に意識を持ってかれた。
艶やかな黒髪、光に透けそうな白い肌。ほんのりと笑みをたたえた口元。まるで天使の様だ。
あぁ…神々しい。巫女姿がまたイイ。
そんなレンゲがゆっくりと歩きながら話し出す。
「ねぇ山吹? アナタちゃんと結界張ったのよね?」
「無論。オレのやる事に抜かりは無いさ。誰かさんと違って、ね」
「あ゛? 誰かってな誰の事だ? ケンカ売ってんのかテメェ!」
今にも殴りかかろうとする青を抑えながらレンゲが言った。
「じゃあ……アレ、なぁに?」
「アレ?」
青と黄色がこっちを向いた。
え? 「アレ」って僕の事?
・・・・・
「……誰?!」
「……ど、どーもー☆」
とりあえずペコリとお辞儀しといた。挨拶は大事。