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おてんば娘と一寸郷士(ごうし)  作者: 宮羽つむり
おてんば娘と椿屋敷
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夕食前

畳んだ洗濯物を手に持ってお琴は、茶屋の中へと入っていった。

「あら、お琴ちゃん。どうしたのかしら?」

空いている小上がりの所で膳を3脚並べているお信が聞いてきた。

「あ、あの、清隆様達が帰ってきたことと夕食は右京様の部屋でとりたいことを伝えに参りました」

お琴は右忠からの伝言を奥にいる勇作にも聞こえるような声で伝える。

「あら、結構早くに戻ってきたのね。教えてくれてありがとう。これで夕食作りを一気にやるから、もう少し待っていてね」

お信は勇作がいる奥へと引っ込んでしまった。まだ夕食まで時間がかかると分かったお琴は、洗濯物を自分の部屋と右忠の部屋に持っていくことに決めた。


「右京様、洗濯物を届けに参りました……」

右忠の洗濯物を正座した膝の上に乗せたお琴は今、右忠の部屋の障子の前にいる。

「あ、ありがとう。今、化粧を落とした所だから、化粧していなくても許してね」

右忠の声が聞こえた後、障子がすっと開く。右忠は顔半分だけ出して、お琴を見つめている。綺麗な顔に見つめられ、お琴は何故か照れてしまう。

「あ、右京様。洗濯物です」

お琴は右忠に畳まれた洗濯物を差し出す。

「ありがとう」

右忠は右手をすっとお琴の前に出してきた。一瞬右忠の行動に戸惑うお琴。しかし、この手の平の上に洗濯物を置いてということかしら?と考え、お琴は差し出された右忠の右手の平の上に洗濯物を乗せた。

「本当に助かったわ。ありがとう」

右忠は洗濯物を受け取った右手を部屋の中に引っ込めると、お琴からは見えない左手で障子を閉めようとする。あ、夕食の言伝を伝えたことを報告しないと!と、右忠の行動を見たお琴は、

「あ、右京様。お信さんに夕食は右京様の部屋で食べたい事も伝えました」

と急いで右忠に伝えた。すると、動いていた障子がピタリと止まり、右忠は首を傾げて、ひょっこり顔だけ出す。

「あ、私頼んでいたわね。伝えといてくれてありがとう。夕食食べる場所を勝手に指定してしまって、清隆とお琴には悪いわね。でも、化粧を落としてからの外の出歩きは勇気が必要で……」

お琴はまじまじと右忠の顔を見る。……こんなに綺麗なお顔なのに、勇気が必要だなんて……。私には分からないなぁ……とお琴は思いながらも、

「私は全然構いませんので、気にしないで下さい。では、また夕食の時にお邪魔します」

と言って、右忠に一礼する。

「ええ。またね」

右忠は優しく微笑み、自分の部屋に戻っていくお琴を見送った。

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