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おてんば娘と一寸郷士(ごうし)  作者: 宮羽つむり
おてんば娘と椿屋敷
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3人の旅路

早速3人は御厨村へ向かう。朝日が平地に光を与えてしばらく経つ頃、3人はお琴が住んでいる商人居住地を抜けると、両脇を田んぼに挟まれた一本道に出た。田んぼは稲刈りが終わって、稲が干されている。

「私の住んでいるところは朝から賑やかですけれど、ここは長閑(のどか)でいいですね」

お琴は田んぼを見つめる。

「いつもは鳥の友の背に乗って眺める景色だけど、人間の友の肩の上から見る景色はまた輝いて見える。同じ景色のはずなのに、違って見えるから不思議だ」

清隆は立ち上がって、きょろきょろ見回す。

「今年も豊作でひと安心だよ」

右忠も田んぼを見渡して、満足げに頷く。

「あ、お琴。今から私のことは右忠ではなく、右京と呼んでね」

右忠はお琴の方を見る。田んぼから右忠の方に視線を移したお琴はある事に気がついた

「はい、承知しました。……右京様、今気がついたのですが、今日は化粧をしてないんですね」

「そうなの!やっぱり分かっちゃうかぁ……」

「え、そうだったんですか?気がつかなった……」

お琴の言葉に、右忠は自分の頬をさすり、清隆は驚いた声を出した。

「全く!清隆みたいな鈍い奴はもてないからな!……おっと。いけない、いけない。……化粧箱一式持っていくとなると、風呂敷に包んで肩に担ぐようになるでしょ?女子があんな大荷物を担いでスタスタ歩いていたら、男だって分かってしまうでしょう。だから持ってこなかったの。持ってきたのは、化粧関係で持ってきたのは髭を剃るための剃刀だけ」

右忠は女言葉でお琴に説明をした。お琴はふと清隆を見ると、清隆はばつが悪そうに頬を掻いていた。

「確かに大荷物を肩に担いで颯爽と女子が歩いていたら、疑われますよね」

お琴はうんうんと頷く。お琴の様子を見て、右忠はにっこり笑う。そんな右忠の表情を見た清隆は、下唇を尖らす。

「あ、お琴。この先に湧き水が出ている泉があるぞ」

清隆はお琴に泉に行くよう、遠回しに促す。 右忠は清隆の言葉を聞いてニヤリと笑い、

「行こう!こっちにあるの!」

とお琴の手を引いた。お琴は少し驚くが、右忠に引かれるがまま、泉の方へと向かう。

「右忠様!そのように軽々しく女子の手を引くのは……」

「あら、やだ。私は今は女よ。女同士ならいいわよね?」

右忠はお琴に尋ねる。お琴は思わず首を縦に振る。

「そういう問題じゃないだろ!阿呆!」

清隆はお琴の頬を叩く。お琴が清隆に怒られていることなど知らない右忠は、そのままお琴を泉へと連れて行ってしまった。

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