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おてんば娘と一寸郷士(ごうし)  作者: 宮羽つむり
おてんば娘と椿屋敷
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荷物まとめ

「卯木様、おはようございます」

土間に着いたお琴は、早速卯木に挨拶をした。卯木は瓢箪(ひょうたん)の水筒を持っている。旅の途中で喉が乾いた時に、川の水を汲んで飲むために今、用意しているのだろうとお琴は思った。

「お琴、おはようございます。旅の準備は万端ですね」

卯木はお琴の格好を見る。

「お琴。清隆様の荷物も持っていって欲しいので、お琴の着替えを清隆様の荷物の中に入れて欲しいのですが、いいですか?」

「はい、承知しました。では早速、私の荷物を清隆様の風呂敷の中に入れに行ってきます」

「お願いします。一の間に清隆様の荷物とお琴の荷物は置いてありますので」

「はい。では一の間に行きます」

お琴は卯木に軽く頭を下げると、そのまま一の間へ向かった。


「……何故、オイラの荷物を見て固まっているんだ?」

一の間で清隆の着替えが入った風呂敷を開けたお琴は、顔を赤らめて固まっている。

「おい、どうしたんだ?」

清隆がお琴の左頬をペシッと叩く。小さな刺激だが、お琴の意識を戻すには充分だった。

「あ、あの、肌小袖はいいのですが……。その、ふ、褌があって……、持ち上げづらいです……」

お琴は両手で顔を覆う。着替えの1番上にあったのは小人時の服だが、その次にあったのが褌だったため、それを見た お琴は持ち上げるのが恥ずかしくなってしまったのだ。そんなお琴の反応を見て、清隆も顔を赤らめてしまう。

「ふ、褌ごときで恥ずかしがるな!洗濯してあるから綺麗だぞ!」

清隆の言葉に、お琴は耳まで真っ赤になってしまった。

「オイラの着替えを持ち上げるのが嫌なら、お前の荷物を上に載せればいいだろう」

「それはできません!主人の荷物の上に使用人の荷物を載せるなんて不敬に当たります!」

「何言っているんだ!友には上下関係は無いだろう!オイラの褌があるからって言って、荷物を持ち上げられないっていう仕打ちが友として悲しい……。オイラの荷物の上にお前の荷物を置いてくれた方が、まだ悲しくない……」

清隆の語尾が段々弱まる。お琴は「友」という言葉に、はっとする。そして、友に対してひどい事をしてしまった……と思い、自分の着替えが入っている風呂敷の結び目を緩めた。しかし……、そのまま自分の着替えを直接清隆の着替えの上に置くのはやっぱり恥ずかしい……と思い、行動に出るのを躊躇ってしまう。

「ん、どうした?」

また動きが止まるお琴を見て、清隆が声をかける。お琴は早くしなくては!と思い、自分の恥ずかしさが今の状況の中で1番軽減する荷物の置き方を高速で考えた。

「……やっぱりこうします!」

お琴は自分の着替えを包んだ風呂敷の結び目を再び固く結び直して、その風呂敷を清隆の着替えの上に置き、清隆の着替えを包んでいた風呂敷で2人の着替えを包んだ。

「できました!」

「……。……そんなにオイラの褌に直接触れたり、自分の着替えを重ねるのも嫌なのか……」

清隆の呟きは、良い方法を思いついたと満足しているお琴の耳には届かなかった。

「お琴。荷物の準備はできましたか?」

卯木が一の間の障子を開けた。お琴は一瞬びっくりするが、

「はい、できました!」

良い笑顔で卯木を見る。

「清隆様の声も聞こえましたが、そこにいるのですか?」

卯木が一の間を見回す。

「あ、あぁ……。お琴の肩のところにいる」

清隆の声を聞いて、卯木はお琴の肩の辺りに目線を移す。

「そうなんですね。丁度良かったです。今、右忠様がお見えになりました」

「……では、お琴。風呂敷を持って玄関に行こう」

「はい!」

お琴は2人の荷物をまとめた風呂敷を持って、卯木と一緒に玄関へ向かった。

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